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即席のパーティ

 マサムネ御用達の酒場で待ち合わせた。時間通りに現れたのは長身の男、俺が見上げるくらいだから2m近くあるだろう。

 手足が長くしなやかで、革でできた鎧をまとっている。

 その陰に隠れるようにして現れたのは、小柄な少年。こっちは俺の胸までしかない。

 伸ばしたままのボサボサの髪に、口元を隠すマフラーで顔がほとんど見えていない。布で出来た厚手の服を着ていた。


「はじめまして、Lionライオンさん」

 俺は長身の男に手を伸ばす。

「リオンだ」

 ぼそりと返したのは小柄な少年だった。

「ご、ごめん」

「俺はKケー・チャップ、ヨロシクな」

「あ、ああ、俺が剣士のアトリーで、こっちが刀鍛冶のマサムネ」

 最初の人違いから動揺しつつ、自己紹介を済ませる。

 長身の方が盗賊で、小柄な方がパワーファイターらしい。


 ひとます酒場で簡単なミーティングを行う。

「メッセージで伝えたように相手は元脱走兵の野盗。ここから1日ほどの山の中腹に拠点がある」

 先日見てきた様子を混じえて、方針を決めていく。


「ま、いいんじゃないか」

 チャップが軽い様子で答えると、リオンの方もコクリと頷いた。二人共、こちらの作戦に従ってくれるようだ。

「報酬は回収できた上納金の一部、最低でも1000Gの頭割りって事で」

「あいよっ」

 コクリ。

「後はマサムネの心意気次第ってことで」

「ま、俺としても固定客がついてくれれば嬉しいから、依頼があれば割引して請け負うよ」

「助かるね」

 コクリ。

 どうやらリオンは無口らしい。人見知りって事はないよな?



