閑話 膨れっ面兄妹
ゼオ大好き兄妹のお話。
「本日、ゼオ様は神殿の方に向かわれますので、こちらには来られないとのことです」
「……」
「……」
可愛らしい少年と少女は、それを聞いて顔を見合わせた。
「ぜお、来られにゃいのでしゅか?」
「神殿に行ったあとにこちらに来るとは、言ってなかったのですか?」
「はい。本日はそのままご自宅にお帰りになられるそうです」
「……」
「……」
ぷくっとふたりの頬が膨れる。
「いっしょにあしょべるとおみょったにょに」
「うん。一緒にお勉強もできると思っていたのに」
可愛らしく拗ねる様子を、ふたりの教育係を兼ねる女官長はほほえましく見守っていた。
「殿下も姫様も、明日には来られるとお約束しておりますでしょう。1日会えないのを我慢できなくては、ゼオ様に笑われてしまいますよ?」
「みゅー」
「うー」
アルフォードより、ふたつした。アイシアと同じ年の公爵令息。そのお役目は国でも重要な巫である以上は、しかたのないことではあるし、ゼオの方がおそらくは大変な役割を持っているのも確かであっても、子供たちにとっては会えないことの方が重要で。
「あれ? ふたりともどーしたんだ?」
「ぜおー!」
「ゼオだ」
「うおっと」
今日は来ないはずのゼオが顔を出すと、ふたりは大喜びで抱きついてくる。身体能力の高いゼオは、バランスを崩すこともなく抱き止める。
「おふたりとも、ゼオ様が来られないことに拗ねておられたんですよ」
「あ、そうなんだ。神殿は行ったけど、そこで王様に報告が出来たから、帰る前にこっちにもよったんだけど」
「あそぶのー」
「うん。三人で今日は遊ぼう!」
「しょーがないなー」
やれやれ、という感じで、ゼオはふたりに笑いかける。王族の兄妹は嬉しそうに笑う。
女官長もそれを見て、ほっこりとしていた。
(このなかでは、やっぱりゼオ様が一番のお兄さんのようですね)
そう心のなかで呟きつつ、お茶の準備を始めるのだった。
次から二部です。