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ええロリコン

 小春ちゃん似の魔法少女(仮)のハルちゃんと運命的な出会い方をした日の次の日、今日は水曜日、週のど真ん中だ。


 周りの人間は皆ダルそうな足取りで歩く中、僕は人よりもはるかに軽い足取りで大学へと向かっていた。なぜなら、ここ最近の魔法少女やら魔界やらと立て続けににより僕は大学へ行くことが少しづつ楽しくなってきている。


 徐々に僕の心が良い方向へと導かれているのか、不思議と寝付きも良ければ目覚めも良い、おまけに腹がよく減るようになったし、よく食べるようになった。


 そんな僕は午後から始まる授業までの間、大学公園で時間を潰そうと公園内に設置された人通りの少ないベンチに座っていると、後方から聞き覚えのある関西弁が聞こえてきて僕はたまらず振り返った。


「あ、楼兄や」

「・・・・・・夏海」


 視線の先には夏海だけではなく秋葉ちゃん、そして昨日出会ったハルちゃんとフユミちゃんの姿もあった。


「何しとんのやこんな所で、もしかしてまた変な事考えとったんか?」

「か、考えてないって」


「んー?その動揺の仕方は考えとったな、しかもこんな人のおらん所で・・・・・・」

「止めろ夏海僕を変な人間に仕立て上げるなって」

「あははは」


 そんなやりとりをしていると、秋葉ちゃんが本を抱きながらチョコチョコと近づいてきた。


「あ、秋葉ちゃん」

「こ、こんにちは」


 夏海とは打って変わってなんとも礼儀正しく、そしてなんと良い子なんでしょう、将来子どもを授かることが出来るのであれば秋葉ちゃんみたいな子がいい・・・・・・


「こんにちは」

「今日も良いお天気ですね」

「あ、あぁ、そうだね」


 当り障りのない会話を展開してくる秋葉ちゃんに可愛さを感じつつもそんな僕と秋葉ちゃんとのやりとりに夏海は何やら不思議そうに見つめ、腕を組んで唸っていた。


「どうしたの夏海ちゃん」

「・・・・・・なんやアキから話しかけるなんて珍しいな?」

「そうなの?」

「せや、あれもしかしてアキ」


 夏海がからかうように秋葉ちゃんをつつきながら言うと、秋葉ちゃんはブンブンと首を横にふった。

 あぁ、もしかして僕のことを慕ってくれてる事について話してるのかな?そこは少し照れてくれたりするとお兄さん的には嬉しいんだけどな・・・・・・なんてのんきなことを考えていると目がさめるような冷たく鋭い声に僕は思わず姿勢を正した。


「夏海ちゃん、秋葉ちゃんその人と知り合いなの?」

「せや、楼兄、いうてロリコンなんや」


 そんなフユミちゃんみたいな子に一番聞かれたくない言葉を平然と言う夏海に僕はすかさず否定した。


「違うっ」

「ろ、ロリコンさんなんですかっ」


 そしてすかさず僕の事を疑う秋葉ちゃんに、もうこのやりとりは彼女たちに出会う度に一生続くんじゃないだろうかと心配していた。


「ち、違うよ秋葉ちゃん、僕君らに何にもしてないでしょ?」


 大体「ロリコンさん何ですか?」って、全く最近の子どもはネットが普及したせいでなんでも知ってるんだな、それにネットに存在してるロリコンなんてワードは危険なものしかないだろ、大丈夫かこの子たちは?

