38 保健室にて
さて、保健室にとーちゃくー。
うん。当然ながら、ぼーぜんとしたままだね。俺も男をだっこしたくはなかったよ……。
ゴホン。まぁ、気を取り直してっと。
「大丈夫か? だいぶやられてたみたいだけど」
「……だい、じょうぶ、です……」
あー。さすがに戸惑いが勝るかー。
「俺はゼオ。おんなじクラスだからしってっかな? きみはたしかスレイ、だったよな」
「……はい」
うん。まだ頭は働いていないようだ。ついでに、保健の先生も居ないぞ?
「先生、居ないな」
「……この時間は、きっと、薬室だとおもう」
あー、そっか。こーいった場所の保健の先生って、医者ってより薬師に近いんだよね。自分で薬を調合して、怪我をした生徒の手当てをするってのが、一般的だから。
「あーそっか。じゃ、面倒だから俺が直しちゃうか」
「は?」
なにを始めるのかっと思わず俺を見上げたスレイを無視して、彼の体に手をかざす。そして、治癒のっていうか、かつての記憶および神殿などで手を回して確認した人体の構造記憶を思いだしながら、魔法を発動させる。
淡い光がスレイの体を包み込むと、一瞬にして怪我はすべて消えた。
うん。実はこれ、治癒ではなくて、修復っていうのが近いんだよね。応用は無機物にも効くから。
人体構造の本来の形をイメージしながら魔法を使うと、異常だった部分が正常な形に戻る。……できるのは俺だけだったけど。
表層的なら医者の先生も出来なくはないけど、大抵は魔力が足りないそうだ。うん。こればっかりは俺にもどーしようもないし。
魔石を利用した魔法の制御も、魔力ゼロゆえの俺の特典みたいだしねー。
自分の怪我が消えたことに唖然としているスレイに、俺は訊ねる。
「で。どういう経緯であーなったんだ? あ、心配しなくても安全は保証するよ? 先生の言質もしっかりととってあるし、大丈夫」
「あ、はい」
そうして聞き取り調査をしたあと、スレイには自室に戻るようにいって、俺は叔父さんもとい先生のもとに向かった。
一応、すり合わせってのは重要だからね。




