表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10.これからも

私は二人へこの日最後の質問を投げかけた。



◆これからもドラクエ10を続けますか?


セ「続けると思います。」


春「これからも続けますよ。」



_____________


ドラクエ10も発売されて今年で5年。

高校や大学で始めた人には社会人になって生活スタイルが大きく変化した人もいるだろう。

育休中にゲームを開始した人も子供が小学生になって時の流れの早さに驚いているはずだ。


私も5年という年月を振り返ってみると、かなりの割合をドラクエ10に、ゲームに使ってきたような気がする。

果てしない時間の無駄だったと切り捨てることも出来るが、良いこともあったような気がしないでもない。


良かったこととして一番に思い浮かぶのは、ドラクエ10という作品を通して色んな人に出会うことが出来たことだろうか。

今まで取材をさせてもらった人達とは、リアルでの生活―家と会社を往復するだけの中では絶対に会うことが出来ない人々だ。彼らからは新鮮で刺激的なドラクエ内外に関する話を沢山聴かせてもらった。

今回話を聴かせてもらったセブンさん、春鹿さんもそうである。

自分の母親より年上である二人からは、自分が知らないゲームの歴史や社会の話、ドラクエ黎明期ならではの貴重なエピソードを聴くことが出来た。

ゲーム勃興期の空気を知らない私にはとても魅力的に聞こえたものだ。


それ以上に驚いたのが二人の仲の良さである。


歳をとってくると友達が出来にくくなる。

社会に出てから腹を割って話せるような関係を築くのは難しい。

私も嘘偽りなく話ができるのは小中学校の友人までだ。

だが、目の前のお二人は紛れもない友人関係を築いている。

普段はお互いが700km以上離れて生活しているが、数カ月に一度東京でお酒を酌み交わす仲良しである。もちろん酒の肴はドラクエ10の話題だ。

20どころか60を過ぎて友達を作ることが出来たお二人がとっても輝いて見えた。

これがオンラインゲームの本当の魅力なのかもしれない。



私はペンを置き、改めて本日のお礼を述べ世間話をしてからお二人と一緒に店を出た。

店を出ると雨はすでに止んでいた。

代わって夕日が桜の花びらを暖かく包み込んでいた。


(了)





そして最後に少しだけ余談を。


この日の取材だけでは聞き漏らしている部分が多く、LINEやゲームチャットでセブンさん、春鹿さんには何度も質問させていただいた。

あれは取材から1月半ほどが経過した頃のこと、春鹿さんからこんな話を聞かせてもらった。


野良で魔法の迷宮を回っている時に、一緒に組んだ人から「キミーさんのチームですか?」と聞かれたらしい。

たまたまステータスを見た時に表示されたチーム名(キミーの瞳に乾杯)に心当たりがあったのだろう。

しばらくチャットをしている中で

「小説家になろうのほうで、60歳以上の人の話を書いてますよね~」

と話しかけられて対応に困ったという。

結局春鹿さんは、それは自分ですよと正体は明かさずに、パーティーは解散されてしまったのだが勿体無い思いをしてしまったそうだ。

私も世間は狭いなあと妙に感心してしまった話であった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