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色欲のアスモデウス

色欲という事でピンク要素のある回です。

性的描写が苦手な人はご注意下さい。

「それに魔王は文字通り悪魔の王。〈悪魔使い〉にも繋がるだろう」

「そうなのか……しかし」

 魔王を満足させる……とか、無理ゲーじゃないか?

 妖艶な笑みを浮かべてこちらの様子を伺っている姿は、淫靡で余裕に満ちている。


「ほほう、やけに親密なんだな、レイス?」

「まあ私を退屈な任務から解放してくれたしな」

「ふむ? まあいいか。とりあえずお客さんを歓迎しようではないか」

 アスモデウスが手を振ると、左右に控えていた露出の高い美女達が、俺へと向かってきた。

 目のやり場に困るくらい際どい部分しか隠していない極小のビキニ姿。そんな女の子達がうふふと笑いながら群がってくる。


「なっ、ちょっ」

 俺は逃げようとしたが足がもつれて転んでしまった。そこへ我先にと女の子の手が伸びる。

 ヒンヤリとした液体を俺の身体へと塗りつけてきた。ボロ切れのような地獄の服装、その隙間へと白くしなやかな手が入り込む。


「ま、待て、な、やめろっ」

 抵抗しようにも多勢に無勢、下手に手を動かそうものなら、柔らかな肉丘に当たってしまう。

 慌てて手を引こうとすると、マイクロビキニの紐が引っかかり、かろうじて支えられていた肉球が、弾むように転がり出てしまう。


「うふふ、えっち」

 そう言いながら隠すどころかかえって擦り寄ってくる始末。女達の手でボロ布が剥ぎ取られ、謎の液体が全身に塗りたくられていった。

 既に男として反応を示す所まで何人もの手が這い回る。



「いっ、や、やめろっ」

「うふふっ」

「うふふっ」

 耳元で囁く様に笑い、俺を弄ぶ。もうどうにでもなれと思った時、強烈な違和感が襲ってきた。

 我慢の限界を越えたはずなのに、何も起こらない。いや、弾けそうな心を何かがぎゅっと掴むように堰き止めていた。


「あ、あぁ……」

「まずは色欲の園の洗礼を受けて貰わねば、失礼にあたるでしょう?」

 いつの間にかソファから立ち上がり、近づいてきたアスモデウス。その身体は青年からすっかりと女性へと転じている。

 身体に纏う布は半透明で、隠しているようで隠していない。抜群のプロポーションが目の前にある。

 見るだけで異常に鼓動が高まっていく。周囲の女達は依然として身体を撫で回してくる。

 ひくひくと全身が痙攣する程に高まりながら、無理矢理押さえつけられるような不快感。

 これがレイスの言っていた決して満足することのない罰。切なさともどかしさ、どうしようもない渇望が俺を満たしていた。




「ふふっ、流石にそのままじゃ試練になりませんね。下がっていいわ」

 アスモデウスが再び手を振ると、俺の周囲にいた女達が1人、また1人と離れていく。

 しかし、アスモデウスが目の前に居るだけで、鼓動が落ち着くことはない。


「さあ、煩悩のままに私を満足させなさい」



 俺はモヤの掛かったような思考の中、攻略の糸口は見つけていた。

 千々に乱れそうな心を繋ぎ止め、視覚へと意識を集中する。

 柔らかそうで張りのある白い肌。僅かな動きにもプルプルと震えている。

 俺はそこから視線を離さぬままに立ち上がり、アスモデウスを正面に捉えた。

 誘われるように右腕が持ち上がり、惜しげもなく晒された双つの丘へと。

 思った以上の柔らかさに、指がズブズブと食い込み、それでいてしっかりと包み込むように押し返してくる。



「ふふっ、どうかしら。極上の……」

 余裕の笑みを浮かべていたアスモデウスの瞳が、僅かに見開かれる。

「あ、何、何を!? ふぁうっ」

 アスモデウスは突然にガクガクと震え始め、崩れ落ちそうになるのを俺は左腕で抱き支えてやる。

 俺と触れる箇所が増えた事で、伝わってくる情報も増えてきた。更なる追い込みにかかる。



「ひっ、まっ、おかしい、こんなのっ、おかしいからっ」

 俺の腕の中で激しく痙攣するアスモデウス。先程の俺のように、いやそれ以上に襲い来る刺激に苛まれていた。




 アスモデウスや周りの女の子達を見た時から、その容姿以外に見えているものがあった。

 魔力の流れなのか霊気の流れなのかは判別できなかったが、感情の流れが視覚情報として見ることができたのだ。

 楽しそうな感情、悦びの感情。

 周りの女の子に比べて、アスモデウスは感情の揺らぎに抑制を効かせているようだった。

 常に余裕を持って物事に対処している。


 ならばとその抑えられた感情を動かしてみることにした。

 ミュータントの魔力を操作して爆発させたように、アスモデウスの感情を動かし、隠されている感情を引っ張り出す。

 羞恥心や愛情、喜び、切なさ。アスモデウスの奥にしまい込まれていた感情を表へと。



「あ、やっ、許して、ごめんなさい」

