もう一度、あの時へ…(キセキ~最初で最期の「愛してる」~、後日談)
「もう、二年か…」
僕はそうボソッと呟く。
何が二年なのかというと、それは僕の愛した人すなわち、「若菜なつみ」の死を知った日で、
僕にとっての彼女の命日である。
これは少し可笑しく、楽しかった彼の日の後の日の話し。
或る夏の日、僕は先輩と遊びに出かけていた。2人で思い思いの時を過ごした。
「じゃあ今日はお開きにしましょ。」そう彼女は僕に背を向ける。本当にここで彼女を帰していいのか?
言いたいことがあるんじゃないか?と僕が僕に問いかける。
駄目だ。ここで彼女を帰してはならない。だから思わず出てしまった。
『貴方のことが好きです。勿論、異性として。』
その一言。しかし彼女は
「そう… 嬉しいわ。」
返事は返してくれなかった。でもいつか、きっといつか。必ず返してくれると信じていた。
でも、次の日以降、先輩がが学校にやってくることはなかった。
「どうして。」
その言葉しか思い浮かばなかったんだ。
それからの時は、だらだらと過ぎていった。
今まで以上に、怠惰な日々を過ごした。
何のために生きているのだろう。
これから僕は誰を愛せばいいのだろうと。
ただひたすらに、考えながら…
それから、何年経っただろう。
一年、二年と過ぎていったような気がする。
その日もまた僕は、怠惰な日を過ごしていた。
親戚が死んだらしい。
そんな悲報でも、僕の心が揺れ動くことはなかった。
何度も何度も親に心配された。
「あまりにも冷めすぎている」と
病院にだって連れていかれた。
それでも僕の心はそのままだった。
この心は、乾いてしまっていた。
「ごめん…ちょっと歩いてくる。」
近くで親戚は皆泣いていた。
僕だけが真顔というのは流石にまずいと思ったので、僕はその場から離れることにした。
あそこから少し離れた場所に来た。
桜並木が広がり、綺麗な場所だった。
「綺麗だな…」
ほんの少し、笑った。
「ん?」
見渡すと、こちらを見つめる人がいた。
多分、亡くなった身内に似ていたのだろう。
「少し、墓でも見ていくか。」
そう呟いて、僕は墓場に向かうことにした。
「何をしてんだか…」
用もないのに、こんな場所。
他人の墓を眺めるだけ
「罰が当たるかもなw」
僕はふっと笑う。
春先、満開の桜が咲き誇る頃。
僕は未だに彼女に事を忘れきれない。
「未練がましいな…ほんとに。」
「え?」
僕は思わずもう一度墓標を見る。
そこには、
『若菜 なつみ』
と、あった。
「嘘だろ?」
そこに書かれていたのは、思いもしない名前。
動揺が抑えきれない。と、ピロンと通知が入る。
そこには
『なつみから1件のメッセージ』
とある。
来ていたのは、ボイスメッセージ。
僕は目を閉じて、耳を傾ける。
「あ、あ、なんというか、こんにちは? あはは!ごめんね。
これを聞いてるってことはつまり見ちゃったってことなんだね
お母さんに頼んだんだよ。もし、私の言った人がこの墓を見たら、これを送ってほしいって。
でもそんな確率、ほとんどないのにね。
分かる通り、私はもう死んでいる。昔から病気に苛まれてね。
医師には長くないと言われてた。
遊園地、誘ったでしょ?その日の前日に言われたんだよ。
余命一か月だって、酷いよね。
君に告白された時、びっくりしちゃったよ。嬉しかったし、私としても付き合いたかった。
私の余命はもうない。そんな状態で付き合ったとしても互いに傷ついてしまうだけ。
ちなみにいうと、家に上げたとき、何回もあるって言ってたでしょ?
実はあれ嘘なんだ。初めてだったんだよ、匠君が。
最後に一言言わして?
あの時は嬉しかった。ありがとう。そして、
『愛してる』。」
涙が止まらなかった。まさか彼女が病気だったなんて、思いもしなかった。
やっぱり何度繰り返しても意味ってないんだなって今やっと気が付いた、否、気が付かされたんだ。
そんなことがあって、今がある。
近頃、何故か「もし、彼女と一緒になれていたら…」と思うことがよくある。
まぁ、こんなことを考えていても埒が明かない。
「さあ!行きますか!」
僕は歩を進める。
~青年移動中~(ちょっと待ってて!)
