35 さっそく事件かよ
ゼオ、学園にいく。
理由説明回です。
ドカッ! バキッ!
妙な音が聞こえてきて、俺は転がってた木の枝から体を起こした。ちょっと下を覗くと、男三人が寄ってたかって暴力を振るうってこれ、いじめか?
俺はすぐさま木から飛び降りる。浮遊の魔法をかけて、ゆっくりと音もなく着地。いや、人が居なけりゃ気にせず降りるけど、人が居るなら衝撃はころすようにしないとね。
そして、改めて目の前の四人を見つめる。……一組、別名高貴貴族クラスの三人に、四組、俺と同じ一般市民クラスのやつ。
はあ、ホントにこーなるとはねー。俺は王様の言葉を思い出していた。
「ゼオ、すまんが学園に通ってもらえんか?」
「はい?」
学園。政治を志す者たちが、実際に政治に関わる前のシミュレーションをするための学舎。ある程度の学力がないと通うことは許されないが、平民から貴族まで、やる気と能力のある人間が集まる。
で、俺は巫である以上、政治に関わることは許されない。つまり、通う意味がない、ってか、通ったら逆に怒られるのではという場所なんだけど。
「俺は巫ですよ? 学園に通うことは許されませんよね?」
「……政治とは関わりのない、権力者の存在が必要なのだ……」
「は?」
……どこにでもバカは居るものだけど、今年学園に入学予定の貴族のなかに、そのバカが混じるそうだ。
魔力主義はまあ、いいとしよう。魔力主義=実力主義って考えている人が多いから、平民で魔力がなくても、政治能力が高ければ十分に尊敬される。学園ってのはそういう場所だから。
だけど、貴族主義ってのはいただけない。
貴族だからって政治能力が高いとは限らない。貴族のなかには自分でその能力がないからと、部下に丸投げをしている人間もなかにはいるしね。それはそれでいいんだけど。ようは領地もちの貴族がきちんと領民を養えればいいんだから。
だけど、能力がないのに貴族だからって理由で専横をすればどうなるか。民は飢え、領地は疲弊するだろうね。
今年の入学生に混じるそのバカは、まさにそういう人間らしい。しかも、本人の魔力は平民並み。……時々ある、貴族が魔力少ない実子を引き取ったっていうパターンらしい。
あー。だからこそ、魔力主義ならぬ貴族主義なわけだ。本来なら平民として居るはずが、貴族として育って、だけど貴族に必要な魔力が足りないっと。
しかもこの世代、そういう親が多かったそうで……学園に十数人入るそうな……。
オイ、親は何を教育しとんだ!
「……お前は魔力を持たず、だが私と同等の権力も持つ。もちろん、学園の方には連絡をするが、それを明かすのはお前自身の判断で構わん。そういった連中の暴走を止めるために、学園に通ってもらいたい。……これについては、神殿のほうの許可も得ている」
「はあ、まあ、神殿にいって確認してから返事させてもらいます」
「ああ、それでかまわん。それに……」
「?」
「子供たちも、お前と一緒に通いたいと駄々をこねていたから、なおさら助かる……」
おい?
「……それでいーんですか?」
「……子供たちには勝てん……」
勝てるのは王妃様だけかもねー。