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異世界なので断固拒否します!!

作者: 異世界転移した兄弟

習作第四弾。

正直、そろそろまともな作品を書きたいです。


『聖剣の勇者と魔杖の勇者、よくぞ魔王を倒してくれた、大儀である』


とある異世界の王城で、俺達兄弟は王族や貴族に囲まれての謁見の真っ最中。

偉い人に跪く事に縁遠い日本人学生には、正直辛いお時間。とっとと終わらせてくれ。

俺達兄弟は気儘なスローライフだけを所望してるんだ。はよ、山籠もりさせて欲しい。


――簡単に状況を説明すると、俺は弟と一緒に異世界に召喚された。

別段事故で死んだとかじゃなくて、それこそコンビニに買い物に行ったらいきなり。

兄弟揃って行きたくもない大学受験の為に通わされている進学塾の帰りに唐突に異世界の神様に呼び出された。

神様は魔王を倒して世界を守ってくれって頼まれた合意の上で召喚された系のテンプレだ。


現代社会はとにかく知識を詰め込まれて、頭の良い学校にいけいけと急かされて勉強三昧。

大人に限らず建前ばかりのコミュニティーなもんだから、本音で話せる相手は兄弟同士。

練習でも失敗が許されないばかりか、失敗してからの名誉挽回の機会はランダムで軌道修正困難。

説明書無し、チュートリアル無し、コンテニュー無し。


加えて、将来養って貰う為に育てたのが丸わかりの両親。

親の心が分からない?

いやいや、兄弟揃って将来は公務員になるって言ったら、大企業で出世して稼いで来いだなんて怒鳴る親だぜ?

透けて見えすぎてヤバい。そんなないない尽くしの上に、見かけ倒しな自由性のガッチガチのクソゲー。


子供でも分かる暗黒社会って、未来ねえなオイ。そりゃ

なんてバカな事を考えて国王の話半分に聞いてたら、きちゃったよ。


『故に、貴公らに爵位を褒美として与えよう!』


「「あ、すみません、爵位いらないです」」


俺こと兄者、そして兄弟の弟者がハミング。

流石弟者、気が合うな。


国王だけじゃなく大臣やらの他の偉い人達が唖然としてる。

分かるよ、偉い人の話に口出したら失礼ってのはよーくわかってるよ。

国王が咳払いをして気を取り直し、もう一度同じ事を言ってきた。

聞き間違いだと流したいのはわかるけども、そうはいかない。


「「異世界なので断固拒否します!!」」


そして玉座の間は騒然に包まれた……。



 

* * *




はい、弟者です。

これから兄者とテレパシー会話をしながらお送りしたいと思います。

相方の兄者さん、電波良好よろしいですか。てすとわんつーわんつー。


"良好よろし。オーバー"


『……そちらの事じゃ、国家に叛逆しようなどと考えておらぬのは分かるぞ。して、何故不要と断じるか、述べてみよ』


理解のある国王様で助かります。

行き成り打ち首とかならなくて良かった。

まあ、そうなっても魔王を倒せるくらいの僕ら兄弟なのでそうなったら逃げます。


それで兄者兄者、僕から説明しても良いですか。

……良いですね、ありがとう。


「僭越ながら国王様、爵位を受け取らない訳をご説明させて頂きます。結論から述べますと、我ら兄弟に貴族の振る舞いが不可能であるからです」


一息挟んで僕は言葉を続ける。


「貴族とは生まれついてからそうなるように礼儀作法をはじめ、政治的、経営的、戦略的教養が不可欠」


貴族は子供の頃から貴族に成るべくして育てられるから、あの有象無象の悪意と謀略の社会で生きられるのです。

僕達はそんな魔境に放り込まれて死にたくないです。


"それに俺達の名声(笑)を利用したがるのも、見え見えだしな"


そうです。貴族って子供作って家を繁栄させるのもお仕事ですからね。

それだけならまだしも、透けて見える功名心や険悪な他家との付き合い方とか厄介の種は欲しくありません。

ご褒美とは無縁です。純粋に美人さんとイチャイチャ出来るなんて美味い話が無いのです。


"そういや、貴族の人間ってパッと見が太ってなくても実際は……ってのが通説らしいぜ"


