19 勉強中お邪魔します
あのあと、神殿で次の神事についての話し合いのあと(神事……はやく巫女装束から離れたい……)、俺は城に向かった。まずはアイシアとアルフォード兄さんに会いにいかないと。絶対に拗ねてるだろうしな。
「こんにちはー。来たよー」
侍女さんに開けてもらって、アイシアの部屋へはいる。普段、この時間だとふたりして部屋でマナーの勉強中のはずだし。
「「ゼオ!!」」
ふたりとも駆け寄ってきて俺に抱きつく。もちろん、絶妙なバランスをとって、ちゃんと倒れずにふたりとも抱き止められるよ。
「昨日は来れなくってごめんね?」
「しかたないですの。ゼオは忙しいんですの」
「そうだよね。僕やアイシアと違って、もうお仕事もしているんだし」
うん。まあ仕事もしてるけど、昨日のはほとんど私用だったしねー。まあ、将来を見据えてっていうのはあっけど。
「あ、今は勉強中じゃなかったのかな?」
「大丈夫ですよ、ゼオ様。ちょうど休憩に入ったところでしたから」
うむ。ナイスタイミング俺。まあ、部屋の中に動きがなかったし、侍女さんが入れてくれたから大丈夫だとは思ってたけどね。
「本当に、ゼオ様は優秀な生徒でしたからね。……もっとも、普段を見ていますと、そうは思えませんが」
この人も言うよなー。ちなみに、前は俺の母上が教師役だったんだけれど、俺の卒業のあとは城の女官長さんが変わっている。母上もいろいろと忙しいらしい。なにしろ。
「ああ、そういえば俺に兄弟が出来るって」
「え?」
「だめですの! ゼオの妹はわたしだけですの!」
いや、アイシア。おまえブラコンすぎでは?
「えっと、公爵家の跡取りってことかな?」
さっすが。
「兄さん正解! 俺は巫だから公爵家は継げない。だから、後継者が必要なんだよ。アイシア、おまえも王女なんだから俺の兄弟とは仲良くしないとダメだからな?」
「…………ん……」
ほ。どうやら理解はしてくれたようだ。納得したかはわからんけど。
「ゼオー! ぱぱだよー!」
……えっと、この人王様だよね? いつも思うんだけれど、こんな軽くていいのかなー。
おまけに今回、ノックもなしで入ってきてたよね?
「……陛下……」
ほら、女官長さんもあきれてるよ?
「王様、淑女の部屋に入るときはきちんとノックをして返事を聞いてから入ってください。国の最高位にある方が礼儀を守らないのはどうかと思いますよ?」
思いっきし、冷静に、冷たくいってみた。うん、父上のまねー。
「う、ゼオ、バルバロッサににてきたのではないか?」
「親子ですから」
「う、実の父は私だぞ!」
「実の親より一緒にいる育ての親の影響の方が受けやすいですから」
「う……」
はあ。この人、毎回これだしね。
「殿下、姫、そろそろお時間ですよ」
「……はい」
「わかりました……」
おう。落ち込んじゃってるよ。
「終わった頃にまた来るよ。お土産まだ渡してないから」
「! うん!」
「まってる!」
うんうん。元気が出たようだね。
「……私には?」
おい⁉
「王様にはちょっとお話があります。お時間を頂けますか?」
「! もちろんだよ! 喜んで時間は空けるよ!」
……はあ。秘書さんの苦労が見えるような……。
とりあえず場所を移して、お話をしましょうか。




