6 巫って、なんのこっちゃ
「かんなぎってなんですか?」
まずはそれを聞かないとな。普通じゃないみたいだし。
「巫というのは、神に仕える者を指す言葉だ。神に仕えるのは神官たちだが、巫はその上位にあたる。いわば、王と同等の地位となる」
おおう。なんかとんでもないことになってる?
「その役目は、第一にその身に神を降ろすことだ。それについては、いずれ神官たちから話があるだろう。それ以外に役目もなく、自由に過ごすことが許される。まあ、貴族として必要な教養などは学んでもらうがな。
……巫となるには条件があってな。魔力を持つものはなれないのだ。魔力を持つということは、自身の産み出した魔力を内に溜め込むということ。それゆえに本人にとっては異物となる神を降ろすことはできん。魔力を持たずに生まれてくる子供は、数十年に一人しかおらんしな。そのために、ゼオ、お前には苦労をかけるだろう。すまない」
王様は項垂れ、王妃様は俺を抱き締めた。
「ごめんなさいね。それでも、神降ろしができる以上は、あなたにお願いするしかないの。王族として、国のためにあなたにお願いすることしかできないの」
えっと……。
「今はまだよくわからないんでそれはいいんですけど……」
「いいのか⁉」
今回は公爵が突っ込んだ。
「えっと、そういう説明って子供にするものでしょうか?」
あるていど勉強した後ってか、十歳くらいになんないと理解できないんじゃないかなー、と思ったり。妹ーアイシアはアルフォードお兄さんと遊び始めてたし。
「ああ、巫は早熟と決まっていてな。実際、お前も理解しているのだろう?」
「ええ、まあ」
理解できちゃってるけどね。魔力ゼロって必ずしも転生者ではないと思うけど、まあ、身体能力の成長ぶりを考えれば、精神的に成長が早くてもおかしくはないわな。
「……それで、俺たちはこれからどうするんですか?」
「アイシアはこのまま王族として育てるが、ゼオ、お前はまずは公爵家に入ってそちらで教養を学ぶことになる。それが終えれば、こんどは神殿について学んでもらう。まあ、それまで数日はゆっくりとするがいい。バルバロッサ、ゼオを任せるぞ」
「はい。ゼオ、これからは私がお前の父となる」
「はい、よろしくお願い致します」
どうやら王様にずいぶんと信頼されている人みたいだな。アイシアと離ればなれは寂しいが、まずは頑張るか。