 俺達は拠点へ向けて出立する。

 街道沿いに歩いて、途中から山道へと上がっていく。

 途中、野犬を相手に戦闘を試し、連携を確認。そこでリオンの実力を知る。


「キャオンッ」

 土塊つちくれと一緒に打ち上げられた野犬は、空中でポリゴン片となって砕け散る。

 彼の得物は自身の身長を超える程の柄の付いた鉄球。モーニングスターと呼ばれるものだ。

 それを戦闘開始から振り始め、遠心力と鉄球の重さでぶち込む。

 一撃で野犬を葬り去るのだ。


 俺は最低でも三発、平均だと5回の攻撃が必要なのだが、ことごとくを一撃で倒していく。

 しかも、鉄球を回し続ける事で、次の一撃までのインターバルも短い。

 長期戦には向かないとのことだが、筋力極振りの一撃に長引く戦いなど、そうはないだろう。


 一方のチャップは、長い手足を活かしたやや変則的な短刀使い。ぬるりと相手の攻撃を避けながら、カウンターでダメージを与えていく。

 リオンほどの派手さは無いが、堅実な働きをしてくれた。



「いるな」

 長身で索敵系スキルも持っているチャップの視界は広い。俺よりもかなり早く見張りの姿を見つけていた。

 俺達は岩陰に隠れつつ、方針を確認。襲撃は昼間、野盗達が連れ立って拠点を離れる頃だ。

 見張りと拠点を離れた一部隊を倒し、数を減らした上で、洞窟前の雑魚をできるだけ始末。隊長格に備えるのだ。


「俺の投げナイフじゃ、一撃は無理だからな」

「ああ、不意をついてくれれば、後はこっちが距離を詰めて倒しに行く」

 マサムネから大量のナイフをもらってチャップはやる気を見せてくれている。

 リオンは道中もほぼ無口で、こちらの会話には相槌を打つくらいだった。



 洞窟の前までチャップが偵察を行い、一定の部隊が散っていったら戻って、見張りにナイフを投擲。

 意識がチャップに向いた所を、俺とリオンで仕留める作戦だ。

 洞窟前には20人ほどの野盗が雑魚寝していて、昼頃になると見張りを務めていた奴が何人かを起こして交代。

 それに合わせて支度を始める一団がある。こいつらは村への集金や、街道への襲撃に向かう連中だろう。

 それらの様子をポタミナのメッセージでやり取りし、タイミングを計った。



『始める』

 チャップからの短いメッセージの後、見張りの1人が肩を抑えて振り返る。並んで喋っていた男も同じ方を向いて、腰の武器に手を当てている。

 その背後から、俺とリオンが駆け寄り間合いに捉える。


「ヒートスタンプ」

 ボソリと呟いたリオンの走りながらの一撃。赤熱した鉄球が、無防備な背中へと振り下ろされ、抵抗することなく地へと叩き伏せられる見張り。

「ファストアタック」

 釣られるように俺ももう一人に、アクションコマンドを発動。しかし、俺のパワーじゃ、一撃で仕留める事はできない。

 不意打ちボーナスで、姿勢が大きく崩れた所に、連撃を打ち込んでトドメを刺す。


『奴ら走り出した』

 チャップからのメッセージに慌てて近くの岩陰に隠れる。

 駆け寄ってきたのは5人の野盗。

「何の音だ」

「この辺だったよな」

「見ろ、見張りがいない。そして、何だこの亀裂」

 リオンの一撃は、見張りはおろか、地面にまで大きなダメージを与えていた。

 しかし、そうして意識が地面に向いてくれたお陰で、不意打ちのチャンスが訪れた。



 ズゴン!

 いつの間に登っていたのか、俺が隠れた岩の上からリオンが降ってきて、1人の野盗が潰される。

「な、何だお前は!?」

 突然の襲撃にうろたえる野盗達。そのうちの1人を俺も背後から切り伏せた。


「て、てめぇらっ」

 残った3人は、各々の得物を抜いて構える。片手剣2人と短刀1人。

「ヘヴィスイング」

 リオンのアクションコマンド。自分を中心に、ぐるりと鉄球を振り回し、ガードした相手をも大きくノックバックさせる。

 体勢が崩れた1人に俺は斬りかかった。それなりの一撃でひるませると、大技の後で硬直状態のリオンの守りにつく。

 斬りつけてくる野盗の攻撃をマンゴーシュでいなして、マサムネやチャップがフォローに入るまで凌ぐ。


「数発なら耐えられたのに」

「変なとこでダメージ食らうな。ヒーラーいないんだから」

 やや不満げに言うリオンに文句を言いつつ、相手の攻撃に備える。

 ガッと俺が斬りつけた1人の喉元にナイフが突き立ち、ポリゴン片へと変わった。チャップの投擲だろう。

 駆けつけたマサムネが1人を受け持ってくれて、俺も1人に相対する。


 硬直の解けたリオンがマサムネの敵を挟む形で武器を振り始め、俺の敵の背後にチャップが回り込む。

「ふんっ」

 スピードを上げたリオンのモーニングスターが野盗を吹き飛ばし、チャップの背中からの一撃が致命傷を与え、野盗の1部隊は全滅した。


「あまり無茶するなよ」

「十分にやれた」

「反省会はあとあと、不審に思われる前に拠点を攻めるよ」

 チャップに促され、洞窟前へと急いだ。

 洞窟の前には10人、半分は眠っている。見張りについていたメンバーだろう。

 後の半分は武器の手入れをしたり、喋っていたり。無警戒な様子だった。


「チャップは寝てるのを仕留めていってくれ。俺とリオンで気を引く」

「それは無茶じゃないのか?」

 さっきのセリフが引っかかっていたのか、リオンに突っ込まれる。

「隙の多いアクションコマンドは使わず、怪我をしないように注意すれば問題ない」

「倒した方が安全だよ」

 敵をコントロールするのを基本にする俺と、一撃で片付ける美学を持つリオンは、相性が悪いのかも知れない。

「とにかく、チャップの仕事を優先な」

 俺は話を打ち切って、襲撃のタイミングを計る。

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