8 コンピューターに宇宙人?
人類の秘密。
さってっと。
あれから一月たちました。あっという間だねぇ。勉強もマナーも順調です。なんか、勉強については俺と兄さん、両方とも物覚えがかなりいいって誉められてるよ。マナーの習得に関しても、俺もアイシアも吸収が早いって誉められた。
お陰さまで、わずか一月で神殿行きになりました。
今までだと、これらを学ぶにも一年かけてじっくりと行ってから、だったそうなんだけれど、俺たちの場合、間近に優秀な見本(俺の両親)と、切磋琢磨する相手(兄さんと妹)がいたために、かえって習得が早まったんだわな。
あ、言葉遣いについては、公式の場以外では普通でいいって言われてるんでこのまま。切り替えは得意だからね。兄さんとアイシアは普段から丁寧にしゃべってるけど。
さて。そうして到着した神殿。荘厳ですね。王城の半分くらいの大きさはあるね。
「お待ちしておりました、ゼオ様。こちらへどうぞ」
出てきたのは神官長。つまり、神殿でいっち番偉い人ー。
「……一番偉いのはお前だからな、ゼオ」
……そーでした。いずれは神殿のすべてが俺の下に入るのでした。一応、予定では成人後だけどね。あ、この国の成人は十八歳でっす。
そのまま神官長についていくと、とある荘厳な扉の前で立ち止まった。
「この先は、私どもも入ることは許されておりません。ゼオ様、お一人でお進みください」
「あの? わたしは何をすればよいのでしょうか?」
いや、ついてきただけで何も聞いてないし。
「……奥までいかれて、神のお声をお聴きください」
「はあ……」
よくわかんないけど、とりあえずいってみるか。
扉を開けようと触れると、それだけで勝手に開いていく。おー、自動ドアだー。
ドアを通り抜けると、すぐに後ろで閉じた音がした。俺はそれには構わずに、まっすぐに通路を進む。ーー何かが俺を呼んでいる声がしたから。
ーー待っていました。
人が入っていないにも関わらず、埃ひとつない通路を最奥まで進んだ。奥の小部屋には祭壇があって、そこに手を触れると、脳裏に声が響いてきた。
「……神様?」
ーーそう、呼ばれております。わたくしはこの島を維持するためのメインコンピューターです。
……はい? メインコンピューター? て、どゆこと?
それは説明をしてくれました。
かつて、この星には、生物は居りませんでした。わたくしを作成した主たちが、自身の新たなる住みかとして、この星を改造なさったのです。
主の生まれた星では、魔力に満ちておりましたそうですが、この星は違いました。そのため、まずは魔力を満ちさせることにして、生物がすみやすい環境をつくるためにわたくしたちを作成されました。
ですが、問題がひとつ出てきてしまったのです。もとの星とは違い、この星で生まれた子供たちには、魔力を溜め込む性質を持ってしまわれたのです。それゆえにわたくしと意思の疎通ができる人間はいなくなってしまいました。大まかな調整は自力でできますが、細かい調整は人の手が必要となります。そのために、わたくしは神と呼ばれるようになり、巫とよばれる、先祖帰りをした、わたくしの主を求めるようになったのです。
「つまり、俺が君と協力して、環境を整えるってこと?」
ーー簡単に申せば、そういうことです。
もっとも、今までの方は、そのようなことを申されたことすらございませんでしたが。
「ああ、神のお告げってことで、動いちゃってたんだね。まあ、あながち間違ってもいないし」
ーーあなたは理解されておられるようですね。
「ま、ね。この年で理解ってのも本来なら難しいだろうけどね。俺はかなり特殊な自覚はあるから」
ーーそのようですね。それでは、この島の調整について、お願い致します。
「りょーかい」
というわけで、神託という名の土地改造計画をメモって神殿の方にもどったとさ。
……いやー、この世界ってか、人間全員が宇宙人だったーとか、どこの物語かってーの。