 そして、そんな秋葉ちゃんは僕の言葉に少し安心したように胸をなでおろしており、冷たい目つきの少女は僕の顔をじっと見つめていた。


「お二人は、その方のことをよく知ってるんですか」


 冷たい目付きの少女は僕をじっと見つめそう言った。


「知ってるいうか、楼兄が勝手に近寄ってきた」

「それはロリコンですね」

「せやろっ」


 そう言ってピースをしながら僕に満面の笑みを見せてくる夏海は小悪魔とは言えないほどのクソガキだった。


「あ、せやこの二人は桜木さくらぎ 春風はるかぜちゃんと白樺しらかば 冬美ふゆみちゃんやで」

「・・・・・・春風ちゃんに、冬美ちゃんね」

「ちょ、ちょっと夏海さん勝手に人の名前を見ず知らずの変態に教えないで下さい」


 冬美ちゃんは夏海に掴みかかりものすごい形相で怒り始め、そんな冬美ちゃんに夏海は驚いた様子で動揺していた。


「な、なんで名前教えたらアカンのや?」

「悪用されます」

「そうなんか?なぁ楼兄うちらの名前でどうやって悪さするんや?」

「僕に聞くなよ、冬美ちゃんに聞けよ」

「見てください夏海さん、私の名前を臆すること無く平然と、まるで父親か兄弟、あるいは親友のように呼んできたじゃないですか?」

「そら、うちのこともいきなり呼び捨てしてくるくらいやからなぁ」


 夏海、それはお前が自分から呼び捨てで良いといったからだろ、しかし、それにしても相当嫌われてるよな僕、まぁ当たり前っちゃ当たり前かもしれないけど・・・・・・


「それで、そんな方と夏海さんはどうして仲が良さそうにしてるんですか?」


 冬美ちゃんは夏海から離れ少し落ち着いた声色でそう尋ねた。


「へ?」

「ロリコンと言ってる割には近くに駆け寄ってまるで友達のように」

「それは・・・・・・あっ、ロリコン言うてもええ方のロリコン、楼兄はジュース奢ってくれるしうちの事褒めてくれるし、ええロリコン」


 そろそろ本気で夏海の口を閉じさせたいくらい何度もロリコンという言葉を吐く彼女は、確かに僕に対しての警戒心は持っていないようで、いわゆるええロリコンというやつと認識されているらしい。

 しかし、問題はあの冷たい目つきを送ってくる冬美ちゃんだ、最初に合った時からどうにも近寄りがたい雰囲気と僕みたいな年上の人間を信用してないような目。


「夏海さん、そんなの汚い大人が子どもをだます常套手段ですよ、子どもだからもので釣れるとでも思ってるんでしょう?」


 そう言って僕を睨みつけてくる冬美ちゃんにたまらず視線を逸らしてしまった。


「フユ、そない怖い顔すんなや」

「してません、これが普通です」

「これが普通て、ハルの前やったらニコニコのくせに」


 夏海がからかうようにそう言うと冬美ちゃんは少し表情を崩し、顔を赤らめ始めた。


「し、してませんっ・・・・・・それより、大事が話があるので場所を変えましょう、こんな危なそうな人がいる所で話なんて出来ません」

「せやから楼兄は悪い奴とちゃうんやって」


 そう言って一言も喋らなかった春風ちゃんを連れて冬美ちゃんは僕の元から離れていき、その姿を追いかけるようにして夏海、そして秋葉ちゃんは僕の元から離れていった。

 しかしそんな中、秋葉ちゃんだけが突然振り返ったかと思うと僕のもとに走ってきた。


「あれ、いかなくていいの?」

「あ、あの、今日図書館に行きますか?」

「え・・・・・・あぁ、別に今日は行こうとは思ってなかったけど」

「そう、ですか」


 何やら秋葉ちゃんは少ししょんぼりとした様子でうなだれた。

 しまった、何を普通に用事がないとか言ってんだ僕は、ここは無理やりにでも図書館に行く用事を作って少しでも魔法少女の情報を集めたほうが良いに決まってるのに。

 そしたら秋葉ちゃんと仲良くなってゆくゆくは友情が芽生えたりしてそれで魔法少女のこともうっかり話しちゃったりして・・・・・・


「いやっ、やっぱり行くかな」

「本当ですか?」

「そうそう、実は小説だけじゃなくて新しいジャンルにも挑戦してみたいから図書館の中を見て回るかもしれない」

「わぁ、あの、私も後で行きますよかったらおすすめの本を紹介します」

「え、でも・・・・・・じゃなくて本当?」

「はい、みんなとのお話がおわったらすぐに図書館に向かいます」


 そう言うと秋葉ちゃんは少し笑顔を見せながら先に向かったみんなの元へ転けそうになりながら走っていった。

 おいおい、上手く行きすぎてそろそろ怖くなってきた、その内とんでもないしっぺがえしが来るとか今度こそ交通事故に合うとかないだろうな?

