57 最強魔戦士
……のんびりしようと思ってたんだけどなー。魔物が山ほど湧いてるわー。
いや、理屈はわかる。さっきまでここにはおっきな魔石もどきがあった。それは、魔力を溜め込んでいた。解放の術式を打ち込んだとはいえ、それが効果を発するまでには時間がかかる。その間、魔力はここに集中する。
……そりゃ、魔物も生まれまくりだわな。しかも、魔力濃度が高いせいで、竜ばっかじゃん。
はあ、しかたないからかたずけよっか。
俺は自分のまわりの重力を遮断、風を操って空中、竜たちのど真ん中に飛び込む。
あー、気がついた連中が俺をロックオンしてるね。
魔物ってのは、魔力を発するものを襲う修正あっからね。保有魔力ゼロ、つまり全部放出している俺は、魔物ホイホイでもあるわけだ。
まあ、面倒だし、さっさと片付けよっかな。
この辺りにいる竜、それぞれを魔法でロックオンする。
ついで、俺のまわりには黒い球形が浮かび上がった。あ、ちなみにこれ、小型のブラックホールで、さわるとさわった部分が消滅したりする。
つーわけで。ロックオンした部分にこいつを飛ばすと……。あっという間に殲滅終了、だったりする。
ついでに、ここの魔力濃度を下げるために、魔法による魔力の拡散なんてことをしてみたりする。
……うん。大丈夫そうだな。
全部片付けて、地上に降りると、復活していた人々が呆然としていた。
「……あなたは……?」
「ん? 俺はアルファの巫のゼオ。ここの勘違いバカな巫は自滅したから。わるいけど、この国が建て直されるまで、アルファの管轄になるから、覚悟しといてね」
「……」
んー。さすがにショックが大きいかな? くにの支柱が失われたわけだし。
んなことを考えてた俺の前に、年配の男性がよろよろと歩みよってきた。
「お伺いします。それでは、この国は、昔のように戻るのでしょうか……?」
「とうぜんそうなるね。この世界はそうすることで安定するように神々に調整されてるんだから。ここの巫が、自分勝手におかしなことをしたせいで、いま世界中の魔力が狂ってしまっていたんだし。国が元に戻らないと、へたすりゃ世界が滅びるからね」
「……」
うん。ここはそういう世界なんだよ。
「……本当か?」
「……魔力が高いからと、殺されることもなくなるのか?」
「……お金をたくさんとられたり、ごはん、食べれなくなったりはもうしないの……?」
……んなことやっとったんかい、あのバカは……!
「……大丈夫だ。魔力による身分差はできるが、それぞれの能力にあわせた仕事をすることで、国を栄えさせることができる。そうすれば、きっと、お互いを思いやることもできる。きっと、幸せになれるさ」
ーーわああああああ!!
歓声が響き渡った。それほど、この国は歪んでしまっていた。逆らうことも許されず、流されることしかできず……。
まあ、これからどうなるかは、この国の人たち次第ではあるけどね。……みんな、幸せになれるといいなー。
あーなんかアイシアやシェラにあいたくなったなー。
はやく、シェラ、こないかなー。




