表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/117

新生バルトニア王国

 ルフィアは子供達を集めて、新生バルトニア王国の建国を宣言。子供達は全部で12人、そこに俺やリオン、アリスを含めて15人の国民の誕生だ。

 子供達はよくわからないままに「姫様、バンザイ」と楽しんでいる。

 実際、今までは食べられなかったミュータントの肉を、美味しくて安全にしてくれたルフィアの信奉は厚い。

 食料事情も安定し、更には魔導炉が止まった事で、ミュータントに襲われるのも減るだろう。

 とはいえ放っても置けないので、この村を拠点に周辺の探索を行う事にした。



「近くにあったミュータントの木は排除してある」

 拘束から解放され、ルフィアの焼肉を堪能したリオンは、なんだかんだで機嫌を直していた。

「ミュータント化が進み過ぎた木は、魔力供給炉を閉じたことで枯れてゆくじゃろう」

 しかし、ルフィアの見立てでは魔力供給を断たれ、飢え始めた獣は凶暴になる可能性があるという。


「願ったりだがな」

 リオンはその説明にニヤリと笑った。打ち解けてきたなとは思うのだが、戦闘狂な部分はあまり変わっていない。

 垣間見えたリオンのリアルは、ある種のアスリート。勝負事に熱くなるタイプなのだろう。




 そんなリオンの希望を聞いたように、大柄なミュータントが現れた。

 あの魔族を思い出すような熊のミュータントだ。灰色がかった毛並みに、圧倒的な肉厚感。

 はふっはふっと吐く息は荒く、既に興奮状態だった。


「やらせてもらう」

 いつものように先陣を切るのはリオン。大振りのウォーハンマーは、熊の突進によってミートポイントをずらされ、ハンマー部分が毛皮を滑る。

 そのまま熊は体当たり、リオンはかろうじて身を躱して事なきを得たが、かなりきわどい。

「あ?」

 いや、避けたはずの体に、三本の線が走っていた。


 熊を見ると、肩の辺りから爪のような鋭い突起が三本生えている。ミュータント化した獣は、その姿を容易に変形して襲ってきた。

「リオン!?」

 一撃で殺されるまではいかなかったようだが、うずくまったまま動かない。

 このゲームは死にゲーを繰り返さない為にも、それなりに痛覚を残している。

 アレだけの攻撃を受ければ、かなりの痛みを伴っているはずだ。


「ルフィア、頼む」

「姫を付けい、姫を。まあ仕方ないのう」

 ルフィアが走り出すのを確認して、俺は熊の気を引くためにシャムシールで斬りつけた。

 マサムネに鍛え直してもらった装備だが、灰色熊の毛皮には刃が立たない。表面の毛を少し刈り取っただけで、肌にも届かなかった。


 それでも注意を引くことには成功している。相手の視界に入るように、やや大げさに剣を振り回し挑発した。

 熊は口を大きく開けて立ち上がり、威嚇してくる。やっぱりデカイ。

 しかも振り上げられた両手に気を取られると、腹からアバラの様な突起が伸びて、突き刺してきた。


「ととっと」

 マンゴーシュで体に当たりそうなのを打払いつつ、距離を確保。しかし、いつもの待ちの体勢だと、ルフィアが介抱しているリオンに向きかねない。

「損な役回りだな……でも、それがいいっ」

 半歩踏み込み、腹の辺りに剣を振ると、再びアバラが飛び出し向かってくる。

 それをサイドステップで躱して、脇腹に一撃。すると腕を振るって、殴りつけてきた。

 その爪をマンゴーシュで受け流すと、シュルシュルと爪が伸びて空を裂く。避けるか受けるかしてたらやばかった。


 ミュータントの戦いは単純だが容赦がない。持てる力を全て出し切るように惜しまない。

 左右の腕と、そこから伸びる爪、腹からアバラ、肩の突起。全てを駆使して追い詰めてくる。

「ヤバい、ヤバいよっ」

 人が相手なら2刀で戦う分、こちらの方が幅があるが、獣のミュータントを相手にすると手が足りない。


「兄様、基本を忠実に。相手も目は2つです」

 アリスのアドバイス、目は2つ。結局は、見えてる範囲しか的確に攻撃できないって事かっ。

 振るわれる腕を掻い潜り、脇腹に当てつつ、背中側に回る。肩の突起が伸びて追随してくるが、やはり精度に欠けていた。

 巨体の割に、目は小さく正面についている。自らの体が邪魔をして、死角が多くできていた。


「ソロソロ逆転の時間かなっ」

 振るわれる腕の影、脇腹、背中。足を使って死角を渡り、不自然な体勢の攻撃を誘う。

 二足での行動は、アバラも攻撃に使うなど、手数は増えるがやはり熊の体には不自然で、方向転換が鈍い。

