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シナリ達とバルトニアへ

 プチ宴の翌日……といって、リアル時間では1時間ほど経っただけだが……シナリを伴って村を出ることになった。

 前もって準備はしてあったのだろう、色々と詰め込んでありそうなリュックを背負い、普段とは少し違う丈夫そうな衣服を着ている。


「おっとう、おっかぁ、行ってくるでね」

「ああ、アトリーさんのお役に立つようにな」

「身体には気をつけて。いつでも帰ってきていいからね。弟か妹もできるんだし」

「はい、行ってきます!」



 転送システムのおかげで一度行った街に移動するのは楽になった。これはNPCにも適用されるらしいので、メーべに戻るのも多少は楽だ。

 ただバルトニアの村もメーべも規定の転送ポイントではない。ホームに設定できるのは一箇所なので、どちらかを選ぶしか無いだろう。


「ひとまずブリーエに向かうか。ケイトもまだ行ってないよな?」

「はい、行ったことは無いですよ」

「転送ポイントに登録するために、一度行っておけば買い出しとか楽になるから」

「ありがとうございます!」

 そういいながらムギュっと抱きついてきた。ルフィアよりも大きな膨らみが押し付けられて少し照れる。


「ブリーエって隣国の首都でねぇか。大丈夫だか?」

「ああ、ブリーエはオタリアの属国になってるから問題ないよ」

「ほぇ〜いつの間にそったら事に」

 メーべのような小さい村には、そうした情報は流れてこないのだろうか。街に出向くドーソンさんは知ってるんだろうけど、教える必要がないと思ったのかな。




 国境にある砦を抜けて、ブリーエ国内へと入って行く。

 ブリーエは大陸の南西部にある国で、その城は海岸のギリギリに立っている。

 背後は崖に守られ、正面の城壁は高い。堅牢な城と言えるだろう。

 城の手前にある城下町は、かなりの活気に満ちていた。どうやらオタリアからの商人が販路拡大の為に押しかけているそうな。

 めぼしい産業は無いと言っていたが、商人達にすれば売る物はいくらでもあるという事なんだろう。


 転送の登録だけなら城門の所で終わるのだが、折角なので買い出しも行う事にした。

 気前良く服を作ったりしたので、素材の幾つかが足りなくなっている。

 魔導技師に必要な付与染料も心もとなくなっていた。


 それぞれに買い物をして集まろうとなったはずが、シナリは都会が初めてで不安なので俺に付いてきた。

 それを見たケイトも初めての街なんで案内してくださいと。

 そうなるとリオンも特に用事がないからとついてきて、結局4人で街を回る事になっていた。



「おお、アポリーさん……でしたかのぅ?」

「俺はアトリーだけど……あ、農家のおじいさん。お久しぶりです」

 呼び止められて振り返ると、そこに居たのはブリーエの農村でお世話になった農家のおじいさんだった。


「お元気そうで何よりです」

「ああ、国王の改心とオタリアの援助で、一気に活気付いておりますのじゃ」

 シェリル王とイザベラさんの治世は、上手く回っているようだ。

「しかし、隣のべっぴんさん達はえらく雰囲気が変わりましたな?」

「あいつらとは別人だからな」

「ほほぅ、さすが救国の英雄様は色ごとにも通じておりますのぅ」

「ひ、人聞きの悪いことを言うなよ」


「アトリーさ、どういう事だか?」

 シナリが詰めよりフェイスで迫ってくる。

「1人はお前も知ってるルフィアだよ」

「姫様は人形でねぇでか」

「色々あって、人と同じくらいに育ってるんだよ」

「姫様がおっきくなっただか」

 目を丸くして驚いている。


「それで、もう一人というのは?」

 ケイトも暗い目つきで聞いてくる。

「ホムンクルスだよ」

「ホムンクルス!? それって錬金術で作れるやつですか!」

「いや、俺達は古代王国の遺跡に居たのを見つけただけで製法があるとかじゃないよ」

「そうか、ホムンクルスがいるんだ」

 錬金術師として、やはり人工生命体であるホムンクルスの存在は、一つの目標点なのだろう。

 ケイトは色々と思索を巡らせる表情になっていた。



 爺さんの言葉に一瞬、不穏な空気を感じたが、シナリはルフィアに、ケイトはアリスに興味を持ったらしく、やり過ごす事ができた。

「問題の先送りに過ぎないんじゃないの?」

「も、もも、問題って何だよ」

「女の子の恨みは怖いよ〜」

 過去を思い浮かべるように苦笑を浮かべるリオン。彼も何かあったらしい。




 ブリーエを出ると後は北上して行くだけだ。国境付近で『黄昏の傭兵団』が築いている砦へと立ち寄る。


「おう、コーシ。土木1号、助かったぜ」

 俺を見つけたアームストロングが近寄ってきた。

「外観は完成したから、引き取ってくれ。内装は色々と揉めてて、まだ客を呼べるような状況じゃねえけどな」

「また完成した頃に訪ねますよ」

「おう、ちゃんと闘技場もあるからいつでも来い」

「あら、2人で楽しそうなお話してるじゃない。当然、私も混ぜてくれるのよね」

「だったら僕も参戦しないとね」

「タッグマッチも面白そうだな」

 トミコとリオンも嬉しそうに話している。これだから戦闘狂どもは……俺もアームストロングにはリベンジしたい訳だが、まだ自分に納得していない。

