51 ベータとーちゃく
どんぶらこーっと船に揺られて数週間。よーやく最終目的地のベータが見えてきましたよ。
……ここまで、長かったー。あちこちで秩序及び地形改善とかやってて、一年かかっちゃったからねー。
あ、いまシェラはいない。これから敵の本拠地でなにが起こるかわかんないし、危険な目にもあわせたくないし。本人もいざって時には足手まといになりかねないってんで、こっちには後からーー具体的には二週間後くらいに来る予定。さすがに一人じゃ神様直せませんので。
ぼけーっとしながら海を見てたら、船長が近づいてきた。
「ゼオ様。間もなく到着いたします」
「ああ。ベータの状況について、追加事項は届いているか?」
「いえ。変わりはないようです」
「そうか」
そっかー。なにも変化なしかい。
俺が国を出る前から、ベータには何人ものスパイを送っている。そのメンバーからの報告によると、俺が何をしても国内で変化は見られないってことだった。
……相も変わらず、地方の貧困と中央および港区の繁栄という状況のまま。俺が来るからといって、特別な防護の準備もなし。いったいなに考えてんのやら。
「愚か者の考えなど、ゼオ様にも、他の誰にもわかりません。それこそ、同じ愚かさを持つものではないと」
「そうかも知れないけど、それでも理由が分かれば攻略もしやすいものだからね」
「そうかも知れません」
まあ、情報を制するものが勝つっていうしねー。
「ま、後は実際に現地で見てから決めるべきだろうな」
「はい」
大分大きくなってきた島影を見ながら、同時に大分不穏な空気も感じ取っちゃったわ。ここまで魔力が乱れてるって、いったいなにしてんのやら……。
いや、ふつーに天変地異が起きてもおかしくない状況になっちゃってるからね。
あーもう。こうなりゃさっさと片付けたるわ。