 そんな心配をしながらも僕は目先の秋葉ちゃんとの図書館での出会いを優先して軽い足取りで図書館へと向かった。


 場所は移って図書館、僕は今ひたすら図書館内を歩き回りながら秋葉ちゃんが来るのを今か今かと楽しみながら待ちわびている。

 なんだかんだ言いながら魔法少女の中で初めて出会い、そして、中々好印象を持ってくれている彼女は僕の中で今一番魅力的な女子・・・・・・いや、魅力的な観察対象である、彼女ならば案外簡単に魔法少女の情報が聞き出すことが出来るだろう。


 理由は勿論、彼女はとても真面目でおしとやか、夏海に比べるとかなり楽に話しを進める事が可能だからだ、つまり、今から彼女と会うことは魔法少女の全てを解明することが出来るかもしれないという魔界のために必死に試行錯誤する魔王の役目であり断じて個人的趣味で彼女に会うことを楽しみにしているわけではない。

 そう心に言い聞かせながら僕は一体誰に釈明しているのだろうと考えていると、いつの間にか僕の目の前には息を切らした秋葉ちゃんの姿があった。


「秋葉ちゃん」

「ごめんなさい遅くなってしまって」

「いや、そんな謝らなくても良いよ、それより大事な話とやらは大丈夫だったの?」

「それは・・・・・・」


 秋葉ちゃんがそう言いかけた時、突然関西弁で「大事な話はもう済んだで」という声が聞こえてきて僕は思わず表情を曇らせた。


「この声は・・・・・・」

「うちー」

「夏海」

「何やその辛そうな顔、トイレでも我慢しとるんか?」

「してない、こんな顔になる理由がトイレだとしたら夏海はトイレっていうことになるな」

「な、なんでうちがトイレやねんっ」


 僕のその一言で少しヒートアップした僕たちはまるで同い年の喧嘩のように顔を近づけ睨み合うと、それを引き裂くように秋葉ちゃんが僕達を叱りつけた。


「図書館では静かにして下さいっ」


 人差し指を立てながら少しムスッとした表情でそう言った秋葉ちゃん、僕と夏海は彼女に言われるがまま口を閉じ、近くにある席に静かに腰を下ろした。


「それで、夏海はどうしてここにいるんだ?」

「なんや、うちが図書館に来たらあかんのか?」

「別に悪くないけど・・・・・・」


 悪くないけど、せっかくのアキはちゃんとのとても静で微笑ましい時間を夏海が来たせいでぶっ壊れたんだよ。


「で、夏海は何しに来たんだ?」

「本探しにきた」

「夏海が?」


 僕が疑い深くそう尋ねると夏海は顔をムッとさせた。


「ほんまやっ」

「なんて本?」

「・・・・・・」


 夏海は何も考えてなかったのか目をキョロキョロとさせながら挙動不審な様子を見せた。


「そらみたことか」

「ち、ちゃうでちゃんと探しに来たんや」


 そう行って夏海が適当に本棚から本を抜き出して僕に見せつけてきた。そこには「性のしくみと働き」と書かれている題名。


「へー、なかなか良い本を選んだな」

「や、やろ?」


 そう言って夏海は自らが取った本の表紙を見ると顔を真赤にしたかと思うとすぐに本をすぐに本棚へと戻した。


「何で戻す?」

「い、いやなんというか・・・・・・」

「ちゃんとそういう本を読んどいたほうが良いぞ」

「へ?」

「親はめったにそういうことを教えてくれないだろう、それにちゃんと夏海とかみたいな小学生用に書かれてる内容の本みたいだし毛嫌いせずに見たほうが良い」


 我ながら真面目すぎるような事をいっているような気がするが、小さい頃から母親に女性について教わってきた僕としてはこうした本を子どもたちが読むことは非常に大切だと実感している。

