45 海外旅行のための結婚です
説明回。
巫にとって、成人するということは、かなり重要な意味がある。なにしろ、他国に向かうことができるようになるってことだからね。
他の国に向かう場合、船で最低一月はかかるため、未成人の場合は危険ということで、出国許可はおりない。
危険というならば、巫も他国に向かうことは危険でもあるけど……ここは巫の特性の問題で、逆に推奨されていたりもする。
神をおろす=神と呼ばれるコンピュータとの会話なわけだけれど、これは魔力ゼロの人間ならば誰でも出来る。つまり、巫がいない国でも、必要に応じて巫としての役割をはたすことも出来るということ。
そのために、基本成人した巫は、一度他国をすべて訪問して神降ろしをすることとなる。
ベータの国の巫。どうやら彼も成人してすぐに他国での神降ろしを行ったらしい。そして、巫のいない国で、偽りの神の言葉を伝え、その国をじわじわと取り込んでいったようなのだ。
その影響が、今うちの国にも現れているってことだな。……そう。あの血統主義の連中のことだ。
あれから王様たちおよびうちの神官達が調べたところ、現在の巫は俺とそのベータの巫ーー名前はゼロスというらしいーーの二人だけ。んで、そっちの巫が他国を回ったのは二十年前と十年前。十年前は俺がいたからこの国には来なかったようだけど、二十年前には種でもまいてたんかね。
この国はそれでよくても、他国でそれはかーなーり、不味いことになっていたようだ。……なにしろ、神様故障中ーだそうで。
「異常なしの連絡は受けておりましたので、まさかこのような事態になっていますとは、思いもよりませんでした」
だそうだ。自分勝手にするために、壊して回ったのかね。まあ、これの修理は俺がやらないとなんないみたいで……。
うん。学校で授業に出ない代わりに、神様の修理方法および、必要に応じたプログラミングまで勉強しましたよ。……このときほど、自分のハイスペックを感謝したことはなかったなー。
で、修理のために他国を回る必要がある。つまり、俺が成人しなければならない。修理は早い方がいい。とうわけで。
「アリシエラ、こんな事情で申し訳ないんだけれど、俺と結婚してくれないかな?」
「はい。私を選んでくださって、本当にうれしいですわ!」
……よろこんでくれました。うん、えっと、いやまあね。結婚するっていって、相手は他には浮かびませんでしたよ。他に親しい女性はいなかったし、俺にとってかわいいのは、シェラとアイシアの二人だったし? アイシアは妹だしねー。
というわけで、俺とアリシエラの結婚が決まったのでした。