着任式
さて、週をまたいで今日は月曜日、本日も魔法少女を探しにでかけよう、そんな珍しく寝起きが良いノリノリな気分で目を覚ますと、僕の目の前には以前見たことのある景色がひろがっていた。
やたらと広い部屋に豪勢な家具、そして敷布団では絶対に味わことが出来ない包み込まれるようなフカフカとした感覚、間違いない、僕は再び魔界に召喚されたようだ。
そんなまだ寝起きで頭が動いていない状況の中で、突然部屋の中に扉をノックする音がなりひびいた。
すると、ゆっくりと扉が開かれたかと思うと、ライトが恐るおそる顔をのぞかせ、僕の顔を見るなり驚いた顔をしてすぐに頭を下げた。
「これは、おはようございます魔王さま、ごきげんはいかがですか」
「最悪の気分」
ライトの質問に無愛想な態度でそう告げると、ライトはまるで世界の終わりを目の当たりにしたかのような表情をした。
「な、なんと、ではいまからこのライト、魔王さまをいやすためになんでも致します、どうぞなんなりと」
「とりあえず、なんで僕はまたここに来てんの?」
「それは・・・・・・」
「ライト、そこんところ詳しく聞かせてよ」
「も、申し上げることは出来ません」
なんだ、教えてくれないのかいつもなら簡単に何でも話してくれそうな感じだったのに意外にこういう所もあるんだな、まぁいいけど・・・・・・
「魔王さま」
「なに?」
「私に付いて来てくださいませんか」
「良いけど、なんかそういうの多くない?もっとちゃんと説明してよ」
「申し訳ございません」
そう言われ僕はライトに言われるがままついていくことにした。
相変わらず広すぎる廊下と歩いていると、初めて僕が魔界に召喚された場所である広間の大きな扉の前についた。
そしてライトが僕のためにその大きな扉を軽々と開いた先には残りの四天王が跪きながら待っていた。
長く続く真っ赤なカーペットの上を僕はライトに連れられながら歩いて豪勢な椅子の前に案内された僕はそのままライトに促されるがまま着席すると、ライトを除く四天王が立ち上がったかと思えば、僕の目の前まで歩み寄り、そして再び跪いた。
「これより、魔王さまの着任式を執り行う」
「え、着任式?」
混乱する僕をよそ目にライトは何やら難しい言葉を叫びながら僕の横で凛とした表情を見せている。
そんなよくわからない着任式とやらが進められる中で、突然僕の目の前に以前被った王冠がジーテンベルグさんの手によって運ばれてきた。
そしてその王冠を僕の頭にずっしりと乗せてきたかと思うと四天王全員が拍手をした、たった四人とは思えないほどの拍手はまるでこの広間に大量のひとが 集まっているような錯覚を覚えるほどうるさく、そして祝福してくれていた。
「魔王さま電報を預かっております、どうぞ」
「電報?」
そう言われ手渡されたのは何やら毒々しい色の封筒にまるで血のような封蝋をされた手紙を渡された僕は恐る恐るその電報とやらを開くと、中から一枚の紙が入っていた。
その紙には何やら可愛らしい丸文字で僕の魔王着任を祝う言葉が書かれており、不思議と心地よい甘い香りが香ってきた。
そんな、可愛らしい文字を見て、もしかしたら女の子からかも・・・・・・なんて内心ドキドキしながら読んでいた僕は、ふと、この電報の差出人が気になった。
僕はジーテンベルグに差出人について尋ねてみたが「魔王着任を祝う方からです」としか言ってくれず、なんだか少し気持ち悪かった。
だが、別段気にすることもないだろうと思った僕は手紙読み終えると、すぐに大切にポケットの中にしまい大切に保管することにした。
そんな電報で幕を閉じることとなった着任式。
さて、次にはなにが待っているのか、なんて事を考えていると、ライトが突然手をパンパンと叩いた、そんな音に少し驚きながら辺りを見渡していると、突然魔王室入り口の大きな扉が開かれた。
そしてその扉から出てきたのはまるでコックのような姿をしたゴンゾーが立っており、馬鹿でかいテーブルをコロコロと転がしながら近づいてくる、一体何が始まるんだろうと思いながらテーブルの上をよくよく見てみると、そこには僕が今までに見たことのない禍々しい色のものがたくさん並べられていた。
「ライト、これは?」
「実は私達四天王全員で、一人づつ魔王さまの着任を祝おうということになりまして、それで一番手はゴンゾーの手料理で喜んでいただこうかと思っているのです」
「へ、へぇー」
「どうですか魔王さま、見渡すかぎりのごちそうの山を」
そう言ってライトがご覧あれといわんばかりの動作をした後、テーブルに並べられたものを眺めると、そこには色とりどりの食材が並んでおり、そのどれもが果たして本当に食べ物なのだろうかと疑いたくなるほどのものばかりだった。
「ライト、これがご馳走?」
「はい、私が見てもかなり豪勢な部類に入る食材ばかりだと思います、さすがはゴンゾーといったところでしょうか?」
本気で言ってるのか、明らかにまだ生きているようなものから幼虫のようなものまで、まぁ食えなくはなさそうもあるが、もし幼虫が一番美味しいなんてことになったら僕はどうすれば良いんだ?
