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村の奪還作戦

 黄昏の傭兵団は9割が戦闘員で、今回の呼びかけに40人が集まってくれた。

「アタイ達が先陣だよっ、命知らずはついておいでっ」

「「はい、ミコ姐さん!」」

 戦闘用ホムンクルスであるトミコは、すっかり副団長という感じで収まっている。

 ミュータント化もほとんど暴走しないうちに魔力を抜いたお陰で、後遺症が残っていないらしい。

 ムエタイを基軸とした格闘戦術は、かなりの戦力と言える。


 アームストロングが率いる本隊と、トミコが率いる先鋒隊。それに俺達の遊撃隊で約50人。

 イザベラの配下である偵察兵が数人同行してくれる事になっていた。

 戦地調停官として戦況を見極める必要のあるイザベラの、手足となって動いていた彼らは、集団戦の情報収集に長けている。


 黄昏の傭兵団の砦で陣容を確認した俺達は、多少相手が強くても勝てそうな気になっていった。



「さぁ者共。ログアウトの時間だ!」

 アームストロングの言葉に、場が静まり返る。

「ああ、そんな時間だな」

「また明日な」

 膨れ上がっていた気炎が一気にしぼみ、次々とログアウトしていく。

 こればかりはどうしようもない。


 シナリと子供達はブリーエの王城で匿ってもらっている。ルフィア、アリスには砦で待ってもらうことにして、拍子抜けした俺達もログアウトした。




 翌日、ログインすると他の面々もログインしてくるところだった。

 一日のプレイ時間は約6時間。ログアウトしている18時間で約10日の時間が過ぎている事になる。

 アームストロングの素早い決断で稼いだ時間も、少し勿体無い事になってしまった。


「がははっ、敵は強いほうが燃える」

 アームストロングは豪快に笑っていた。

 イザベラの部下は、俺達がいない間に偵察を行っていてくれたらしい。

 1人が現場に残り、ポタミナで状況を伝えてくれる。


「村に入ったのは約50人か」

 数の上では互角。強さまではわからないが、やはりこちらよりは強いと見るべきだろう。



「考えたって仕方ねぇ。コーシは戦闘スタイルもそうだが、慎重過ぎるんだよ」

「ようやく出番かい。行くよ、野郎ども!」

「「おぅ、ミコ姐さん」」

 トミコが率いる先陣部隊から、村へ向けての行軍が始まった。




 村が見える所まで進むと、イザベラの部下が寄ってくる。

「敵方に増員は無いが、こちらの接近にも気づいたようだ。村の中が慌ただしくなっている」

 まだ点のようにしか見えない物見櫓から、正確にこちらの状況を確認しているのか。


「どうする?」

「だからお前は考えすぎだ。トミコ、先陣は任せるぞ」

「分かってるわ、行くわよ!」

「「はい、ミコ姐さん!」」

 黄昏の傭兵団の中でも血気盛んな15人からなる一団が、村へ向けて走りだした。



 それに対して村からも出て来る影がある。数は10人程とこちらよりも少ない。相手の自信の現れか、逆にこちらを警戒して様子を見ているのか。

 程なく両軍が少し離れた所で対峙。しばしの睨み合いから、一気に間合いが詰まっていく。

 野盗側の人々は次々にその姿を変えて、主に上半身を巨大化させて冒険者達に向かっていた。


 俺の〈看破〉によると、トミコが最も強く、次に村から出てきた野盗達。冒険者達は俺と変わらない強さに見える。

 ただ個の力はそうでも、プレイヤー側には明確に連携がある。

 盾持ちの戦士が前衛を務め、サイドからアタッカーが、後方には魔術師や回復職がサポートしていた。

 数が相手よりも多い事もあり、しっかりと受け止めているようだ。

 人数差をより大きくしているのは、トミコの暴威だった。3人を相手に引くこともなく、押し気味に戦っている。

 立ち位置を巧みに変えながら、的確に打撃を与えていく。


「あんなに強かったのか」

「魔力供給炉の時は寝起きで、ミュータント化もあって、本来の力は出せてませんでした」

 ミュータントの力を十分に引き出していたようにも思えたが、格闘術というのは全体のバランスも大事だ。

 極端に肥大化した脚は、左右のバランスを崩してしまい、動きに制限も与えたいたらしい。


