50 改められた秩序
神様は俺を視るなり、巫と断じた。まあ、それは当然ではあるけど。
「私はあなたの巫ではありませんが?」
いや、再生はしたけどね。俺はアルファの巫なわけだし。
「あなたを、我が巫と認めます。……この地の状態を診ますと、巫による修復が必要と判断をいたします。我を破壊した愚か者はこの地には居らぬようですが、このまま我が巫を定めずにおりますと、再び破壊されないとは限りません。我はあなたを我が巫とし、あなたが存在する間、他の巫を認めることはないでしょう」
……おう。これは、前の巫がトラウマになってるようだな。だけど。
「壊れる前のことは覚えているのですか?」
「破壊されたのは情報出力のための部分のみ。本体および記憶領域に影響はございません」
あー、なるほど。パソコンで例えれば、モニターが壊れてハードは無事だったってことか。
「それでは、この地で起きたことは、把握していますか?」
「もちろん。秩序を改めるためにも、あなたのお力をかりたいのです」
「……わかった。なら、まずは神様が定めたことを、他の人たちに告げる必要があるわけですが、私は他国の人間ですから発言力はないんですよね。ですので、神様自身が伝えていただけますか?」
「……方法はあるのですか」
「ええ」
というわけで、俺は魔石の中の魔力の回復をまって、神様の声をこの国の全土に伝わるような拡声魔法を使ってみた。うん。うまくいったわ。
それにより、いまの貴族は全員罰を受け、魔力の高い小飼になっていた子供たちは、うち(アルファ国)から教育者および一時的に政治を担う人材を呼ぶことで対処することになって……。
これをあと五か国ぶんやんないとならないわけだよね……。幸い、魔力なしの年配の人たちのなかに、政治の心得を持っていた人たちがいたから、その人たちにお手伝いをお願いすることにしまして。
ここに滞在した二月ほどで、なんとか自然環境も整えて、秩序回復をいたしましたとさ。
あ、ちなみにベータからはなんも言ってこなかった。……なに考えてんのやら……不安だ。