 太いが短い足もあまり動いていなかった。

 アバラの攻撃を打ち逸しつつ、更に一歩踏み込んで、足を狙う。


「硬え」

 打ち込んだシャムシールはほとんど食い込まない。しかし、斬撃刀の真価はここからだ。引く時に斬れる。

「ボーンクラッシュ!」

 ズドンという重い音と、衝撃が熊の向こうから伝わってきた。

 それと共に、不規則にアバラが伸びてきて俺を刺してくる。

「やばっ、やばばっ」

 折角食い込ませたシャムシールを慌てて引き戻し、マンゴーシュと合わせてアバラの雨を切り躱す。

 そして何とか熊の正面から抜け出すのと、熊が倒れるのはほとんど同時だった。


 熊は伸びたアバラが地面に突き刺さり、思ったように動けない。そこに跳躍したリオンがハンマーを叩きつける。

 肩口の突起は背中までは届かず、リオンはそのまま熊に乗ってハンマーを振るい続けた。

「ひどいな、アレは」

「まあ、それだけ痛かったということじゃろ」

「というか、まだ痛そうだよな」

 リオンは優位な体勢に、引きつった笑みを浮かべながらも、汗をダラダラ流していた。

 程なく体力を削りきられた熊はポリゴンとなって消え、肩で息をするリオンは再びうずくまった。


「無理しなきゃいいのに」

 とはいえ、俺だけだとかなりの時間を要したかも知れない。

「リオンもそろそろ先陣を俺に任せてくれないか?」

「アンタが遅すぎるんだ」

 防御力という意味では、服の下に金属の鎧を着ているリオンの方が堅い。筋力が高い分、重い防具でも動きを阻害されないのだ。

 一方の俺は、動きやすさを優先して部分的に革鎧で補強している程度。

 どちらが敵を引きつける盾役にふさわしいかと言うと、リオンなのだろうが、猪突猛進なリオンはディフェンスをおざなりにしがちだ。

 俺は左手に防御用の短剣マンゴーシュを装備した、カウンター型。相手から攻撃を受けた方が動きやすい。

 ダメージは高いリオンから、敵を引き剥がすのは中々に厄介だったりもする。


 今回はたまたま最初の一撃が空振りだったので、すぐにターゲットを奪うことが出来たが、クリーンヒットしていたら、助けられたかは微妙だ。


「やっぱり、回復役ヒーラーはいるか」

 バルインヌ地方は未開の地。出て来る敵も、ミュータントなど特殊で攻撃を読みにくい。

 不意に大ダメージを受ける危険は高かった。

 俺とリオンは戦士、ルフィアは魔術師。アリスも分類としては戦士だろう。

 アンバランスなパーティでこの先やっていくのは無謀と言えた。



「掲示板でパーティメンバーを募集するか」

 まだ動けそうにないリオンに肩を貸して、村まで戻ると新たなメンバーの募集をかけてみることにした。


『バルインヌ地方の探索を目的とするパーティで、ヒーラー募集』


 実のところ、ヒーラーという職業は、昔からオンラインゲームでは不人気職でなり手が少ない。

 やはり敵と戦ったり、魔法を使ったりという派手さがヒーラーには無く、作業が地味なのだ。

 その分、ゲーム内で探すのは難しい。前回の野盗討伐時に募集した際もヒーラーは来なかった。


「果たして来てくれるかね」

 そう思いながら、掲示板の今の流れを追ってみる。

 プレイヤー達で作る『軍団』が活気を帯びているようだ。ざっと見た所で、百人を越える軍団が5つほどできている。

 パーティの編成から、武器の調達まで軍団内でこなせるのは魅力だろう。

 その分、しがらみもあったりするので、今のところ積極的に参加する気はないのだが。


「ん?」

 掲示板の中に、ララチッパジャーナルというのが出来ていた。どうやら1人のプレイヤーが、冒険紀行を記していってるみたいだ。

 そして目に付いた記事。


『奇妙! ぬいぐるみを崇める村』


 というのがあった。詳しく読んでみることにする。


 基本的には漁村なのだが、夕方になると男達が広場に出てきて軍事訓練を行う。

 以前、野盗に襲われて以来、自衛の為の訓練を行っているとのこと。

 しかし、奇妙なのは訓練を行う際に、広場の舞台に一体のぬいぐるみが飾られる。ウサギと思われるそのぬいぐるみに、街の男達は深々と礼をしてから、鍛錬を始めるのだ。

 どう見てもただのぬいぐるみ。

 村の奇妙な風習に、筆者は世界の広さを感じるのであった。



 うう〜む、奇妙な事もあるもんだ。シナリ、元気にしてるかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ご神体になりそう(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