43 久しぶりに会えた
神殿にある貴人用の応接室。美しい女性が紅茶を飲んでいる。実に絵になる光景だな。
「シェラ」
「あ、ゼオ。お仕事はよろしいでしょうか?」
「うん。終わったから大丈夫だよ」
「そうですか。お疲れさまでした」
「こっちこそ、待たせちゃってごめんね?」
「いいえ。私が勝手にお待ちしたかっただけですから」
ふわふわと微笑む。うん、あの方とは違って、安定の可愛らしさだ。
顔立ちはどっちかっていうとキツメなんだけどね、仕草や表情がいちいち可愛らしいんだよね。
アイシアの方は逆に顔立ちは可愛らしいけど、行動はしっかりしてる、ってか、場合によってはオトコマエだったりもすっからねー。
「お兄様とお姉様はどうなさっておられますか?」
こてん、と首をかしげて訊ねてくる。あの二人はけっこう手紙書いてたと思うんだけど?
「手紙、届いてないの?」
「いえ、お手紙は届くのですが、やはり直接ご存じの方から聴くのとでは大違い、ですから」
まあ、そういうもんか。
「ならいいけどね。……あの二人はーー」
そうして、しばらくは二人でお喋りに興じたよ。
だけど、俺はともかくアリシエラが遅くなるのは良くない。
「……そろそろ時間、かな」
「……そうですね」
しょぼん、と寂しそうな顔をするシェラ。ひっさしぶりだと、破壊力がおっきすぎるかも⁉
「あー、シェラ。ちょっと渡したいものが……」
「なんでしょうか?」
「これ」
ここに来る前にバッチリと手紙を書いといたからな。アリシエラが来なければ、王様か神官長にお願いしてたし。
「ここで会えるとは思ってなかったからさ。良ければ読んでくれないかな?」
「はい! すごく嬉しいです」
満面の笑みを浮かべてくれた。俺も嬉しくって笑ってたけどね。
「それじゃ、またね」
「はい。次にお会いできる時を楽しみにお待ちしております」
そうして、俺は学園に戻っていった。
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『アリシエラ姫
いかがお過ごしでしょうか。
私はのんびりと学園生活を楽しんでおります。
幸い、ともうしますか、私の担任は叔父でしたので、だいぶ融通を利かせていただいております。
姫の兄上、姉上であるアルフォード殿下もアイシア姫も変わらずにお過ごしでおられます。
食事の時などは、必ず私を呼ぶことで、いろいろと噂がたってしまっておりますが、そのようなことをお気になさる方々でもございませんので、私は普段と変わらずに過ごすことができております。
来年には、姫も一緒に過ごすことができますので、楽しみにしております。
そうそう、実はーー
ーーなので、最近は高い木の上で、のんびりと昼寝をしているのですよ。
私が学園に入った理由、それについても動きがありました。
そちらについては、国王陛下にお任せをするつもりでおります。
兄上、姉上に影響はございませんので、ご心配なさらないようにお願い致します。
次にお会いできるのは、長期休暇のときになりますが、お会いできる時を楽しみにしております。
お体にお気を付けて、健やかにお過ごしになられることを、願っております。
ゼオ
追伸
次にお会いしたとき、また姫の作られたお菓子を食べるのを、楽しみにしております』