 決して恥ずかしいことでもいけないことでもない、人間として性について学ぶことは最低減必要な義務であると僕は認識している。しかし、こうした年頃の子は性についてはかなり抵抗があったり面白おかしくとしか認識でいないというのが現実だから夏海がこういう反応するのは仕方ないのかもしれない・・・・・・という前置きは置いておいてこんな風に少し真面目な対応でもしておけば夏海みたいな子は大人しくなるだろうと踏んでいたが見事に的中したようだ。


「う、うん・・・・・・」


 なんというか随分とおとなしくなってくれた夏海は静に椅子に座り、隣の秋葉ちゃんも僕と夏海とのやりとりに気まずさを感じてか本で顔を隠しながら僕のことをチラチラと見つめてきた。

 そんな一時のしずかな時間、こんな時間も悪く無いと、魔法少女と図書館で静かに本を読めることが出来る喜びを噛み締めつつ先ほど見つけた魔法少女が主人公の本を読んでいると、夏海が何やら僕のことを見つめてきた。


「なんだ?」

「何読んでんの?」


 夏海は最初に出会った時よりも随分ともじもじとした様子でそう尋ねてきた。


「小説」

「どんな?」

「なんか、魔法少女が出てきて少年と旅に出る話」


 夏海は魔法少女と聞いた途端に真顔になった。


「魔法少女?あんなんお伽話や、あんなもん全然ええもんとちゃう、それやったらうちは野球やっとる方が全然ええわ」

「ちょ、ちょっと夏海ちゃん」


 秋葉ちゃんはまるで僕に聞かれないように夏海に顔を寄せてそう言った。

 この反応、僕はわかっていて魔法少女が出てくる小説を読んでいると言った、彼女たちがどれだけのこの言葉に反応してくれるかを確かめるため、それだけを望んで僕は彼女たちに魔法少女という言葉を聞かせた。


 思惑通り夏海は魔法少女という言葉に敏感に反応した。


「別にええやろうちらは巻き込まれたんや何もそんな隠さなあかん事はない、うちらはなんも悪くないんや、悪いんは全部・・・・・・」

「夏海ちゃんっ」


 夏海の言葉を遮るようにそう言った秋葉ちゃんは僕の顔をじっと見つめてきた。そして、そんな彼女の様子に気づいた夏海は僕の顔を見たかと思うとにやにやと笑顔を見せつけてきた。


「あぁ、せやな楼兄の前でこんな話したら興奮してロリコンの本性をさらけ出すかもしれんな」

「な、何?」

「言うてもうちらみたいな子が魔法少女だの何だの話してたら、ロリコンなら興奮必死なんやろ」


 確かに、そんな状況をリアルで遭遇したとしたら、その道の者なら必ず聞き耳を立てて期待することは間違いない、それが例え三次元であろうと、いや、むしろ三次元のほうがかなり興味をそそられ興奮するかもしれない・・・・・・なんて事を考えていると、秋葉ちゃんが心配そうに僕を見つめてきた。


「やっぱりお兄さんってロリコンさんなんですか?」

「ち、違うよ、そんなわけあるはずがないのでございますのことよ?」

「そ、そうですよね・・・・・・ごめんなさい」


 錯乱しながらそう答えると素直に信用してくれた秋葉ちゃんは安心して胸をなでおろし隣では夏海がクスクスと笑いをこらえていた。

 しかし、僕をキッカケに何やら気まずい話を断ち切った夏海だが、確実に人間界とは縁遠い事を話していることは僕にも分かった。むしろこんな話を聞いてしまえばもう彼女たち意外を魔法少女とは呼べないだろう。