 俺を見上げる瞳は潤み、顔全体が赤く染まっている。初心な乙女が初めて抱きしめられたような、甘く切ない表情。

 淫靡に見えた大人のかおが5歳、10歳と若くなった気がする。

 他人の感情を操作している罪悪感。しかし、手を緩めては魔王を陥落する事はできない。立て直す隙を与えぬように、一気に攻める。



「何を許して欲しいの?」

「わからないっ、こんな、恥ずかしくて、でも嬉しくて、おかしくなりそうなのっ」

 初めて恋に堕ちた時のような、甘酸っぱい感情。それには魔王も戸惑いを隠せなかった。

「なら満足してくれたのかな?」

「した、しましたからっ、早くっ何とかしてっ」

 言質をとった俺は、無理矢理表出させていた感情を、再び深い所へと鎮めていく。

 それと共にアスモデウスの表情も落ち着いていった。




「人の心を弄ぶ魔王たる私が、逆に操られるなんてっ」

 一度落ち着いたアスモデウスだが、再び顔色を怒りで赤く染めていた。

「前もって言ってくれたら、もう少し心の準備をして楽しめたのに」

 続いて残念そうな顔になる。

「レイスも酷いわね、こんな隠し玉を持って来るなんて……」



「とはいえ約束は約束ね。正直、満足なんてしてないんだけど、許しちゃったし」

 さっぱりとした様子のアスモデウス。しかし、もう一つ目的があるのを思い出した。


「すまん、お願いしたい事がもう一つあるんだが」

「あら、何かしら。私にできることなら、もう一度楽しませてくれたら叶えてあげるわよ」

「〈悪魔使い〉のスキルを習得したいんだ」

 その要求にアスモデウスは、落胆の表情を見せた。もしかして彼女には無理な事なのか。


「そんなの私を弄んだ時点で持ってない方がおかしいわ」

「え?」

 俺はポタミナを取り出して確認する。すると確かに〈悪魔使い〉のスキルが追加されていた。しかもそれなりのレベルで。

 魔王クラスを操った事で、一気にレベルが上がったようだ。それよりも他に気になる点があるのに気づく。


「何だこれ、バグったのか?」

 同じように並んでいた〈魔導技師〉〈死霊術〉それに〈看破〉のレベルが跳ね上がっていた。

 アリスとの特訓で必死に上げた片手剣の、3倍くらいになっている。



「私やアスモデウスを倒した扱いなのだろうな。私の身体も散々弄んでいたし」

 横から覗き込んだレイスが告げる。人聞きの悪いことを言うレイスに文句を言う事よりも、湧き上がる喜びの方が大きかった。


「これだけあれば、ルーファの召喚も?」

「ああ、問題ないのではないか」

 〈悪魔使い〉の知識なのか、脳裏に召喚用の魔法陣も浮かび上がっている。

 それと共に魔力を生贄に、悪魔を呼び出す方法も理解していた。


「ねぇねぇ、何の話なのかしら?」

 1人置いてけぼりだったアスモデウスが、口を挟んでくる。

 俺は魔王としての見解を聞きたくなって、彼女にも事の経緯を説明した。



「ふぅん、面白そうな事を考えているわね」

「こっちは必死なんだが」

「わかってるわよ。だから面白いんじゃない」

 赤い唇を吊り上げて笑う様は、さすが魔王様か。他人の苦労を喜んでいる。

 しかし、何か思いついたようでパンと1つ手を打った。


「そうね、試練を突破したご褒美に、悪魔の素体を用意してあげるわ」

「素体?」

「ええ。貴方の想い人と心がぶつからないように、心がからっぽの身体を」

「そんな事できるのか!?」

「ちょっと準備が必要だけど……そうね、少し待ってちょうだい」

 アスモデウスは側に控える女の子から、紙を受け取るとサラサラと何かを書き始める。

 そこにはアスモデウスの名が刻まれた魔法陣が描かれていた。


「これをベースに呼び出してくれたら、私の用意する素体が引っ張られるようにしておくわ」

「本当にいいのか!?」

「ええ、いいわよ。忘れていた想いを引っ張り出してくれたお礼に、とびっきりの素体を用意するわ」

 嫣然えんぜんと微笑む彼女の手を取り感謝する。これでルーファの心に異物が入り込む事はない。ルーファのままで転生が可能になるはず。



「うふふ、そんなに感謝してるなら、ちゃんと私の相手をしてもらおうかしら?」

「え、そ、それは……」

 骨までしゃぶり尽くされそうな笑みで迫られる。さっきは油断しているところを奇襲できた感じだが、改めて相手するとなると恐ろしい。


「ええい、調子に乗るな」

 そこへレイスが割り込んでくれた。

「あら、いいじゃない少しくらい。それに貴女の彼氏じゃないんでしょ?」

「そ、それはそうだが、死なれても困る。私の生気タンクだからな」

「ふぅん〜そうなの。まあいいわ。それより、その格好じゃ先に進めないでしょう? 服を用意させるわ」

 やけにあっさりと引き下がったなと思いつつ、自分が素っ裸である事を思い出した。

 思わず身体を隠すようにしゃがみこんだ俺を、周囲の女の子のクスクスとした笑い声が包んでいった。

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