5 王様夫婦が父と母⁉
こうして馬車で進むこと約一時間。王城に到着ー。ドアが開けられて、さっきの人が手をさしのべてくれる。
俺はその手を取り、もう片方の手で妹を抱き上げたまま馬車を降りる……。うん。非常識なのはわかってるから。だけどね、怯えてるいもーとを自分で歩かせるってのもねー。
彼はなれたのか、そのまま俺の手を引いて歩き出す。
しばらく……大人の足で十五分位かな? 歩いた先の部屋に入るように促される。あ、ちなみに俺の歩く速さは、その気になると時速百キロ……冗談です。でも二十キロはいくんだよね。普段は回りに合わせるようにしているけど。いやー、身体能力チートってやつだね。
部屋の中には、偉そうな男の人二人、女の人一人、俺たちより二、三歳上くらいの男の子一人がいた。部屋に入ってすぐに妹は下ろして、二人で手を繋いでその人たちの前に進む。
男の人の前に立つと、その人の相好がいきなり崩れた。
「パパだよ、会いたかったよー。私のかわいい子供たちーー!」
ほえ? えっと、何? いきなり抱き締められて、???、なんだけれど? 妹も驚いてジタジタしてるし。
スパーン!
いい音がして、男の人は俺たちを放した。
「……シェリナ? いきなり何をするんだい?」
「アドルフィス様。子ともたちがかわいいのはわかりますが、まずは挨拶が先でしょう? 子どもたちも戸惑っておりますわよ?」
「まったくですね。妃殿下のおっしゃられる通り、まずは説明が必要でしょう。ましてや、ご子息の方はご自身のことをまったくご存じありませんからね」
「う、うむ。そうだな。ゴホン。まずは私だが、この国の王で、お前たちの実の父にあたる、アドルフィス・アルカディアという。彼女は私の妻でお前たちの実母、シェリナ。こちらはお前の養父となるバルバロッサ・ベルセリウス公爵、こっちはお前の義兄となるアルフォードだ。仲良くしてくれ」
一気に説明されました。つまり、王さま夫婦が俺たちの実の親。妹はそのまま親元に、俺は公爵家に入ることになると。なるほど。
それはいいんだけれど、なんで? たぶん俺は魔力ないのに。
「ああ、それとお前たちの名前もすでに決まっている。お前はゼオ、お前はアイシアだ。アイシアは王族に、そしてゼオは……巫になる」
巫? なんじゃそりゃ?