不健康断固お断りです。


「そして何よりも、責任が付き纏うものです。元の世界での我ら兄弟は一介の民草。

それを受け止められる程の精神的成熟をしておりませんし、人を導ける程の器量は一切御座いません」


僕らがやってきた異世界は十五歳で成人認定されてます。

昔の日本で言う元服みたいなものでしょうか。でも、僕ら世代だと子供も子供。

大人になったとやんちゃしたら子供だと怒られてしまうのが定番。


"おっさん臭い事言ってけど俺らまだ十八、そんな変わんないって"


だまらっしゃい兄者。

この後、大臣が領地を与える事を国王に具申されましたが……。


「「異世界なので断固拒否します!!」」


それもお断りしました。

どう考えたって土地をぽーんと与えられても開拓しなきゃならないし、人が集まって村とか町を作る破目になりますからね。

結局貴族と同じ案件になりそうなので無理です。

補佐官や指導者をつけるとお言葉を頂きましたが、僕らがお飾りでは他の貴族やその未来の領民達に示しが付かないと言及して回避。


顔を渋らせる王族関係者。

大変申し訳ありませんが、僕達の無難で穏やかな生活の為にも首を縦に振る訳にはいきません。

それにほら、僕達が爵位を放棄した事聞いて、残念がったり安堵したりする貴族達を見ると尚の事間違いじゃないと確信できます。

僕らはモテたいけれど、本当はちやほやされたいですが、モテるよりも安穏とした日々を所望してるのです。


と、そこに喧騒を破る声。


『……聖剣使い殿、魔杖使い殿』


"あれは確か、冒険者ギルドのマスターだな"


それから魔道ギルドに、商業ギルドのマスターもご一緒されてますね。


『爵位ではなく、SSS級冒険者のギルドカードならば要るか?』

『もしくは魔道ギルドで新たな魔道技術を開発する研究室はどうだろう?』

『あるいは、お二方が元いた世界の技術や生活用品のアイディアで商売を始めてみるのは如何でしょうか?』


"お偉方の勧誘が半端ないな"


お声掛っただけで卒倒しそうな世界の著名人ばっかりで驚きますよね。

僕らはお互いに顔を見合ってから、当然の様に言い放つ。


「「異世界なので断固拒否します!!」」


『『『何故だ!?』』』


声を揃えて問い質される僕ら。このやり取り、後何回やらされるんでしょうね。


「謹んで申し上げます。順当に、まずは冒険者ギルド様から」


冒険者と言うと薬草集め、モンスター討伐、街から街への護衛と何でもする。

それは勿論、盗賊退治等と言った殺人依頼も当然の様にあるからだ。

何よりも高ランクになる程、王族や貴族と依頼を介して関わりを持つ事になり政争に巻き込まれる可能性も否めない。

なので端的にご説明するとこうなる。


「命の遣り取りは魔王討伐の任で間に合っております」


"アレは辛かったよな。スライムとか殺人エイとか動物型ならなんとかなったけど、ゴブリンとか人型は精神的にきっつい"


魔王城に近づく程モンスターは強くなるし、人型モンスターも多くなるしで苦しかったですよね。

慣れるなんて言える人は元々そういう人間かそういう文化圏の人達だけで、異世界人の僕等には到底無理ですよね。


"魔王がドラゴン型でマジで良かった"


本当にね。


「続いて、魔道ギルド様」


魔道ギルドと言うのは魔法の手解きや世界の真理を魔法の観点から解き明かそうと言う組織。

魔法専門の研究所みたいな認識で間違いありません。

そして、研究とは使い手がより良い生活が出来る様にと行われる実験の積み重ね。


「生活圏で使える魔法の研究だけであれば良いですが、時と場合によっては、殺傷力、殲滅力のある魔法研究を行う可能性もありえましょう。医療関係の研究も行ってほしいともいずれ要請された場合、確かに治療目的で使用される事もあるでしょうが、最悪致命的な病魔を発生させる事も可能な魔法も研究する羽目になる事が察せられます。我々は、後世に恐ろしい魔法使いとして名を残す事を決して望みません。自惚れにも等しい発言を行いますが、我々の感性や知識はそれを可能としてしまう為、辞退いたします」


