閑話 やっかいごとは海の向こうから
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
「……間違いないのか?」
「はい、しかと確認をいたしました。間違いなく、かの国が関わっております」
「……調べましたところ、かの国はすでに北の島国を取り込んでいるようです。次の目的は我が国かと」
「厄介なことを……」
「まったくですな」
ここは、政治を司る中心。王城にある議会の間。一部の貴族達の間に広まっていた、魔力・実力主義ならぬ、血統主義。これについて調べたところ、他国よりの移住者が各家の当主および家族に密かに囁いていた事が判明した。
それも、この魔力による家の格の違いをあまり理解していない、比較的低い身分のものを中心に広めていたのだ。
たとえ身分が低めであっても貴族であることには変わりなく、数が多ければ無視しづらくなる。
「神殿からはなんと?」
「巫および神官長によりますと、この魔力による身分分けの正確な意味を公表しても構わないそうです。そもそも、神殿の最高位である巫は魔力を持たず、されどそれゆえに我が国でも最強の実力をお持ちであります。身分に頼らず、自らを客観的に見ることも出来る方です。それゆえに、今の巫がその座にあるうちに広めてしまえば、他国の干渉も退けるのは容易いのではと」
「武力においても最強。政治的な影響力も多大。こうして聞きますと、彼の優秀さが浮き彫りにされるようですな」
「さすがわ我が実の息子!」
「……陛下……」
「いえ、ですから、その血統主義は不味いかと……」
「別にかまわんだろう。いずれは我が息子になることは間違いないのだからな」
「……それは、ゼオとアリシエラ姫次第です」
「まあ、それはそうだが」
「ゴホン。とりあえず、この事実は公表するとしまして、入り込んでいる間者と、血統主義に堕ちている者達は……」
「うむ。まずは公表前に間者を捕らえ、そのうえで事実を公表。それでも自らの考えを変えんのならば、身分剥奪の上、地方で監視生活を送ってもらうことにする」
「……たしかに、それが無難ですな」
「……まったく、あの国も厄介事を運んできてくれたものだ」
「巫には頑張って、対抗してもらわねばならんが……」
「……大丈夫でしょう。ゼオ、巫はかなり図太いですし。大事な家族と恋人のためなら、いくらでもはりきりますから」
「……う、うらやましいかもしれん」
「そう思うなら、さっさと嫁を貰ったらどうだ?」
「……そういうな。こいつは先日振られたばかりだ」
「うう……」
「……話が脱線し始めたな。まあ、今回はこれくらいにしておこう。具体的な時期と方策については、次回の議会で話し合うこととしよう。みな、大義であった」
「はっ!」
議員達が去ったあと、その場に残るのは議長であるベルセリウス公爵と国王のみ。
「かの国……、ベータも二、三十年前に巫が現れたのだったな?」
「はい。その巫の増長により、国王は干され、今は魔力を持つものは罪人であるとされていると聞き及びます」
「うむ。だが、世界の維持のためにも、それは許されない」
「ゼオに連絡をとりましょう。神との間を繋いでもらわなければなりません」
「うむ。そちらは任せる」
「ああ、そうでした」
「なんだ?」
「将来は、アリシエラ姫をうちにいただきますので、ゼオは陛下の息子にはならないかと」
「なんだと!」
叫び返す国王をおいて、公爵は議会の間を出るのだった。
会話文ばかりになりました。
次話からは他国との関わりが出てきます。
ちなみに、この国の名前はアルファだったり。
安直ですみません。