 やるならば、お互いに納得できるキャラを作り込んでからだな。



「あらアトリー様、ごきげんよう」

 振り返るとそこにいたのは、エリザベス。艷やかな黒髪をツインテールで両サイドにくくり、服装はいわゆるメイド服。

 スカートの丈は短いので、なんちゃって感はあるが、似合って愛らしい。


「エリザベス、久しぶりだな。身体は大丈夫か?」

「ええお陰様で。よろしければ、手料理など食べていってくださいませ」

「それはありがたいけど、村に急いでいるからまた今度な」

「わかりました。またのご来訪の際には色々とご奉仕させて頂きます」

 スカートを摘みながら、頭を下げてくる。家事型ホムンクルスとはいうが、メイドさんとして調整されているようだな。

 体調の方も異変は無いようなので、トミコ共々ミュータント化の進行はなさそうだ。

 傭兵団の面々がエリザベスを庇うように立ち、ケイトが疑いの眼差しを向けてくるが、下手に反応する方が疑念が深まるだろう。

 そそくさと馬車へと戻って、土木1号の積み込みに従事した。




 新生バルトニア王国にたどり着いた頃には、夕暮れ時になっていた。

 見張り台にいるコルボが俺達に手を振って迎えてくれる。

 門が内側から開かれ、馬車のまま村の中へと進む。このところはミュータント化した獣も出なくなっているので、心配するような事はなかったようだ。


「どこにいっておった!」

 腰に手を当てふんぞり返っているのはルフィア。金髪のポニーテールを風に揺らしながら、新調したアイドル風制服に身を包んでいる。

「おかえりなさいませ、兄様」

 隣のアリスは身体にフィットしたワンピース。動きやすいように半袖で、スカート部分にはスリットが入っている。緑の髪を三つ編みにして、頭の横でまとめている。その髪型もあいまって、チャイナドレスのイメージが強い。



「おお、本当に姫様が大きくなってるだ」

 人形の時の姿とは大きさはかなり違っているが、全体像としては変化がない。シナリは一発でわかったようだ。


「という事は、こっちがホムンクルス?」

 ケイトはしげしげとアリスを眺めている。



「ふむ、そなたはシナリか。大きゅうなったのぅ」

「姫様こそ、おっきくなっただな」

「兄様、こちらの方は?」

「そっちの黒いのがシナリで、こっちがケイト。回復職ヒーラーで、錬金術師を目指している」

「アトリーさん、この子は?」

「アリスだ。それと言い忘れたが、傭兵団にいたトミコやエリザベスもホムンクルスだ」

「な、なぜそんな大事なことを忘れるんです!?」

「すまん」

 教えたら出発が遅れそうだったからな、あえて黙っていた。傭兵団とは交流も深いし、会おうとすればいつでも会えるだろう。


「という事で、新しい戦力を確保してきました」

「何がという事なのじゃ。事前に説明してゆかぬか」

「いやぁ、新しい服をもらってはしゃいでる姫に、水を刺すのも無粋かと思いまして」

「は、はしゃいでなどおらぬわっ」

「そういえば、姫様は錬金術に詳しかったりは?」

 魔法王国ではアリスのようなホムンクルスを作成していた。錬金術の技術も進んでいたのだろう。


「わらわは詳しくは知らぬな。錬金術は所詮、魔力の無い者の技術じゃから」

「そうなのか」

「自らの魔力を操作するのが魔法。物や他人の魔力を導くのが魔導技師。錬金術は魔法に頼れぬ者達の技術なのじゃ」

 この世界ではそういう分類になるらしい。


「もちろん、王国には錬金術の技術も集まっておったが、才能恵まれたわらわでも、そんなには欲張れぬからのう」

「なるほどね」

「アトリーさん、この村に私の工房を作ってもいいですか?」

 アリスの腕を抱えるようにしながらケイトがはしゃいでいる。


「むう、また新たな女子おなごを連れてきたのじゃな」

「彼女は旧知の者で、こっちに来たばかりで身寄りがなかったもので」

「ふん、今更そなたに好色の気があるとも思っておらぬ。好きにさせるがよい」

 ルフィアの信頼は勝ち得ていたようだ。ケイトの入植も受け入れられた。


「アトリーさ、調理場はどこだべか。村から持ってきた魚で料理をこさえるだで」

「ああ食堂はこっちだよ」

「む、シナリの料理とな。あの時は食えなんだが、今ならたんと食うてやれるぞよ」

 俺達は連れ立って食堂へと向かう。夕食の場でシナリ達を子供達に紹介して、皆でシナリの料理を頂いた。

 胃袋をがっちりと掴んだシナリは、すぐに人気者になっている。ケイトは少し出遅れた感はあるものの、すぐに馴染んでいけるだろう。

 子供達の村だったここは、基本的に寂しがりな子供がほとんどだ。仲良くやっていけると信じている。


 こうしてバルトニア王国は次の段階へと進む事になった。

誤字修正

新しい全力→新しい戦力(20170103)

少し出れる→少し照れる(20170107)

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― 新着の感想 ―
[一言] ケイトは気付いていない ゲームでどんなに頑張っても記憶に残らないので、現実で進展は望めないことを(笑)
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