 そんな思いを胸に今が彼女たちが魔法少女である証拠をつかめるチャンスだと思った僕は思い切ってもう少し掘り下げてみようと思った。


「魔法少女にやたらと食いついてるけど、そういう遊びが流行ってんの?」

「「・・・・・・」」


 僕がそう言うと、二人はきょとんとした様子で互いに顔を見合わせたあと、僕の顔を見て楽しそうに口を抑えながら笑い始めた。


「何言うてんねん楼兄、ほんまおもろいな」

「な、何が?」

「そんなおもろい楼兄に免じてうちら秘密をおしえたるわ」

「な、夏海ちゃん」


 秋葉ちゃんは相変わらず夏海の口の軽さに慌てている様子だった。


「大丈夫やこんな話誰も信用せんやろ」

「それは、そうだけど」

「実はな楼兄、うちら魔法少女やねん」

「・・・・・・どういうこと?」


「うちと、ここにおるアキ、それから後二人おるんやけど四人で魔法少女やって世界平和のために戦っとるんやで」

「へー、じゃあ変身したりして悪奴らと闘うんだ」

「せや」

「どんな感じで変身すんの?」


「アキ、見したりっ」

「へぇっ、夏海ちゃん、私そんなのできないよ」

「何でや、変身する時アキが一番かわええやんか」

「ダメダメダメ」


 夏海ちゃんは秋葉ちゃんの手をとり無理矢理ポーズを取らせようとしており秋葉ちゃんは必死に声を押し殺しながら夏海ちゃんに抵抗していた。


「何もほんまに変身せぇ言うてへんやん、ポーズを取るだけやって」

「それでもダメ」

「・・・・・・じゃあ、秋葉ちゃんが無理なら夏海が見せてよ」


 僕がそう言うと夏海は秋葉ちゃんの手を話しぽかんとした様子を見せた後わなわなとしながら顔を赤らめた。


「はぁっ、何言うてんねんアホ、ロリコン、どっかいけっ」

「そこまでいわなくても・・・・・・まぁ、変身どうのはいいけど4人は仲良いの?」

「・・・・・・仲ええかは別にして同じ魔法少女やしそれなりには、な、アキ」

「う、うん」


 それなりにって、魔法少女といえば日常物だろ、確かにバトルしてる姿もかなり可愛いんだけど、やっぱり日常を面白おかしく過ごしている所に良さがあるというのに、これじゃ彼女たちのキャッキャウフフな日常を覗き見ることが出来ないじゃないか。


「あんまり仲良くないんだ」

「ま、うちら魔法少女やめたからそうなっても仕方ないと思うけど」


 そんな夏海の一言に僕は思わず大声で驚きの言葉を口にすると、秋葉ちゃんはムスッとしながら僕に向かって一本指を立てて「しーっ」と言ってきた。


「ごめん、でも、やめたってどういうこと?」

「うちら、もう変身できひんようになってもうた」

「なんで?」

「何や知らん、楼兄の仲間みたいな変態野郎に服脱がされてもうたらもう変身できひんようになってもうた」

「ぼ、僕の仲間って・・・・・・」


 僕のせいだ、なんてことは言えず僕はただライト言っていた魔法少女としての力を失ったという言葉はとても的を得た言葉だったことに驚いていた。


「んで、さっきもう一度魔法少女になれる契約しに行こう、いう話をしてたんやけどアキがウズウズしながら「私、この後用事があるから」とか言い出したたから、うちはアキを連れ戻しに来たら楼兄がおって今に至るいうことやな」

「それで、残りの二人は魔法少女になるためにどこかにいったって事?」

「せや、確か大学公園で待ち合わせとか何とか言うとったな、ま、あの二人はうちらと比べて随分魔法少女に熱心やから・・・・・・なーんて、おもろい話やったやろ楼兄?」


 そんな夏海の言葉を鵜呑みにした僕はすぐさま立ち上がり大学図書館を出てすぐさま公園の方へと向かうことにした。

 後方から何やら夏海の声が聞こえてきたような気がしたが今はそれどころじゃない、魔法少女である証拠が今まさに暴かれようとする絶好の機会、こんなチャンスを逃し出来ない僕は全力疾走で走り抜けた。


 僕は全力で走りながら小学生らしき姿を探していた。

 大学内を全力で走る男の姿に奇異の視線向ける学生達、そんな人々を尻目に僕は公園内に怪しい人がいないかを探してみた。

 しかし、何処を探してもそのような人物は見つからず、小学生の制服を着た春風ちゃんや冬美ちゃんといった姿も見付けることすら出来なかった。


 半ば諦めかけている時、遠くの方から僕の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 一体誰だろう?そう思いながら振り向くと、僕に向かって手を振る夏海がこちらに走ってきていた。