極端な話、最終的には命を弄ぶ事が多くなる。

ならばその可能性は初めから積んでおくのが良い。

どれだけ悪用しないと公言されても、それは現時点現代だけの話。

それにそもそも、悪用する心算はなくても悪用してしまうのが人間。

人間不信気味だが、本当に悪名を轟かせたくないから徹底的にしておいて越した事は無い。


「商業ギルド様においては、我々の知識を元に作り出した商品に何かしらの問題や不備があったとしても、我々は責任を取れないので他の方々と同様にお断り申し上げます。今あるもので今ある生を豊かにする事に尽力して頂きたいのです。はっきり申し上げますが、地道な研究が積み重ねられない成果の物品は世界に波紋を呼びます」


人間は優れた物を求める。便利な物、快適な道具。人間の根幹にあるのは如何にして楽に生きるかと言う自堕落な本能。火を楽に付ける為にコンロ、危険な猛獣を安全に殺す為に銃、莫大なエネルギーを得る為に原子力発電を開発した。今言ったものは本の一部だが、使い方を誤ったり、悪意的に改造したら、それは強力な兵器になる。

現時点のこの異世界でも、斧や弓等も生活に欠かせない物なのに武器として使える上、殺す為だけの剣なんて物もある。危険な物は与えないのは人間として当然の事だろう。それが如何に人間を繁栄させる事に繋がるか分かっていたとしても、降って湧いた道具で栄える事に疑問を禁じ得ない。

耐久力や耐火性のある壁や素材等と言った人を危険から守る物を販売すれば良いではないかと指摘を受けるだろうが、それが廻り廻って防具等の軍事に転用されたら目も当てられない。他国はそう言った物を求めるだろうし、後の国王の子孫が戦争に乗り出した際、もう止め様がない。なら、無い物は無いとした方が建設的だろうと僕と兄者は考える。


『我儘を言わないで頂きたい、勇者殿!!』


そこに、別の第三者の声が響く。



 

* * *




どうも、兄者だ。

たった今声をあげたのは、老齢の大司祭だ。

どうやら俺達の褒美を悉く断る様が気に喰わない様で憤慨気味だわ。

ま、仕方ないよなあ。どれもこれも平民とかからすれば咽喉から手が出る程の待遇やら名誉なんだろうしよ。


『何の為に貴方方は異世界から召喚されたとお考えなのか』


……ああ、えーっと、これってお決まりのパターンの奴?

弟者もげんなりした顔してんなあ。宗教絡むとそういう思考にどいつもこいつもいっちまうのかね。


『世界の秩序と安寧を守る為に我らの神に召喚されたのでしょう? ああ、我らの神はお二人のお言葉にお嘆きに違いない!』


もう面倒なので説明省いてぶちまけていい、弟者?


"いいですよ、兄者。僕もその後に本音をぶちまけますので、やっちゃってください"


GOサインは貰ったので、遠慮なく。


「はっ? 違えけど? 俺達はその神様と直接話して魔王を倒してくれって頼まれただけなんだけど?」


敬語捨てたぶっきらぼうの物言いに一同騒然。そりゃそうだ。現代社会で言うと、教皇にタメ口でバカにしてるのと一緒なんだからさ。この世界じゃ神の代理人みたいなものだから特に権力やらが集中してるし、今まで敬われて接せられたんだろうけども。俺達は多神教の国の無神論者。敬うのはあくまで神仏関係者とその精神なんだよバカ野郎。大人になったら何やってんだ俺って頭を抱えそうだけど、今は若さ任せにくっちゃべる事に集中する。


「俺達は縁も所縁もないアンタらの神に行き成り呼び出されて、突然畑違いな事を直接お願いされて、交渉した上で召喚に応じたんだぜ。神様と交渉して成立した商談なわけよ。それ以外の事は異世界人の俺達にとっちゃ寝耳に水なワケ。神様と直接聞いてねえのかい?」


『……』


あ。怒ってる怒ってる。何分、最期の一言が一番パンチが効いてるかもな。

神の代理人なのに肝心の神様と話した事が無いってのはきっついよねえ。

バイト先でベテラン面した先輩より新米アルバイターが店長から可愛がられてるのを見てる感じ?

