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大臣の切り札

「ふ、ふははっ、突然現れたから焦ったが、もはやお前は用済みだぁ!」

 騎士の背後、安全圏へと離脱した大臣の声が響く。


 一方、アリスとリオンは騎士達に包囲されていた。といってすぐに攻めらている訳ではなく、遠巻きに囲まれている状況だ。

 ただアリスの顔色は良くない。刺青によって改善はされているものの、ミュータント化の侵食は残っている。

 俺は囲んでいる騎士の一角に斬り込むと、アリスの下へと駆け寄った。



「大丈夫か、アリス」

「すいません、兄様。まだあまり良くなってなかったみたいです」

「無理をさせたのはこっちだ。しばらく休んでいるがいい」

 リオンと2人でアリスを庇うように立つ。


「こっからどうするんだ?」

「本当なら大臣でも人質にしたいところだったが、うまく逃げられたな。相手の手応えは?」

「戦場にいた奴等より弱いな」

 街の警備に残されたのは、大臣と繋がりのある騎士達なのだろう。実力としてはそんなに大したことはないようだ。

 装備もそれほど重装甲ではないので、シャムシールで斬りつける隙間も多い。



「地道に片付けていくか」

「僕1人でもやれる」

 リオンがいつもの強気な発言をした時、地面に響くような音が聞こえてきた。

 ズドン、ズシンという重たいものを打ち付けるような音。


「はっはっはっ、暴走するような不完全品とは違う、本当の兵器だ」

 大臣らしき男がアリスを馬鹿にするようなセリフを吐いて、イラッとさせられる。

 ただ足に響く音は徐々に近づいてきていた。大臣や周囲の騎士はその音の方へと走っていく。

 包囲を解かれたことで、脱出の機会を得ることができた。

 

「このまま逃げるか」

「いや、それじゃダメなんだろ」

 日和見な意見はリオンに却下される。こいつは強そうなのと戦えたら満足なんだろう。

「アリス、立てるか?」

「はい、歩く程度は問題ありません」

 逆に言うとかなり辛いということだな。早く休ませてやりたい。

 戦闘を行うために体内の魔力が活性化すると、それがミュータント化した組織にも流れ込んで暴れるらしい。

 魔導技師のレベルが高ければ暴れる魔力を鎮めることも可能なのだろうが、まだその域には達していない。

 ブリーエの今後のためには、あの大臣達は捕縛しないといけないので、アリスにはまだ無理をさせる事になってしまう。

 少しでも楽になるよう、移動中は背負うことにした。



 俺達が少し遅れて振動の原点を目指すと、それが見えてきた。

 広場から王城へと向かう大通り。左右に大き目の建物が立ち並んでいる。

 その平屋の屋根を越えるくらいの長身、肉厚の四角い身体。手足は短く太く、動いているのが不思議なほどの塊。

 ぬりかべ?


「D-53……」

 アリスのつぶやき。

「アレはロボット?」

「バルトニアのゴーレムです。私達の世代では廃棄されていたはずの古い型」

 ルフィアなら詳しいのだろうが、今は別行動中だ。


「見ての通りの巨大で、移動は遅いです。ただ、上半身は別駆動になっているので、攻撃自体は油断しないようにしてください」

「ふん、ぶっ叩くだけだ」

 リオンがいち早く駆け出した。

 俺はアリスを下ろしながら聞く。



「弱点とかは?」

「機動性のなさと、攻撃の単調さ。臨機応変な対応は苦手ですが、その分堅いです」

 説明を聞いているうちに、先走ったリオンが初撃を叩き込む。

 長い柄をギリギリまで伸ばして、遠心力を付けての一撃。その先端が赤熱している事から、モーニングスターで多用していたヒートスタンプを使ったようだ。


 ガイーン!

 音の鈍い銅鑼ドラを鳴らしたようだった。空気の振動が肌で感じれるほどの響き。

 胸元へと振り下ろされた鎚は、ゴーレムに当たった所で止まっていた。


「鋳鉄で作られた体をミスリルで補強され、体内の魔力で微弱ながら防壁を持っています」

「なるほど“堅い”わけだな」

 ゴーレムは両手を広げると、上半身が腰の所でぐるっと一回転。短い腕が一段階延びて攻撃範囲が広がり、ウォーハンマーを引っ掛けた。ウォーハンマーを手放さなかったリオンの体は、家屋の壁に弾き飛ばされる。

