閑話 かわいい子には旅をさせろ
旅だった子供たちを思う、親の状況。
「……なにもゼオ自身がいかなくてもいいんじゃないの?」
「この国でおそらくもっとも強いのはゼオです。実際にドラゴンを見ることも、そこまでの道中の旅路も、あの子の勉強になります。ですから、あの子をいかせない理由にはなりません」
「だけど、それならアイシアもアルフォードも別に行かなくても……」
「ゼオだけでなく、騎士団長も一緒なのです。これ以上安全な旅路はそうはありません。ならば、おふたりを同行させて、見聞を深めるのもよいことでしょう? それを邪魔するおつもりですか?」
「だけど、まだみんなちっちゃい子供なんだよ?」
「こういうのは子供の頃から学んだほうがいいんです。大人と違って、子供は柔軟ですから。……陛下こそ、子供じゃないんですから、いい加減に仕事に戻ってください!」
「ううー。公爵がいぢめるー」
「まったく。真面目に仕事はしないと、帰ってきたときに子供たちに見捨てられますよ?」
「なに! それはまずい! すぐに仕事に戻るぞ!」
いそいそと去っていく王をみて、私はため息をつく。
「本当に……。なんであのような方から、ゼオや姫といった立派な子供が生まれたんだか……。……ああ、妃殿下の血のほうか。それなら納得できるな」
うむ。それでは私も仕事に戻ろう。
「……ということがあったそうなのよ」
「はあ。陛下、そこまで軽くていいんでしょうか……?」
「一応は大丈夫よ。私生活では軽いし子供っぽいんだけど、仕事はしっかりできるタイプだから」
「……仕事ができるところは、ゼオも似ちゃったのですね。もうすこし、子供でいてほしいと思うのですけれども、我儘でしょうか……」
「それが、親というものでしょう。ああ、そろそろ次の子を引き取る予定だったかしら?」
「はい。公爵家を継ぐことは、ゼオにはできませんから。あの子の弟となれる子を引き取る予定で居ります。どうも、それくらいの魔力を持っている子がいるようなので」
「あら。それは楽しみね。無事に引き取ったら、わたくしにも会わせてくれるかしら?」
「はい、もちろんですわ。それにしても、あの子達のお土産も気になりますね」
「そうね。まだ幼いから、どちらかというと食べ物に興味を持ちそうなのよね」
「まあ、それはそれで可愛らしくていいかもしれませんね」
「あちらなら、毛織物も産業としてあるのですけれど……」
「今の時点でそこまで気にするのも、難しいでしょうね。ゼオも大人びているといっても、こういうところはまだまだ子供ですから」
「そうね……。まあ、あの子達が大きくなったあとを楽しみにしましょうか」
「今は、あの子達の幼いところを可愛がることにいたしましょう」
そうして、王妃と公爵夫人は、ふわりと笑いあった。
性格は、王が一番幼いですね。
……実は、年も一番下だったりするのです。
お土産を見た感想は、母親ふたりは、やっぱりとなりました。