真面目に生きるのは良い事だけど、媚び売った方が楽に生きられるんだよな人間って、馬鹿らしい。

どうしようもなくなったら別の手に移れるように処世術を張っておくのが賢い生き方。

頑張ってる人間とかには悪いけど、頑張ったから人に気に入られる訳じゃないんだよなあ。

やっぱ現代社会って勝ち組じゃない奴以外は食い物にされるんだよ、腐ってるわな。

さっさと腐敗した社会から離れたい。


"兄者、捻くれた考えを垂れ流すのをやめてください。僕の脳まで腐ります"


『で、ですがお二人は力ある者! だからその力で人を導いて頂きたい。我らの世界は漸く魔王の脅威から解放されて浮足立ち、昏迷しつつある。ですので、人々の胸に希望の火を灯して欲しいのです』


弟者、あとよろしく。


"了解です、兄者"


「では、我々の希望は如何なるのですか。我ら兄弟は元は一介の人間。我々が望む事は誰とも争わず、誰とも競わず、静かに生活したいだけなのです。神様には魔王を倒した後は、好きに生きて良いと約束を取り付けて頂いて打倒魔王の度に出たんですよ。それなのに、あまりにも酷じゃありませんか? 僕達は僕達の使命を全うしたんです。普通ならしなくても良い命がけで、見も知らぬ他人の為に、我々以外に為し得ない事を、たった二人で。本当は貴方方の様な為政者がすべき事を、です。十分に献身したでしょう。? 神様との契約は果たされましたから、僕達には与えられた対価を満喫する資格は十二分にあります。そもそも、昏迷とした世界に秩序を齎すのが貴方の使命です。子供に任せないで頂きたい」


一息ついて、すぐに間髪入れず。茶々を入れさせない様に弟者が結論を言う。


「後、司祭様のお言葉は、僕達と神様の契約を破る事に相違ありません。そう受け取っても宜しいのですか? もとい、国の有事の際に使える人材を残しておきたいのは理解できますが、僕達はそういう事に関心は一切ありません。慎ましい自由な生活をしたいだけなのですから、魔王退治以外の有事に巻き込まないでください。そういう事は全てこの世界の人達で解決してください」


ほんと、それだよな。異世界の事は異世界で解決しろよ。

なんで俺達が言う事は一つ。


「「異世界なので断固拒否します!!」」



 

* * *




結果、なんやかんやと俺達兄弟を国に残そうと色々提案されるが即答で断り続ける。

例え、王女様や聖女様、果ては国の好きな女を好きなだけ嫁にして良いとか言われても断る。

ハーレムはいらねえんだよ。それなら好きな娼婦とヤる代金を何時でも全部国が払ってくれるとかの方がまだマシ。流石にないだろうけどさ。


"それは醜聞になるので、ダメでしょう……"


だよな。

最期らへん、もう毒殺するしかないんじゃねって空気になってきたからトンズラこいちまった。

今はどこかの国で売られてた、兄弟それぞれの好みの美人女奴隷を買って、人里離れた森の中で悠々と山籠もり生活してたんだけどさあ……。


『『ご主人様、どうか私達の種族をお助け下さい!』』


買った美人奴隷が人間に迫害された謎種族だったよ!


「「異世界なので断固拒否します!!」」


異世界の厄介事は異世界人に解決させようとするのがテンプレらしい。

マジ勘弁。異世界は異世界で解決してくれえええええ!!!


異世界系統の作品を読む度、思ってた事。

どうして異世界は異世界(現代社会)に助けを求めるのか。

え、人気ジャンルだから?

それもまた異世界を求める事と同じなのだろうか?


ところで、(異世界の)人類滅亡、人類排他みたいな系統の作品って需要があるのでしょうか。


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