僕の家から数十分。長良川沿いの河川敷に墓地がある。その近くの並木道には満開の桜。
まるで僕を待っていてくれたのかのように…
そして僕は、墓地の近くの神社に行く。いつも(といっても二回目なんだけどねw)の様に手水舎で手を清め、お約束の作法。さて、今回は何を願おうか?健康?勉学?良縁?まぁここは無難に健康でも…
いや、こんなこと起こったら奇跡でしかないが、
「もう一度、彼女と過ごした日々へ、
もう一度、あの時へ…少しでいいので、戻してください。」
なんでこんなことしたんだろうか、こんなこと願っても、何にもならいないのに。
本殿に背を向け、鳥居に向け、歩く。
鳥居を抜けようとした途端、後ろから声を掛けられる。振り帰った瞬間、閃光が周りを包み…
僕はゲームによくありそうな数字やアルファベットの羅列。
所謂『電脳世界』とやらに飛ばされたらしい。と、僕の後ろからコツコツと足音が聞こえ、
僕の後ろに立ち止まる。
「匠、か?」
と、聞いてくる。自分でもわかっている筈だろ…と、思いつつも、
「そうだ。匠だ。んで、おまえは誰だ?」
と、聞き返す。
「おいおぃ、紙に向かってその口の利き方はないよぉ」
「( ^ω^)・・・ナニイッテンダコイツ」と言わんばかりの謎返答である。
まったくもって訳が分からず、( ゜д゜)ポカーンとしている僕を見て(自称)神が
「悪かった。俺はTakumiまぁ所謂所の「創造神」ってやつだ。」
創造神か、かっこいいなぁ。
「んで、匠さんよ、何の御用で?」僕は彼に問いかける
「一つ聞こう。」と彼は前に一つ置き、
「お前は、もし彼女と一緒にられるなら、どんなことでも受け入れられるか?
そして彼女、もっと過ごしたかったか?」と、少し悲しそうな声で聴いてくる。
「勿論。」僕はそう答える。全く気にならなかったが、彼は僕の前にいた。
「そうか、そうだったのか、匠、悪かった。君と彼女を引きはがして。
この世界は「俺の物語」の世界なんだ。僕がそう決めればその通りに進む世界。
そして、君が主人公の世界。
途中までは、うまくいってたんだ。でも、彼女とめぐり合わせてから、君たちのうまく行く様に
むしゃくしゃしてたんだ。自分という「出来損ない」と比べてしまって。
だから、彼女の存在を消せばいいと思ったんだ。そして、彼女を、僕の世界から抹消した。
でもそれが駄目だった。君みたいな人がいたから。
こうやって、家族以外に、悲しむ人がいたから…」
彼はその場に泣き崩れる。そして彼は、
「彼女と一緒にいたいか?」と、かすれた声で聴いてくる。と、同時に、僕は大きく頷く。
「わかった。この物語、ハッピーエンドにして、絶対に書き終わらせるよ!」
「ありがとな。犬飼さん。」
「なんで僕の名前を?」
「いや簡単な話、どーせ僕の「匠」もTakumiからとってるんでしょ?
あとは簡単、僕の名字は「犬飼」ハイ以上!」
「そうだよ。匠。またな。次もまた。」
周りの文字がぼろぼろと崩れ始め、世界が白くなり、歪む。
最後に、彼は、「楽しめよ、人生を。」といっても決めるのは君だろう?Takumiさん?
目が覚めると、僕はベッドの上にいた。スマホを見る。
「時間は?え?7月5日ァ!?」
本当にやってくれたんだ。僕らがつながらない未来を、改変してくれたんだ。
「おっしゃいくぞー!」僕は集合場所に歩を進める。
その日は、二人思い思いの日を過ごした。
「じゃ、ここでお開きにしましょ。」そう彼女はそう言い、僕に背を向ける。今回は失敗しないはず。
「待ってください先輩。」先輩がこちらに振り返る。
告白しようとなると前々からの思いがこみ上げてくる。だから僕は構わず、
彼女に
抱きついた。
彼女は虚を突かれた顔をしていた。が、僕が
「なつみさん…大好きです…」と言うと、
「うん。お願いね。匠君。」と言ってくれた。
彼女を見ると、目が少しうるんでいた。この日を機に僕には彼女ができた。
前の世界とは打って変わり、ずるずると怠い日々が続くこともなく、充実した日を送れていると思う。
あれもこれも全部Takumiのおかげだ。ただ一つ引っかかることがあるまた逢った時、彼に聞いてみるか。
その後、高校、大学を出て、そこそこ名の知れた外資系の企業に就職できた。昔からやっていた英語と、趣味でやってたロシア語が評価されたらしい。そして彼女は医学部とかいうチート。
6年制ということなので、卒業は僕と同じ時期だった。もう少ししたら結婚しようとか、そんな話もしている。
これから、僕と彼女の新しい生活が始まろうとしている。さて、これからはどんな人生送るのだろう?
悲劇か、喜劇か、それは誰もわからない、僕も…彼女も…