34 いつものお茶会
ブレイズが来てから一年後。とうとう、お披露目のときが来たぞっと。
というわけで、俺たちはみんなして入場待ち状態です。あ、さすがにまだシェラはいない……。え、ああ、シェラってのは、アリシエラの愛称。そう呼んでほしいっておねだりされました。呼んでんのは俺とアイシア、アルフォード兄さん、ブレイズ、王様だけ。他はちゃんと名前で呼んでる。王妃様? ひとりだけアルちゃんって呼んでるよ。アルフォード兄さんと間違えそうな気がすんだけど、本人たちはちゃんと区別できてるみたいで問題ないそうだ。
「き、きんちょう、してきました」
「大丈夫だよ。もうきちんとできるようになってるんだから」
緊張しまくってるブレイズの頭をなでなでする。うん、手触りが良いです。
「ゼオ、わたしも!」
「あーはいはい」
アリシアの頭も、もう片方の手でなでる。……兄さん、あなたは俺より年上でしょ。物欲しそうな顔しないの。
王様も、威厳もへったくれもない顔しないの。あ、王妃様にハリセンくらってる。あれって王様用に常備してるって言ってたっけね。
そして時間になり、俺たちは会場に入る。兄さんがアリシアをエスコートして、俺がブレイズをエスコートする。……うん。ブレイズはちゃんとした夜会服だけど、俺はあいっかわらずの巫女装束だよ! 悪いか!
そうして、お披露目はそつなく終わり、いつも通り俺が大人に囲まれまくって、今回の夜会は終了しましたとさ。
月一回のこの夜会だけは馴れないね。他は出なくても問題ないけど、これだけは公的業務のひとつなんだよねー。……かたっくるしいのはきらいだー。
「ぶじに、おわったんですか?」
翌日、子供たちそろってのお茶会です。まあ、あるいみいつも通りといえるか。
ひとり参加できなかったシェラが、夜会の様子を訊ねてくる。
「うん。いつも通りだったよ」
「そうですの。ゼオが大人にもみくちゃにされるのも、いつも通りでしたの」
「あにうえ、そうなの?」
「そうなんです……」
はあー。ため息もついちゃうよ。
そうして、しばらくお喋りしたあと、シェラがなんか決意を持ったような声を出した。
「ゼオ!」
「なに?」
「わたしのおひろめのときは、ゼオがエスコートしてください!」
「え?」
こういう場合のエスコートは、基本身内がするものですが? 兄弟とか、親とか。
「それっていいの?」
「うーん、まあ、ゼオは特殊だから許可は出るかもしれないけど……」
「シェラはゼオがいいの? 兄上より?」
「はい、ゼオがいいんです!」
「さすが、あにうえです!」
……そういう問題かね?
「まあ、父上や王妃様がいいっていったら、エスコートするよ」
「はい! ありがとうございます!」
力はいってんなー。あれ? なんか他の三人が微笑ましく見ているような?
「なに?」
「なんでもないよ」
「なんでもないんですの」
「うん。なんでもないから」
いや、なんかありそうなんだけど? ま、いっか。今はこの時間を楽しむことにしよう。おかしなことはないだろうしね。
そうして、次のシェラのお披露目では、結局俺がエスコートして、王様がすねまくることになりましたとさ。
作者の都合により、ここまでで一旦連載を中止させていただきます。
続きは書きますが、10月後半から11月頭の予定です。
どうぞ、お待ちください。