1.ハジマリ。
気分転換に投稿はじめました。
本日は2~3話投稿予定。
『新入生は今すぐにサーバーΔに接続後、対幻想結界を解除して――――』
そんな放送が、耳元に掛けた空想受音機の外から聞こえ。
手の平サイズの写本機の電源を起動しながら、天を見上げた。
輝かしい人工太陽。
その真下を飛ぶ白き羽根の乙女と、その共鳴者。
地上を見れば、大地を滑るように移動する岩石姿の巨人の姿。
その肩には二人の男女と、騎士姿のような凛々しい青年の顔。
そんな、いつも通りの。
何処にでも見かける風景を眺めながら。
普段暮らす世界とは違う世界の片隅で。
予め配られていたアプリ――『新西暦史』へ目を通しながら時間を待った。
幾度も幾度も目を通したけれど。
それでも尚、目を通してでもいなければ興奮が顔に出てしまいそうだったから。
『新西暦450年。
嘗て西暦、と呼ばれていた時代から既に数百年以上が経とうとする世界。
そんな世界の変動が起こった切っ掛けは、とある天才科学者達の発見だった。
マクスウェルの悪魔の実在の証明。
其処から齎された、言ってしまえば無限動力の実現から更なる発展まではそう時間を要さなかったという。
失われるはずのない物質の喪失の根拠を追い求めた結果、発見された世界の重なり。
俗に平行世界、多元世界とも表されるようになったその場所は。
ほんの少しだけ、起こり得たことが起こらなかった結果の世界だったのだと。
大々的に発表した、世界の代表たち――後に、世界統一局として統一されることになる――は。
その世界から、同意を得て連れてきた始まりの幻想種……《エルフ》の存在を、世界中に証明した。
そして、数百年の間に。
他の世界の知識と、この世界特有の法則を用いた結果。
それらの多元世界を繋ぐ中心世界としての立ち位置を確立したこの世界は。
全ての世界への恩恵と、過去の存在を忘れないためとして。
空想世界『アルカディア』と呼ばれることになる、電脳世界を作り上げ。
異世界の、同一世界の、空想世界の存在を媒介とすることで接続を可能とし。
それを持ってして、世界の接続を確立したのだという。
目の前に映る、変わった世界の存在達。
名前を接続者。
そして、それらと結びついた者たち。
名前を共鳴者。
二つは一つのペアとして、死ぬまで同一の存在としてこの空想世界を生きている――――。』
そんな、大々しい締め括りと共に終わったアプリを終了し。
溜息を吐きながら、時間を待つ。
こんなことを謳っているが、要するに。
他の世界に繋がるには、共鳴相手が必要で。
そしてその相手は選べず、最も親しい可能性と、少しばかりの不確定要素で結ばれて。
それを得るためには、今待つ先に行く必要がある。
ただのそれだけ。
そして、その「それだけ」を得る為に誰もが一度は向かう先。
『新入生は、事前に配られた入場用パスワードを呼称して下さい――――。』
そんな言葉が聞こえてくるまでに、大分待たされた。
既に暗記するくらいには読み込んだ、そのパスワードを。
空に向かって、小さく叫ぶ。
「マクスウェルの悪魔は、実在する。」
そんな、嘗ての法則を否定する言葉と共に。
俺の視界は、空転した。
向かうは、第27世界統一局付属大学園。
通称【学園】と呼ばれる。
この世界を管理する場所の、お膝元の一つ。
そこに――――これから、数年の間。
通うことになるのだから。
幻想世界の人型生命体。
意志を持つ鉱物。
嘗て存在した、歴史上の英雄たち。
そして、「存在しない」と決め付けられないが故に「存在する」とされる上位存在たち。
もし。
そんな誰か、何かを。
手に入れられるとしたら何を求めるだろうか。
自由自在に魔法を扱う魔導師?
世界の物質を操る精霊術師?
騎士たちに命令し、仕え。 その活躍を間近で見る語り部?
上位存在達に憑かれ、新たな存在として確立する唯一存在?
そんな何かになれる可能性がある世界。
そんな何かを、実現してしまった遥か未来の物語。
科学が発展し、幻想と区別が付かなくなって。
幾星霜が過ぎた、いつかの果ての物語。
俺自身の目的の為に。
誰も知らない、世界の果てを知る為に。