 おそらく僕が図書館を飛び出した後をすぐに後を追ってきたのだろう、しかし、夏海ちゃんの隣には秋葉ちゃんの姿は無く、彼女は息を切らしながら僕の元へとたどり着いた。


「楼兄ー」

「夏海」

「楼兄足速いわ」

「悪い、っていうかどうしたんだそんなに慌てて」

「いや、だって今から行ってももう遅いでって言おうとしたんやけど、なんや楼兄がめちゃくちゃ急いでいくさかい全然追いつかんかって」


 それを早く家とは思っていたが聞く前に飛び出した僕も悪いといえば悪いか。


「そうだよな、もうとっくにそんな待ち合わせ終わってるよな」

「せや・・・・・・もうほんま人騒がせなんやから」


 論より証拠、それが欲しかった僕にとってこの現実は非常に残念極まりないことだった、今目の前で息を切らしている夏海の言葉の言葉を信用して彼女たちのことを観察するのは悪くない、しかし、彼女は言った。


『ウチラはもう魔法少女をやめた』


 その言葉は聞いたことで僕が夏海という一人の少女に対しての興味をそがれることに繋がることはないが、今の僕を取り囲む状況からしてこれほど興味が失せる言葉はなかった。

 だからもしかするとこの言葉を聞いたからには、これからは彼女たちには関わらないほうが方が身のため・・・・・・いや、彼女たちのためになるかも知れない、そう思っていた。

 いや、そう考えるのが普通だ、いくら縦社会と言っても二十歳になろうっていう男と小学六年生が一緒にいても良い影響があるとは思えない、そんなことを考えていると、突然僕達の目の前に真っ白なスーツを着た男が現れた。


 なりだけを見ればホスト、しかしその顔立ちや体格を兼ね備えている男は僕の知っているホストというものの域をはるかに凌駕するほど優秀な外見をした美男子で綺麗に伸びた長髪金髪を見事にものにしたその姿はどこかの王子様と言われても疑う余地はないだろう。

 そんな白スーツの男を前に僕はただひたすらそんな嫌味を言ってやろうかと考えたが、まるで思い浮かばず「クソ野郎」と小さく呟くことしか出来なかった。

 そして、そんな白スーツの男は突然僕に顔を近づけてきて口を開いた。


「君たち、この辺りで二人組の女子小学生を見なかったかい?」


 そんな一言に僕は血の気が引いたように顔をひきつらせた。

 後ろで笑っていた夏海も何やら静まり返り真剣な表情をしていた。


「ん、知らないかい?」

「・・・・・・あんたもしかして」


 僕はもしかするとこいつが魔法少女の契約を行うものだと思い込んでいると白スーツの男は急にニヤリと笑い始めた。


「あぁ、自己紹介を忘れていたね私は神山、大学二年生だよ」

「同い年・・・・・・で、なんでその二人組を探してるんだ?」


 僕がうたがいの目を向けると神山はニッコリと微笑みかけてきた。


「それがね、実は魔法少女にピッタリの子たちでね、ぜひスカウトしようと思って追いかけてきたんだがどうにもこの辺りで見失ってしまってね」

「魔法少女って・・・・・・本気で言ってるのか?」

「勿論さ、魔法少女それは素晴らしい存在、神なんかよりも崇拝されるべきものであり保護しなければならない希少な存在・・・・・・そして私は今、その魔法少女らしき天使がこの辺りにいると聞いてやってきたのだ」


 何をわけのわからないことを、と思っていると夏海が突然僕の腕をひっぱってきた。

 そして、僕の腕を引く夏海はひそひそ話がしたいのか口元に耳に近づけてきて「うちらが初めて魔法少女になた時と全然関係ない奴や」よささやいた。

 くすぐったい気持ちを必死に押し殺しながらそんな言葉をきいた僕はひとまず神山という奴が全く関係のないとわかったのだが、だとすればこいつは一体何者だ?


 もしかしてただの魔法少女趣味で僕と同類の人間、もしくは夏海が知らないだけでホントは魔法使いの契約を行いにきた仕事人?

