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地道な金策方法

 そういえばと思い出し、ポタミナを取り出した。情報交換掲示板のアプリがあったはずだ。

 現実に情報を持ち出せないから、ゲーム内でこうした情報交換の場所を提供しているのだろう。

 早速フレンド募集の掲示板やら攻略情報掲示板などが上がっている。

 金策情報が書かれてそうな掲示板を探す。


「うう〜ん、酒場の掲示板クエストの情報があるくらいか」

 どんな依頼があって、それでいくら稼げるかの情報が載っているが、モンスター討伐で100Gのクエストが今のところ最高らしい。

 一応、毛皮が革細工ギルドで売れたことを書いておいた。


「他には……クエスト系掲示板か生産系掲示板。育成系の攻略も一応あるな」

 このゲームは、スキルを覚えて、経験を積んでいくとレベルが上がるシステムだ。

 スキルは最大10個まで同時に装備できて、それにより能力の値も変化する。

 ディレクターが組み合わせ次第で予想を超えるかもと言っていた事で、この手の掲示板スレッドも盛り上がっているようだ。


「俺もうかうかしてられないな」

 このゲームの仕様を知ってから、目指すべきキャラを考えていた。

 長距離を一撃で通すスナイパーとか、完全ステルスのアサシンとか、極限まで属性を偏らせた魔術師とか。

 でも強さよりも誰も狙わない所を目指したかったので、思いつきやすいのから除外していった結果、一つの形は見えている。

「資金が欲しいところだけど、キャラの育成も平行させるか」

 俺は目を付けていた生産系ギルドへと足を向けた。



「いらっしゃいませ、製作の注文ですか、入門ですか?」

 訪れたのは裁縫ギルドだ。冒険者にとっても、裁縫は意外と大事だ。魔術師系の防具は裁縫で作られる物が多いし、戦士でも鎧の下に着る服は裁縫の分野。

 単純に見た目を気にするプレイヤーは、冒険用と街着を切り替える人もいるだろう。


「入門させて欲しい」

「わかりました、奥の工房へどうぞ」

 受付の女性に案内されて、中へと入ると作業している人が5人ほどいた。

 その中の一人、奥でデザイン画を眺めている女性の元へ。


「リリアさん、入門希望者です」

「ん?」

 鉛筆を咥えたまま首を捻っていた女性が顔を上げる。茶髪を編み込んでアップにしている穏やかな雰囲気の女性だ。40歳くらいか。

「おや、冒険者かい」

 少し珍しそうに俺を見つめる。

「はい」

「経験は?」

「全くないです」

 中学校くらいまで家庭科の時間にやった程度で、経験とは言えないだろう。一人暮らしをはじめても、ほつれたりしたら新しいのを買う暮らしだった。


「じゃあ、スザンヌのところで洗濯からね」

「洗濯?」

 疑問に思ったが、リリアは1人を指差したあと、デザイン画の方に意識を戻してしまって答えてくれない。

 仕方なく指さされた人の所へ行ってみる。


 洗濯桶を前にジャブジャブと手を動かしている女性に話しかける。

「あの、リリアさんからこちらに来るように言われたんですが」

「はい?」

 黒に近い茶髪を三つ編みにした女の子だった。まだ10代だろう。

「あ、入門の方ですね。助かります」

 にっこりと微笑まれた。


 スザンヌを手伝っての洗濯は、思った以上の肉体労働だった。水を吸った布を絞って運び、裏庭の物干し竿に干していく。

「色々な布を触って、様々な衣服を間近で見るのが大事なんですよ」

 スザンヌが作業の意味を教えてくれる。布の種類とか、服の名前とか、楽しそうに教えてくれる。

 洗濯をしながら一時間、たっぷりとこき使われた。


 作業を終えてポタミナを確認すると、裁縫スキルを取得出来ていた。製作とは関係ない作業でも習得できるのは不思議だ。

 ポタミナからスキルをタップすると、アクションコマンドとして『洗濯』が選べるようになっていた。


 リリアさんの所に戻ると、次はターニャという人に回される。

 そこでは裁断の作業を手伝う。

 布に型紙を当てて印をつけると、パーツごとに切り出していく作業。

 続いてレンカという人のところで縫製。裁断で切り出されたパーツを縫い合わせる作業だ。

 それが終わると、クルルという人の所で刺繍。縫製とはまた違った針を使って、下書きに沿って模様を縫っていく作業。

 最後にリリアからデザイン画を元に型紙をおこす作業を教わる。


「裁縫の基礎はこんなところね。後はそれぞれのスキルを鍛えていくことね」

「はい、ありがとうございました」

 たっぷりと労働をこなして疲れた。生産系スキルも楽じゃないな。

 後はそれぞれの作業を繰り返して鍛えていく事になる。

 受付に行くと、それぞれの作業に応じた依頼があり、それをこなすと報酬がもらえる。

 初級のものは報酬が安いがその場でできて、中級になると素材を集めるところから始まる分、報酬が高くなっている。

 スキル習得に時間を使ってしまった事もあり、初級の依頼をこなすうちに『覚醒の時間』を迎えてしまった。

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