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第1話 近付く小国

 短いです。第一章のプロローグ的な話になります。

 今後も章が変わるごとに第1話からカウントしていきますが、わかり難いという声があれば変更していきます。

「ふんふんふ~ん♪」

 楽しそうに鼻歌を歌いながら荷車を押していく少女たち。その鼻歌を聞きながら、荷車を引く青年とその後ろをゆっくりとついて行く女性は頬を緩めている。


 一行は慣れた足取りでとある八百屋の前に到着した。

「おばさ~ん! 今日も売りに来たよー!」

 元気に声をかけると、店の中から恰幅の良い婦人が姿を現した。

「おやっ、ルリーシェちゃんにハミルちゃんいらっしゃい! 今日はお兄さんたちと来たんだね」

「「うんっ♪」」

 にこやかに応える愛らしい少女二人。その二人が魔王の眷属だなどと誰が思うだろうか。

 ――ルリーシェたちが魔王の眷属になってから早ひと月。今日も平穏なり。


「やあ、女将。この町は相変わらず活気がいいな!」

「おや、イリスさん。そりゃあ、ノーキンダムは元気なのが取り柄の国さね!」

 笑い合うノーキンダム出身の勇者にして魔王預かりの勇者イリスと八百屋のおばさん。この豪快さはノーキンダムの女性に特有のものなのかもしれない。

「…それにしても最近はいつもに増して活気がいい気がしますね」

 そんな女性陣の勢いに圧倒されながら、唯一の男性であるコルトが町の様子を眺めている。コルトも孤児として過ごした中で中心街にはあまり寄らないようにしていたが、ここまでの活気は経験したことがなかった。

「ああっ! そりゃあ、近々おめでたいことがあるからね!」

「「おめでたいこと?」」

 イリスとコルトが二人して首を傾げる。その後ろではルリーシェとハミルが「こと~?」とキャッキャ言っている。

「おや? 知らなかったかい? 近々、ノーキンダムの姫様の結婚式があるのさね」

「…ほぅ、それは知らなかった。して、どなたの結婚式なのだ?」

「ええっと、たしか第四王女じゃなかったかね?」

「お相手は誰なんですか?」

「言ってわかるかねぇ。アポバッカ王国っていう国なんだけど…」

 アポバッカ王国。勇者として各地を巡ってきたイリスもあまり聞き覚えのない国名だった。

「一応地理的には隣国らしいよ? まあ、あと一週間もしたら結婚式だからその時に来てみたらいいさね」


「さて、話はここまで! 今日も持ってきたんだろう? 見せておくれ」

 八百屋の女主人に言われ、コルトが荷車にかかっていた布を捲る。

「おぉっ! やっぱり、あんたらが持ち込む野菜はデカイね~」

 このひと月、間を空けることなく運び込まれてくる良質な野菜の数々に感嘆の声が漏れる。

 この野菜はクロガネが魔王になった際に手に入れたドロップ生命の泉で育て上げた物で、本来ならば収穫に適さない時期でも取れる上に味や品質はもとより、何よりもサイズが規格外の大きさ。

 コルトたちが売りに来るようになってから僅かな時間ですでにリピーターが付いているほどだった。

 女主人としては客もこの野菜を求めてやって来るので量を確保したいところだが、売りに来るのは子どもたちばかりで彼らも自分たちで作っていると言うのでそれほどの量は確保できないだろうと思っている。その代りに自分の店にしか卸さないらしいのでブランド価値が付いているのだ。


 コルトたちがわざわざ荷車を押してまで野菜を売りに来るのには当然わけがある。

 魔王になった際、ある程度の軍資金と当分の間の食糧は与えられているとはいえ、領地から出ることのできないクロガネは自給自足の生活をせざるを得ず、また子どもたちは外に出ることは出来るが、外では金が必要になる。そのため、野菜を作って売りに行っているわけだ。

 買い取ってもらった代金で野菜の種をいくつか購入し、またそれをクロガネの力で成長させる。自分たちで食べる分の食糧も確保できるなど一挙両得だった。

 だが、売りに来ていたコルトたちも売っている八百屋、購入していく客たち、そしてクロガネでさえ知らない付加価値が存在していた。


「……見たな?」

「はい。しかとこの目に収めました!」

「では、戻るとしよう」

 コルトたちが売りに来る前から店を張り込んでいた集団、彼らは音もなくその場をあとにした。




「――殿下、例の物の入手経路が判明したとの報告が」

「……そうか。詳しく聞こう」

 ノーキンダムの裏町。コルトたちがいた場所よりもさらに治安が悪い区画の一部屋では怪しげな二人組が潜んでいた。

 殿下と呼ばれた男は室内にも関わらず、フードをすっぽりと被り蝋燭の光が微かに肌を明るく照らす。その照らし出された口元は楽しげに歪んでいた。

 さて、いよいよ前作で語られなかった部分が語られていきますが、あまり期待はし過ぎないように! 

 作者はそこまで有能ではありませぬゆえ。

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