26 弟がやって来た!
今、俺と両親の目の前には、可愛らしい男の子が立っている。執事の手をしっかりと握って、びるびると震えているようすは、なんとなく小動物を思わせる。……えっと、次の公爵家の跡継ぎ、なんだよね? 大丈夫かな?
「はじめまして。私が君の父となるバルバロッサ・ベルセリオス。こちらは母、エルミナ。こちらは兄のゼオだ」
「よろしくね」
「よろしく。あ、そういえば名前は?」
「え、えっと……」
あっと。戸惑っちゃってるかな?
「まだ話していなかったな。君のこれからの名前は、ブレイズ・ベルセリオスとなる。いずれは、公爵家の跡取りとしなってもらうことになる。努力をするように」
「え、こうしゃく?」
あーっと。まだよくわかんないよね。ここで理解していた俺のほうがおかしいとは自覚あるさ。
「うん。それについてはおいおい覚えていこう。今日は疲れたよね。一緒にゆっくりとお菓子食べよ?」
「え、お菓子、あるの?」
「うん、もちろん。料理長のお菓子って美味しいんだよ? 一緒に食べよう?」
「うん!」
「というわけで、父上、母上、俺たちは失礼します」
「う、む」
「わたくしも一緒に食べたいわ。だめかしら?」
「今日は子供だけで食べるんです。明日、ご一緒にお願いします」
「あら、残念ね。それじゃ、また明日ね、ブレイズ。今日はゆっくりとしてちょうだいね。ああ、わたくしのことは、これからは『母上』って呼んでちょうだいね?」
「そうだな。私のことは『父上』、ゼオのことは『兄上』と呼ぶように。今のうちからそう覚えておくといいからな」
王様みたいにぱぱままってやってたら、いつまでたってもそのままになっちゃうもんだしね。
「は、い。わ、わかりまし、た。……ちちうえ?」
「それでいい」
「それじゃ、またね? ブレイズ」
「え、あ、はい。ははうえ」
「ええ」
「それじゃ、俺たちはいきますね」
「楽しむといい」
「はーい」
「あ、はい……」
おとなしいっていうより、おもいっきり戸惑ってるってのが正しいか。初めての場所だしね。
「よし。それじゃ、俺の部屋でお菓子食べよう」
「は、はい。あにうえ」
「うん!」
うん。かわいい。おもわず頭なでなでしちゃったし。あー、アイシアの昔を思い出すなー(って、まだ一年しかたってないってね、おもわず自己つっこみしちゃってるけど)
うん。アイシアと兄さんのことも話しとこっか。