52 そこで見たものは
無事上陸。ここまではなにもなかったわ。ま、なんかあっても困るんだけどね。
ここの港の様子は、うちとあんまし変わりないな。ごくごく普通の港町ってかんじで。
他の国だと、港から様子がおかしかったことを考えると、ここはきちっと例の巫兼自称王に支配されてるってことなんかね。
まあ、そこら辺はおいおい確認するとして、まずはこの国に潜入しているスパイと合流することにしよっか。
上陸後は俺一人で移動開始。馬を買ってぱかぱか走っていきました。本来なら護衛とかいるもんだけど、暴れることを考えるとね。やっぱし一人の方がよかろうとなったわけだ。まあ、行く先々の町村で配下が待ってる予定だからだけどね。さすがに連絡なしは不味い。
そうして到着した、王都への道からは外れた田舎町。うお、ひどいことになってるわ。
そこに住む人々は痩せこけ、ただただ茫然として空を見つめている。いったい何事なんだ?
「ゼオ様」
呼ばれた方を見ると、潜入していた配下の一人、イクスが待っていた。かなり固い顔をしている。当然か、この状態なら。
「イクス、この状態は何事だ?」
「はい。この町の人々は、魔力を生むだけの人形とされているのです」
「なに?」
人形。生きているだけ。ただ、存在するだけ。
彼らは意思を奪われ、最低限の生命維持を魔力で補い、魔力を産み出すための存在として、そこにあるだけ。
「この町に限らず、どうやら一定以上の魔力の持ち主たちは、このような状態にされていたようです。
ただ、この状態にまで陥ったのは、ここ数週間のことです。ゼオ様がこられるということで、魔力を集めるためにこのような手段をとったのかと。それまでは、我々の調査でも貧しい以外は、ごく普通の町や村、でしたから……」
「お前たちには影響はないのか?」
「はい。どうもこの国に住むものたちに何らかの仕掛けがしてあったようなのです。詳しくはまだ……」
無理もないか。こうなる仕掛けがあったとしても、そんなことわかるわけないしね。まあ、あいつが人を人とも思っていないってことだけはわかったけどな。
「イクス。他の者とも協力をして、この状態から戻すための方策を見つけろ。俺は、この国の王とやらをぶっとばしてくる」
あー。かーなーりー、頭に血がのぼってきてるよ。思いっきり切れそうだよ。
「承知いたしました。ゼオ様、お気を付けて」
「おう」
予定変更。さっさと王都へ向かって、例のバカをぶっとばす!