 細かな土煙をあげながら、リオンの姿は壁の向こうへ消えていった。



「さて、俺の番かな……」

 正直なところ、取っ掛かりがつかめない。

「兄様のいつもの戦いをすれば大丈夫です」

 アリスの俺への信頼は、過大評価だといつも思う。

 相手は鉄の拳に、鉄の体。マンゴーシュで受け流すのも、シャムシールで斬りつけるのも無理だと思うんだが。


 相手の攻撃は、止めるのでも、避けるのでも無く、受け流す。ゴーレムの腕は伸びるようなので、

そこにも注意だな。

 まずは相手の様子を見るところからか。

 俺は見上げる程の巨体の前へと歩み出た。



「ふぉっ!?」

 俺の姿を正面に捉えたゴーレムは、左右の腕を交互に伸ばすようにピストンパンチを繰り出してきた。

 腰の辺りも稼働させなが、思っていた以上の連続攻撃。腕が直線的にしか動かないのが救いだが、それにしても早い。

 マンゴーシュを拳の脇に当てて、相手よりも自分の体の軸をずらす。

 すぐさま次の攻撃が来るので、シャムシールの腹を当てて体の向きを変える。


 俺の立つ足場が、舗装されるように拳で整地されていった。なるほど、速くはあるが単調な攻撃だ。

 逸らすだけなら問題ない。

 ただこちらから攻撃となると、有効打は難しそうだ。

 足はほぼ動いていないので、振れば当たるだろう。しかし相手は鉄の体に魔法で防御までされている。

 黄銅になったとは言え、鉄よりは弱い。引っ掻くほども傷つかないだろう。



(何をやっとるのじゃ)

 ふと脳裏にルフィアの声がよぎった。何の前触れだ?

 しかし続く言葉は聞こえてこない。幻聴なのか。周囲には、ゴーレムが殴り固める打撃音が響き、アリスの声すら聞こえない。

 マンゴーシュでなぞるように、シャムシールで叩くように。ゴーレムの拳を受け流し続ける。


(もう見えておるじゃろう?)

 またも声がする。肝心な事を伝えてこない不親切さは、姫様そのものだ。

 何が見えるって……。

 ん?

 ゴーレムの腕を伝って流れる水のような感触。これは魔力の流れか?

 試しに繰り出される左腕の魔力の流れを、シャムシールで断ち切る。

 そのイメージで魔力防壁の隙間をぬって、肘へと刀身を走らせた。


 バシュン。

 圧縮した空気が抜けるような音がして、ゴーレムの左腕が遅くなっていき止まった。

 続けて左のマンゴーシュでゴーレムの右腕の魔力も切る。

 ぷすん、ぷすんと気の抜ける音と共に腕が沈黙してしまった。



「き、貴様、何をした!?」

 さっきまでふんぞり返っていた大臣が叫ぶ。

 しかし、ゴーレムはそれでは止まらないようだ。

 上半身が回転し始め、腰の辺りから前後に揺れ始める。周囲の家屋を巻き込み、破片を飛ばし始めた。


「なんて迷惑なっ」

「きゃっ」

「アリス!?」

 無差別に飛ぶ破片は、アリスにも降り掛かったようだ。俺はアリスをガードできる位置まで下がる。


「んなろっ」

 崩れた家屋の中から小柄な影が飛び上がり、再びウォーハンマーを振りかぶる。

「サークルスタンプッ」

 縦に一回転して体重を乗せた一撃が、激しく回転するゴーレムに叩き込まれる。

 自身の回転力とリオンの攻撃で過負荷を越えたのだろう、防御シールドがビシビシと発光した後で消失。


「うららっうらっ」

 着地したリオンは右に左にハンマーを振り回し、回転を続けるゴーレムを打ち据えていく。

 細かい破片が飛び散って、さっきより危ない。

 俺はアリスを抱えて更に距離を取って見守ると、徐々にゴーレムの回転が遅くなっていき、最後には稼働を停止した。


「トドメだ、ヒートスタンプ!」

 再び跳躍とともに繰り出された赤熱の一撃が、ゴーレムをポリゴン片へと打ち砕いた。



「こ、古代の超兵器が」

 ゴーレムがいた辺りを呆然と見詰める大臣と騎士達。

「古代の期限超過兵器ね」

 逃げられる前に間合いを詰めて、大臣へとシャムシールを突きつけた。

そろそろ主人公のスキル構成を

アトリー・コーシュ

〈戦士:基礎〉〈戦士:片手剣〉〈戦士:斬撃刀〉〈戦士:護剣〉〈二刀流〉

〈裁縫:基礎〉〈裁縫:刺繍〉〈裁縫:レース〉〈裁縫:縫製〉〈魔導技師〉


スキルは最大10個まで。

戦闘中やダンジョン内など以外ではストック分と付け替え可能。

スキルに類する行動をすれば、経験値が入りレベルが上がっていきます。

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