42 神殿になんで居んの?
夜。特殊な事情(巫だからね)を持つ俺は、申請すればいつでも外出可。何しろ俺はもともと入学するわけにはいかなかったはずだし、本来の巫の仕事の方が重要だしね。
前もって連絡は入れといたから、神殿到着後すぐに会議の予定だったんだけど……。
「……」
「て、てへっ……」
おっさんがやってもかわいくないわ! 後ろで父上も呆れてるじゃないか!
「……王様、一体なにしてんですか?」
「だって、ずっとアルフォードにもアイシアにも会えないし。今回事件があったから、ゼオは神殿に来ると思ったんだよ」
「……ちなみに王妃様とアリシエラは?」
「ああ、妃殿下は城だが姫はこちらに来ている。もっとも別室で会議が終わるまで待っておられるが」
あー。そうすっと、会議のあとに会いに行かないと。っていうか、さっさと会議を終わらせるべきか。
「あー。とりあえず、まずは報告します」
その場に居たのは、王様、父上、その他神殿のお偉いさん達。ってなわけで、さっそく学園であったことを説明した。
ついでに先生が言っていたことも付け加えて。
「……」
「……なにを考えとるんだ?」
「伯爵家以上で当主なら、身分制度の意味をわかっているはずですから」
そう。魔力が高いものが身分も高い。これは魔力の循環のため。魔力の少ない人間の方が魔力を使ったあとの回復が早く、多くの魔力を世界に循環させられる。
魔力の多い人間は、魔力の使用後の回復が時間がかかるため、魔力をなるべく使わずにすむ、高い身分を与えられる。
回復中は魔力の放出はないからね。
つまり、血筋ではなく、魔力の循環による世界の保護のための身分制度であるため、血筋で威張るのはおかしい。血統主義はこの世界で出てくること事態がおかしい。
「……いや、そんなに子供がかわいかったのかねー」
なんつーか、ほんとにバカだったけど。
「……子供はかわいいが、だからといって血筋にこだわるのがおかしいのは確かだ」
うん。実際、家を継ぐには、魔力量が重要だからね。たとえ当主の血を引いてても、魔力がなければ家は継げない。これは法によっても定められている。
「彼らとその親はいずれ平民に落とすことは決定といえるが、その考えを持つようになった理由を調べねばならん。しばらくは泳がすことになるだろう」
……父上、やる気だね。まあ、そちらはお任せしよう。
「そっちの政治に関わることはお任せしますよ。ただ、神殿の方のにも関係のあることですので、場合によっては介入させてもらいますが、よろしいでしょうか」
「当然だな。……できれば信頼できる神官を借りてもいいだろうか? 最初から連携をとっておいた方がよいだろう」
「わかりました。選抜して閣下のもとに向かわせます」
「よろしくたのむ」
おんやぁ。なんか神官長と父上の間で話がまとまっておりますね。ま、そっちはおまかせということで。
「それじゃ俺はそろそろシェラにあいにいきますけど、いいですか?」
「おお、そうだったな!」
「陛下。こちらの話はまだ終わっていませんよ」
「ええ。これからの事について、ある程度詰めなければなりませんから」
「ああ、ゼオは行って構わない。姫も早く会いたいだろうしな。それに、帰りがあまり遅くなってもよくないだろう」
うん。俺はともかく、アリシエラが遅くなるのはよくなからな。
「それでは、失礼します」
「お疲れさまでした」
「またな、ゼオ」
「ゼオーーーー!」
……王様、あなたは本当に王様なのでしょうか? 子煩悩ってか、身内関係にたいして、メンタル弱すぎでしょー……。