 何はともあれ当事者であった夏海が言う事を信用すべきだと判断した僕はなんとも名残惜しいが目の前にいる神山とは関係を断ち切ることにした。


「し、知らないな・・・・・・というわけでじゃあ、ほら夏海行くぞ厄介なことになる前に」

「せ、せやなー」


 僕たちはまるで打ち合わせしたかのように下手くそな芝居を売って立ち去ろうとしたのだが、神山がぼくの腕を掴んできた。


「ま、待つんだ君たち」

「な、何だよ?」

「そこの活発そうな君も魔法少女にぴったしの人材だ、どうだ私の天使にならないか?」


 そう言うと夏海は全身で身震いした後「ロリコン二人を相手取るのは、うちにはまだはやーい」と言いながらどこか遠くへ走り去っていってしまった。


「あーあ、さすがの夏海もこたえたか」

「・・・・・・ちょっと、君」


 神山は先ほどまでににやにやとした顔つきではなく僕のことを真剣な表情で見つめてきた。

 そんな神山の顔に実は本当の狙いは僕だったり、なんてことを想像したが、なんだか気持ち悪くなってきたのですぐにそんな妄想は吹き飛ばした。


「何?」

「少し私と話をしないかい?」

「なんで?」


 僕はあからさまに嫌な顔をして神山から距離を取ると、彼はとても残念そうな顔をして僕ににじり寄ってきた。


「いいだろう、決して悪い話じゃないさ」

「悪く無い話?」

「そうさ、君からはどうにも同じ匂いがするんだよ」


 そう言って神山は僕に近づき匂いをかぎ始めた。


「な、何してんだよ」

「君からはロリコンの匂いがする」

「な、何故バレたっ・・・・・・じゃなくて違う、僕はロリコンじゃない、断じて違う」

「そうなのかい、残念だな、せっかく同士ならコハルン談義でも出来るかと期待したんだが」

「こ、コハルンッ?」


 ・・・・・・僕は感動していた。


 まさかこんな男が魔法少女コハルンのこと知っていて、しかもコハルン談義をしようと誘ってくるなんて、ゆみ野も思わなかった、それ程僕は感動している。


「そうさ、私は世間一般で言うロリコンというやつらしいから、その道を往くものなら絶対に欠かすことが出来ない「魔法少女コハルン」という存在ついて熱い談義を繰り広げられると思ったのだが。違うなら仕方がないか」

「いや、待て神山」

「なんだい?」

「話しあおうじゃないか?」


 この神山という男、なりに反して想像以上にオタクらしく、事細かに自らのコハルン愛をさらけ出してきた、更にこの神山という男、自らを神などと自称しており、しかも自分より年下の女の子に対して「天使」という呼称を用いて呼ぶという気持ちの悪い癖があるようで、事あるごとに天使天使と連呼していた。

 しかし、そんな変人ではあるが大学生活で初めて出会うことの出来た同士に、僕は心から喜び普段見せることのない笑顔を精一杯作りながら神山と魔法少女談義をし尽くした。


 そんな運命的な出会いに感謝しつつまた再び顔を合わすであろう神山とは一旦別れ、結局春風ちゃんと冬美ちゃんを見つけることは出来なかったが神山という同士を見つけられたことにホクホクルンルン気分でで帰っているとフードに入っていたチクマが突然キーキーと鳴き出し、さっきまでの良い気分は何処へやら、僕はあからさまに嫌な顔をせざるをえなくなってしまった。


「はいはい、何ですか?」

「魔王さまっ」


 それはそれは大きな声で僕の事を呼ぶライトに僕の鼓膜は危うく破れそうになった。


「なんだよ、でかい声出すなって」

「すみません魔王さま、しかしそれどころではなくてですねっ」

「っていうかなんか騒がしくない?またキルティアさんと喧嘩でもしてるの?」

「ち、違うんです、とにかく魔王さま召喚させていただきます」

「は?ちょっと待って今外だからっ」


 と言いつつも人っ子一人いない道の真中で僕はいつもの様に底なし沼に入るように魔法陣の中へと引きずり込まれていってしまった。


「おいおい・・・・・・」

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