「もしや、魔王さまお気に召しませんでしたか?」
「いや、そういうわけじゃないけど・・・・・・」
そういうわけじゃないんだけど、いくら高級品ばかりといえどこんなにも禍々しいと食べる気なんて全く起こらない。
そんなごく当たり前なことを考えていると、何やら先ほどから妙にはしゃいでいるキルティアの姿が目に入った。
「いやーんゴンゾー、あんたこれ取ってきたの?」
そう言ってキルティアさんが手に持ったのは、僕のいる世界で言う所のドリアンを紫色に着色したような明らかに口に入れられないであろう食べ物、そんなものをキルティアはがっしりと握って高々と掲げていた。
「おいおい、それは俺が魔王さまのために取ってきたやつだぜ」
「えー」
ゴンゾーは頑なに拒否し続け、そんなキルティアはしゅんとしていたが、なにか思いついたのか急に指を鳴らしたかと思えば僕のもとに駆け寄ってきて、手で掴んでいる紫色の食べ物をを見せつけてきた。
「ねぇ魔王さま、半分、半分だけくださいませんか?」
「あ、あぁ全然、食べていいよ、他にもたくさんあるんでしょ、食べ物は」
「本当にっ?魔王さま、本当に私これもらって良いの?」
まるで小さな女の子のようにピョンピョンと飛び跳ねるキルティアさん。
「いいよ、食べて食べて」
「やったー大好き魔王さま」
そう言うとキルティアさんは僕の頬にくちづけした後、紫色のドリアンを美味しそうに皮ごと食べた。
どうやら味はとても濃厚で甘いらしくキルティアはとても幸せそうに味わっていた、良かった、一番やばそうなものを食べてもらって。
とりあえずせっかくゴンゾーが作ってくれたんだから後は適当に大丈夫そうなものを食べたり、腹がいっぱいだかなんだか言って適当にやり過ごそう。
そんな僕たち五人は仲良く食事にありついた、驚く事にあれほどあった大量の料理がいつの間にか姿を消し、皿の上にはソースや骨しか残っておらず、改めて魔界の者というものは人間とはかなりかけ離れていることを実感した。
「いやーすげーくったぜ」
ゴンゾーは腹を叩きながらそう言って満足気にしており、キルティアさんやジーテンベルグさんもとても満足した様子だった。
「魔王さま、あまり食が進んでいないように思ったのですが大丈夫でしたか?」
ライトは何やら不安げに僕の顔を覗き込み、そんな事をきくと、ライトを除く四天王が一斉に僕の顔を見た。
「お、美味しかったよ、ほら、なんだっけあの白身の魚みたいなやつすごい美味しかったよ、それに他のだって人間界じゃ食べられないようなものばかりですごい新鮮だったしゴンゾーさすがだね、あはは」
「おうよ、魔王さまに喜んでもらったなら俺も嬉しいぜ」
「心配しすぎなのよバカライト、魔王さまだってこういってるじゃない、ねぇ魔王さま」
「あ、あははそうだな」
「そ、それならいいが・・・・・・」
ライトは少し腑に落ちなさそうな顔をしていたが、すぐに元の凛とした顔つきに戻り気合を入れるためか両手で頬を叩いていた。
そんな食事が終わった頃、ゴンゾーはすぐに大きなテーブルを片付け始めていると、突然ジーテンベルグさんが近づいてきた。
どうやら次はジーテンベルグさんが僕のお祝いをしてくれるようだ、一体何をしてくれるのだろうと期待しながら待っていると僕の顔ぎりぎりまで近づいてきて、今にも唇と唇が当たりそうになった僕は思わず飛び退いた。
「ちょ、ちょっとジーテンベルグさん」
「はっ、これは失礼しました、老眼なもので距離感がつかめずに・・・・・・ほっほっ」
楽しげにわらうジーテンベルグさんは確かに悪気はなさそうだがどうにも ライトにしろゴンゾーにしろどうにも怪しい部分があるからこの人も・・・・・・なんて思ってしまった。
「それで、魔王さま」
「何?」
「どうか、これを受けとって下さい」
そう言ってジーテンベルグさんが手渡してきたのは、小さな双葉が芽を出している植木鉢。
「あ、ありがとうございます?」
「魔王さま、これは魔界に一本しか存在しない木の苗木でございます」
「そ、そんなすごいものもらって良いの?」
「えぇ、これを持つものにふさわしいお方なのですから」
「ふさわしいお方・・・・・・」
「そうでございます、それではどうかお楽しみください魔王さま」
そう言うと、腰をトントンと叩きながらジーテンベルグさんは大きな扉をかるがると開き出て行ってしまった。本当ジーテンベルグさんって謎に包まれた人だよな・・・・・・いつもどこで何してるんだろう?
