中編
貴族達が別の意味でざわついた。
「ま……待ってくれ、リースフィ」
レイアスが彼女を庇うように前へ出る。
「彼女は君のように武道を極めているわけではない。一方的な暴力になってしまうだろうっ」
「レイアス様……何を仰っておられるのですか? 私の家と規約を交わされたは半年前です。それをわかった上で私からサリア様に乗り換えたのでしょう? 結果的にこうなるとわかっているのですから、一方的な暴力ではないでしょう。きちんと審判をつけて闘技場で行います。まさか、レイアス様は生涯を共にする伴侶のサリア様に対し、私どもの家との規約をお話ししていない……なんてことはありませんよね?」
サリアが青い顔をしてレイアスを見る。
これはダメだ。話してないんですね。サンドバッグ決定。でも大丈夫、殺しはしないし、顔も狙わない。全治一ヶ月で済むようにボコってあげるから。
「レ、レイアス様っ、どうしてお話して頂けなかったのですか!?」
「そ、そんな規約無効だっ。卑怯だぞ! リースフィっ」
「なるほど、無効ですか。王族の方は約束も守れないのですね。わかりました。大人しく身を引きます」
「あ……」
レイアスは顔を引きつらせる。
「それと、卑怯と仰いましたか?この各国の王族、貴族の方々が集まる場で私をいきなり公開処刑しましたが、その前に三人で話し合う機会があったのなら、揉め事など起こらなかったのでは?」
ざわざわとざわめく貴族達。
「確かにそうですわね」
「浮気の証拠がないのにいきなりなんて」
「レイアス王子は確認していないのか?」
レイアスとサリアは黙ってしまった。
「将来を見通す力は次期国王に必要だと思っております。今後、あなた様がそういった力を身につけること、そして国のますますの発展を願っております」
私はスカートの端を持って頭を下げる。
「失礼いたします。レイアス王子殿下」
私は壇上に背中を向けた。振り返らない。少し悲しいけど、やっぱり私は王妃の器ではなかったのだ。こぼれ落ちた涙を拭いて、パーティー会場を後にした。
でも、このまま泣き寝入りなんて私らしくない、かな。