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黄泉戸喫  作者: 眞上 陽
3/3

余話

この余話で完結です。

「まいったな……」


 私は頭をぼりぼりとかいた。


 すっかり道に迷ってしまったらしい。


 どうすれば本道に戻れるか、と思案していた時。


 いつか、どこかで耳にした音色が聞こえてきた。


 顔を上げた先、かすかに見える、仄かな灯り。


 まさか。


 まさか……。


 私は震える足にカツを入れ、そちらへとむかって歩いていった。


 近づくごとにはっきりとする、その光景。


 祭の出店。


 行きかう人々。


 ああ、これは……。


 立ち尽くす私の服の袖を、誰かが引く。


 見下ろせば、そこには……。


「てっちゃん」


 あの時、別れた時のままの幼い姿の甚吉の姿。


 それはもう、明らかに生きている人ではなく。


「てっちゃん、どこ行ってたの。ずっとひとりで寂しかった。でも、もう大丈夫だよね」


 甚吉は笑う。


 何も含むところもない、無垢な笑みだった。


「甚吉……」


「てっちゃん、これ、あげる」


 そう言って、手にしていた飴菓子を私に差し出して……。


 私は、刹那迷ったが、それを受け取った。


 私はずっと後悔していた。


 ずっと甚吉に謝りたいと思っていた。


 あの時、甚吉を置いて逃げたことを。


 私は手の中にある飴菓子を見た。


 きっと、これが正解なのだと。






 そして、それを口に含み、甚吉に笑みを返した。 

 

ありがとうございました。

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