余話
この余話で完結です。
「まいったな……」
私は頭をぼりぼりとかいた。
すっかり道に迷ってしまったらしい。
どうすれば本道に戻れるか、と思案していた時。
いつか、どこかで耳にした音色が聞こえてきた。
顔を上げた先、かすかに見える、仄かな灯り。
まさか。
まさか……。
私は震える足にカツを入れ、そちらへとむかって歩いていった。
近づくごとにはっきりとする、その光景。
祭の出店。
行きかう人々。
ああ、これは……。
立ち尽くす私の服の袖を、誰かが引く。
見下ろせば、そこには……。
「てっちゃん」
あの時、別れた時のままの幼い姿の甚吉の姿。
それはもう、明らかに生きている人ではなく。
「てっちゃん、どこ行ってたの。ずっとひとりで寂しかった。でも、もう大丈夫だよね」
甚吉は笑う。
何も含むところもない、無垢な笑みだった。
「甚吉……」
「てっちゃん、これ、あげる」
そう言って、手にしていた飴菓子を私に差し出して……。
私は、刹那迷ったが、それを受け取った。
私はずっと後悔していた。
ずっと甚吉に謝りたいと思っていた。
あの時、甚吉を置いて逃げたことを。
私は手の中にある飴菓子を見た。
きっと、これが正解なのだと。
そして、それを口に含み、甚吉に笑みを返した。
ありがとうございました。