54 人形と魔石
人はいても営みは感じられない町並みを一気に走り抜ける。
国中の魔力は、城の一点に向かって集まっているのを感じる。おそらくは、あの場所に例の巫がいるのだろう。
城に入るまで、妨害は全くなかった。妨害できるような存在もないからだろう。魔物は生まれず、人々は人形化。この状態でどうやって自分を守るつもりなのか。
まあ、体術とかに自信があって、守りを必要と感じていないのかもしれないが。
閉ざされた城門を一気に飛び越え、城の入り口に立つ。魔力の向かう先は城の中央辺り。おそらくは玉座の間とかって場所だな。面倒だが一気に向かうことはできなさそうだ。
まあ、妨害もないようだし、正面入り口からなかに入ろ。……あれ? 妨害が出てきた。
こいつらは、パペットだな。本来は子供の世話をするためのプログラムしか組まれてないはずだけど……。
魔力の流れを確認すると、どうやら本来のプログラムではなく、魔力の糸で操られてる。
「まあ、対処が楽だからいっか」
俺はその糸に向かって、魔力を放つ。あっさりと糸は切れてパペットたちは崩れ落ちた。
どのくらいで糸が復活するのかなー、と数分様子を見ても動きはない。
「あー。直接埋め込まないと、操れないんか」
なら、気にすることもないか。こいつらは無視して、さっさと魔力の中心に向かうことにした。
……巨大な扉の向こう。集約する魔力と、人の気配を感じた。おそらくは例の巫と、魔力を集約する何か……あれ? そーいえば、あの巫、名前なんだっけ? ……ま、いっか。俺は俺のつとめをはたすだけだな。
鍵が掛かっているようだけど、気にすることもないか。
魔力を纏い、全身を強化した上で一気に扉に体当たりした。
鍵ごと砕け散った扉の向こうには、呆然とこちらを見ている男と、巨大な石があった。
あ、あれ、魔石のなり損ないだわ。
なにをしようとしてんのか、一応確認は必要かなー。




