10 なんで? 巫は巫女じゃないよね?
第二部開始です。
煌々と輝くシャンデリア。きらびやかに着飾った男女。豪勢な食事と飾り。
まさに、これこそが貴族の夜会ってやつだね!
……俺とアイシアおよびアルフォード兄さんは、会場に入場待ちをしております。
兄さんは純白の夜会服。アイシアはピンクのドレスで可愛らしい。そして俺は……最高位である巫の神官服だよ。しかも、これって和服ってか、神社の巫女装束では⁉
「似合ってるよ」
「ぜお、かっこいいのー」
「……ありがとおー。アイシアと兄さんもよく似合ってます……」
「えっと……」
……困らせるつもりはないんだけどね。さすがにこのカッコはね。ぜんっぜん! 想像もしとらんかったわ! なんで、西洋風の世界で、神職だけ和服なんじゃー! ……これが、巫女装束でなければまだ良かったのに……。他の神官さんたちは、ちゃんと洋装ってか、純白の神父服って感じのなのに……。
「おお、なかなか似合っているぞ!」
「ほんとね。三人とも可愛らしいわよ」
「……どうして俺だけこんな服?」
「ああ、それは巫の子供用の衣装だそうだ」
「十歳、十五歳、十八歳でそれぞれ衣装が換わるそうよ」
「そーなの……」
……将来の衣装がせめて男性用であることを祈っとこう……。
さて、そろそろ時間のようだな。俺とアイシアのお披露目の始まり始まりー!
「国王陛下ならびにご家族の方々。およびベルセリウス公爵ご夫妻ならびにご子息のご登場です」
声が響き、正面の扉が開く。
戦闘を王様と王妃様が歩き、その後ろを兄さんにエスコートされてアイシアが進む。
俺は父上と母上のふたりと手を繋いで入場した。
王様たちは壇上の席の前にたち、俺たちはその一段したの台に立つ。
「みな、聞くがよい。このたび我が王家に娘ができることとなった。アイシア王女だ。見知りおくように」
王様の言葉が終わると、教えられた通りにアイシアが一歩前に出る。
「ごしょうかいにあじゅかりました、あいしあでしゅ。よろしくおにぇがいいたしましゅ」
舌ったらずで可愛らしい挨拶に、貴族の人たちは微笑ましく思えたらしい。控えめの拍手の音にホッとしたアイシアは兄さんの手をギュッと握ってる。……その役、俺がしたかった……。
「次にベルセリウス公爵の子息となったゼオだ。彼は長らく我らが待ち延びた巫でもある。みな、心するように」
何を、とか思っちゃだめなんだろね。俺もまた壇上に上がり、アイシアの隣に並ぶ。
「お初にお目にかかります。ベルセリウス公爵が子息にして巫、ゼオと申します。ぜひ、ご記憶に留めていただけるよう、よろしくお願い致します」
一礼しての口上に、他の貴族の方々はポカーンとしてた。いや、まあ、子供のする挨拶じゃないわな。回りがあんまし子供扱いしないから、ついやっちゃうんだけれどねー。
どうしよって思ってたら、父上が拍手を始めてくれて、他の貴族たちも慌てて手を鳴らしていた。
ちらりと見ると、やりすぎだろうって(目で)言っていた。
……すみませんでしたー。
補足として。
転生者はゼオだけではなかったということです。
大昔の転生者が、巫の正装として巫女装束にした模様。
なお、男女兼用なのは、幼少期の衣装のみです。