7.予約。
募集案件を打ち込んで暫く。
凡そ一時間か二時間くらいしてからだろうか。
ぽつ、ぽつと個人宛に連絡が届き始めていた。
「どんな感じ?」
「お前も少しは協力しろよ……。」
寝具の上で横になりながら此方を見てるティルを一瞥しながら、帰ってきた返事を見る。
大体……3つくらいか。
細かいところは直接会って話したい、という点に少しだけ評価点を上乗せしつつ。
逆に俺が蹴飛ばされた時を考え、そうなった時を考えて。
思考を一度振り払った。
「三人くらいだな、張ってある返事も大体定型文……なんだが、一人だけ違うな。」
「え、違う?」
「ああ、これ見てみろ。」
その画面を拡大するように、周囲に投影する。
こういう風に見せられやすく出来るのは便利だとは思うのだが。
どうにも口にし難い違和感が、拭い去れなかった。
「どれどれ……って、ああ、確かに。」
他二件は『了承した、時間帯の指定と場所の指定を』と。
分かりやすく言ってしまえば性別や年齢、その他を特定されないための一個人としての動き方をしているのに。
その一人だけは明らかに、こう。
『了解したが、何処に集まりゃいいんだ? 場所名じゃ分からねえから地図くれ、地図。』と。
「……分かりやすいなぁ。」
「多分彼奴なんだろうな、っていう想定はあるんだが。」
「へえ、知り合い?」
「だったらとっくに誘ってる。」
そんな友人なんかもいない。
だからこそ、今こうして頭数を集めてるわけなので。
「全員呼ぶの?」
「適正人数超えかねないのが怖いんだよな……。」
「適正?」
「一般的に言われてることなんだがな。」
冒険家で仮にでも、固定にでも組む場合は多くても3~4人が適正と言われる。
接続者と共鳴者、合わせて6~8人ともなれば別の可能性時空であっても立派な一集団。
敵視されたり、或いは服装からか貴族の集団とかと勘違いされる危険もある。
当然、数が多ければその分軽快に割くことも出来るが。
それならばそれで、集団戦に適正を持つ接続者が欲しくなるというオチが付く。
結局つまりは。
「何を求めるか次第なんだよなぁ。」
「ま、そうだよね。 で、我が共鳴者殿は何をお探しで?」
「未知。 今は誰も知らない場所に行くのが最終目標だ。」
正確に言えば――――たった一人だけ、一組だけがいる場所を探すのが目標。
今は言う必要性もないだろうから、黙っておくけれど。
「なら、ほら。 知り合いは増やしておいたほうが良いでしょ?」
「まあ、な……。」
「? あれ、どうしたのさ。 妙にやる気が無いっていうか。」
「同い年くらいでそんな相手作ったことねーからどう動けばいいか分かんねえんだよ。」
笑うなら笑え。
こちとら同年代が全くいない場所で育ったんだよ。
電脳世界に昔から浸っていた奴等とは、なんか隔意を感じて。
とまでは言わないが、目の前の相棒にはなんとなく気付かれているような気もする。
「ま、結局会ってみなきゃ分かんないもんだよ。」
「そんなもんか?」
「そうさ。 まあ……会って直ぐ可能性転移するわけじゃないんだよね?」
「そりゃな。」
全員の情報、組めるかどうかを踏まえた上で。
各々の準備とかも進めなければならない。
まあ、持ち込んだ資産が多少あるから事前準備くらいは出来るからこその行動なのだが。
それすら無いのなら、最初は荷物持ちとして資産を貯めることから始める必要があるわけだし。
「だったら出来る限り早く予定立てたほうが良いでしょ。 それに。」
「それに?」
ぐぅ、と腹の虫が鳴る音がした。
俺とティルのものが、ほぼ同時に。
「食事取りながらなら丁度いいんじゃない?」
「……かもな。」
気付けば既に昼食時を大きく回っていた。
各人に時間と場所……一名には地図込みで送りつける。
一時間後、第二食堂の片隅に。
予約テーブルを同時に申し込み、受領されたのを確認して。
「一時間後。 それまでの間、もう少し何が出来るかを突き詰めるぞ。」
「え~。 ボクは色々隠し持ってるタイプなのに。」
「アホか。 それを知らないでどう動けっていうんだ。」
「こう、勘?」
もう一発殴ってやろうかと思った。
……代わりに、溜息を漏らした。