 一方、ミュータント達の動きも強さを見せている。アリスやトミコと違って、アンバランスさが無い。片腕、片足ではなく、上半身、下半身の単位で巨大化している。

 下半身が強化されると、移動が機敏で、上半身が強化されていると攻撃が力強い。

 現状は敵を受け止める盾役タンクと敵の数が拮抗しているので、受け止めれているが、敵の方が多くなってくると厳しくなるだろう。


 そんな中、トミコが1人のミュータントを撃破した。そこで野盗側が撤退の気配を見せて、トミコも深追いはせずに、前哨戦を終えて戻ってきた。

 迎える本隊は沸き立っていたが、実際に戦ってきた団員達の表情は固い。



「ちょっと遊ばれたねぇ」

 トミコの評価に団員達から反対の声はない。どうやら相手はこちらの手の内を調べるのに徹していたようだ。


「そんなに強いのか?」

 アームストロングの問いにトミコは肩をすくめる。

「相手に連携がなければトントン。でもずっと村の方から視線は感じたねぇ」

 トミコの隊をじっくりと観察していたって事だろう。


「何よりミュータント化した不安定さがなかったね。アタシの時みたいに暴走を待つとかは意味なさそうだよ」

 本人とすれば苦い記憶なのだろう。もしかすると相手がミュータント化を使いこなしているのが悔しいのかもしれない。



「あんまり情報を与えないうちに決着を付けたほうが良さそうか」

「もっと強いのが控えてそうだけどね。まあ、アタシとアンタなら抑えれるだろ」

 アームストロングとトミコは不敵な笑みを浮かべて頷きあった。

 アームストロングは団員達に細かく指示を伝えてから、こちらへとやってくる。


「大体は聞いてただろうが、相手に読まれる前に仕掛ける。そっちは遊撃として、適当に動いてくれや」

「適当って……」

「お前らの連携はお前らが一番わかってんだろ。それに口出すつもりはねぇし、アテにもしねぇ。俺達は戦闘訓練に利用させてもらう」

 元々は俺達の村。アームストロングに付き合う義務はない。しかし、自分達にも利はあると伝えてきた。この辺が人心掌握の上手さだな。


「あまり無茶はするなよ。特にトミコは死んだらそれまでだ」

「わかってるよ」

 アームストロングは、それだけ言い置いて自分達の隊へと戻っていった。




「でわらわ達はどうするんじゃ?」

「できたら相手と話したいところなんだがな。ミュータント化を制御できるなら、アリスの治療にも役立つだろうし」

「兄様……お気持ちは嬉しいですが、甘い考えは危険です」

 そうだろうか。


「アトリーが思うようにすればいいと思うよ。もしかしたら、子供達の親もいるかもしれないし」

 リオンの言葉にはっとする。子供達の親はミュータント化して暴走する事を恐れて、村を出ていった。

 その後、野盗達に拾われている可能性もあるのか。


「まずはちゃんと相手の意思を確認しないとダメだな」

 野盗のかしらクラスに話をしてみる。そのために少人数での潜入を試みる事にした。




 アームストロングにこちらの方針を伝えると、また面倒な事をするなと顔をしかめたが、了承してくれた。

 敵の方が強い事もあり、どうなるかは分からんぞ。そう釘を刺してきたが、逆に言うならそれなりの努力はしてくれるみたいだ。


 俺達はルフィア、アリス、リオン、ケイトの5人とイザベラの部下が1人。

 アームストロングが本隊を率いて正面に向かうのを待って、岩陰から村への接近を試みる。

 イザベラの部下は偵察兵としてのスキルが高いので、先導してもらうことになった。


「この地点ですか?」

「うむ、恐らく奴らには見つかってないルートがあるのじゃ」

「そんな所に道があるのか?」

「王族たるもの独自の脱出ルートを確保しておくものじゃ」

 久々のドヤ顔である。

 多分、趣味で作っただけだろうが、今は助かる。このルートからなら、裁縫の作業場へと侵入できるはずだ。



「いくぞ、野郎共。出陣だー!」

「「おおーっ!!」」

 アームストロングの本隊が進軍をはじめて、作戦が開始された。

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