22 人体に魔法は使えません?
おー。あれがドラゴンかー。確かにでっかいなー。胴体だけで十メートルはあるかなー。……どうやって倒すんだろ?
やって来ました、山の上。ちょっと平らになってるトコに、赤いドラゴンいます。
あ、今はドラゴンが気がつかない距離にはいるよ。なにしろ、ドラゴンと比べて俺たちはちっちゃいからね。隠れる場所には事欠かない。
「あれが、ドラゴン……」
「おっきいですのー」
アイシアと兄さんは、俺が魔石で作った温石を抱えながらボーゼンと見ている。いや、寒いところはカイロだと思ったんだけど、この世界にカイロはないし、こういう場合は着込むっていうのしかなかったみたい。
俺が魔石を加工して温石つくったら、……他の人たちの分も余計に作ることになりました。
持ってきた分の魔石じゃ足んなくなったから、町で買って補充になったよ。
町の人たちもこれを見て、魔道具の技師の人に新しい魔道具として作ってほしいっていったそうで。見本で温石みて、驚いてたそうで。……必要だと思うんだけど、誰も思い付かなかったのかな?
「武器として以外で、携帯用の魔道具などは考えたことはありませんですから」
なるほど。そうするとこれからこういうの増えっかもね。
そうこうしつつ、ドラゴンが見えるとこまで来たので、こっからは俺と騎士団長さんとふたりで行きます。
「ゼオ、いっちゃうの?」
「ん。大丈夫、ちゃんと倒してくるから」
「気を付けてね」
「おう」
ふたりの激励を受けて、俺たちはドラゴンの方へ。……なるたけ物陰に隠れて、気がつかれないように近づかないとね。
「できれば、不意打ちをしたいですね」
「姿とか隠せればいいんだけど、そういう魔法ってないの?」
「直接人体に作用するような魔法は、誰も使えませんよ。怪我の治癒にしたところで、表面の傷しか塞げません。骨折などでも、魔法で直そうとすると、おかしな形で固まってしまうので、やはりダメですし」
「ふうん?」
……なるほどねー。つまり、この世界では、人体の仕組みとかいった医学的な知識を持つ魔法使いとかっていないってことだね。医者は医者で、魔力が少ない人間が主につく職業でもあったから、なおさら、か。ふーむ。
「別に姿を隠すのに、人体を透明化とかする必要はないですよ。まわりの屈折率を変えて見えないようにすればいいんですから。ついでに、臭いなども届かないように、空気の制御もしましょうか」
「……………………は?」
疑問系になってる騎士団長さんはほっといて、俺は魔石を握って魔法を発動する。
イメージとしては、囲んだものの光を透過するまあるい壁、かな。光が壁に当たると、俺たちを通り抜けて後ろにすり抜ける。つまり、光の反射がないから、俺たちは見えなくなる。
空気も俺たちのまわりからドラゴンとは反対方向に抜けるような風の通り道を作った。これで、窒息もしないし、ドラゴンに臭いも届かない。
まあ、おなじ壁の中にいる騎士団長さんと俺はお互いに見えてるけどね。
「えっと、何をなされたのですか?」
「それは戻ってからのお楽しみってことで」
さてっと。さくっとドラゴンを倒そっか!




