48 歓迎されてます?
そうして、船に揺られて数週間。到着したエータ国ではなぜかおもいっきし歓迎されてたり。なんで?
この国はどこぞの巫に支配されてるわけで、他所の巫の俺って邪魔者なんじゃって思ってたんだけど……。
「よくおいでくださいました。私たちはあなた様を歓迎いたします!」
「えっと、ありがとうございます?」
おっと、のっけからの大歓迎に思わず疑問形になっちゃったよ。
「あの、歓迎は嬉しいのですが、この国ってたしか他の国の巫を王としているのではないですか? 私のような他国の巫を必要以上に歓迎するのは良くないのでは?」
「あれは王などではありません。我々から神と真実の王を奪った簒奪者です」
よくよく聞いてみると、例の巫は自分が王となったあと、自分に従うものを貴族、それ以外を平民としてかーなーり、差別をつけてしまったらしい。表向きは神のご意志とかいってね。
だけど、当然それで政治が回るわけはなく、貴族だけが富み、平民はかなり底辺な生活をすることになっちゃってたわけだ。
おまけに、他国ー具体的にはベータ国だなーへの輸出が増えて、自国の物流さえたち行かなくなった。それでも王はなにもしない。こっちから手を出すにも居るのは他国だし、だからといって逆らえば強引に奪い殺す。こんな状態だったわけだ。
残念ながら、そいつに対する対抗手段は失われていた。
そいつが王になったときにKランク以上の魔力持ちは全員殺され、その後生まれた子供たちは、そいつの部下に洗脳されてる状態。逆らおうにも、子供は全員洗脳済みなので、人質をとられたようなもんだそう。
「ですから、巫様。お願い致します。我が国をお救いください!」
うん。気持ちはわかる。だけど。
「私ができるのは、神との対話をなし、真実を告げることだけです。その後のことは、皆さん、この国の方々の頑張り次第です。もちろん、我が国も協力は惜しみませんが、私がこの国に永住することなどはできませんから」
これだけは、いっとかないとね。
「……わかっております。それでも、この国が正常に戻るきっかけだけでもいただきたいのです」
「そうですか。わかりました」
俺はうなずいて左に手を差し出す。
心得たようにその手に自身の右手を添えて、一緒にアリシエラも歩き出す。
「まずは神殿に向かってください。神にお会いする必要があります」
「はい!」
のっけから忙しいことになりました。