「さぁ魔王さま、次は私の番よ」
と、いつの間に背後に回ったのか、キルティアさんはセクシーな声で僕の耳元で囁いたかとおもえば、僕の目の前が突然真っ暗になり、たまらずパニックになると、キルティアさんは僕の手を引いて何処かへ連れて行こうとした。
そんな右も左もわからず慌てる僕に、キルティアさんは「心配ないわ」と僕に優しくささやき、そんな言葉に少し聞き惚れて安心した僕は大人しく彼女に連れられるがままついていくことにした。
「魔王さま」
「キ、キルティアさん、そろそろ目隠し外してもらえませんか?」
「ダメよー、これからとっても良いことをうするんだから」
と、とっても良いこと?男と女が部屋でうすることといえば、それはもう色々もうそうしちゃって期待してもよいってことなんですよね?
そんな事を思っていると、突然うつ伏せに倒されたかと思えば、何やら腹部にまるで自宅の敷布団のようなすこしやわらかたい感覚が伝わってきた。
そして腹部の感触を考察していると、今度は腰のあたりに柔らかく生暖かい感覚を覚えた僕は少し心地よく感じると共に不安な気持ちになった。
「き、キルティアさん一体何をしてるんですか、僕は一体どうなってるんですか?」
「うふふ、秘密よ」
そんな色っぽい声を上げながらキルティアさんは僕の上半身を脱がしたかと思えば、少しひんやりと仕立てを僕の背中に這わせてきた。
「あら、魔王さま中々良い体してるのねぇ」
そんな視界を奪われた状況で、さらに背中に伝わる感触は僕の身体を小刻みに震えさせた。そんな僕の反応にキルティアさんはとても楽しそうに笑い声を上げた。
「どうですかー、魔王さま気持ち良いですか?」
「き、気持ち良いっていうか、何をしてるのかを・・・・・・」
「いいのいいの、魔王さまは私に身を任せておけば良いんです」
と、言いつつも今行っている行為はおそらくマッサージだと冷静に分析した僕は、キルティアさんに身を任せてしばしの幸せ時間を楽しむことにした。
「魔王さま、気持ち良いですか?」
「あ、あぁー、気持ち良いよキルティアさん」
キルティアさんが腰に乗っていること意外、基本的にはとても上手にマッサージをしてくれる彼女に、僕は思わず本音で答えると、キルティアさんはクスクスと笑いながら更に続けてくれた。
「うふふ、良かったわもっと良くしてあげますからね」
「はい、よろしくお願いしますぅ」
あぁ、なんだろう、やたらと上手いマッサージに僕の心と身体は今すぐにでも昇天してしまいそうな勢いだ、それに合間合間に「痛い所はないですか?」とか「ここはどうですか?」なんて聞いてくれたりして、たまらずきるてぃあさんのことが 愛しくていとしくて たまらなくなった僕は、病院でナースに惚れる気持ちとやらを少しだけ理解できるような気になった。
こうして色々心配されて気持よくしてもらったらいますぐにでも求婚してしまいたくなる、そういう気持ちになるのは何でだろう?
もしかして年上の余裕のある態度に好意を抱けるということは、僕がまだまともな人間だということを
示しているのかも知れない。
あるいは、男というものはそうやって女性に簡単にのせられる種族なのか、まぁ、気持ち良いしどっちでも良いや・・・・・・そう、キルティアさんと快楽に身を任せていると僕の意識はどこか遠くへと誘われるように飛んでいってしまった。
そんな、まるで天国にでも登った気分でいると、突然僕の意識はまるで天に昇ろうとする僕を引きずり込むようにドンドンとしたの方へと吸い込まれていく感覚に陥る、思わず目を覚ました。
どうやら目隠しはもう外されているようで、視界にはもう3度目か4度目になる見覚えのある天井が広がっており、僕はゆっくりと身体を起こした。
どうやらキルティアさんのマッサージが思いの外気持ちよかったのか、僕はいつの間にか寝てしまっていたみたいだ。
それに身体のあちこちがスッキリとしていて、肌もこころなしかつるつるになっている、キルティアさん一体あなたは何者なんだ?
しかし、ベッドから身体を起こした所で目の前にキルティアさんがいる様子は無く、おまけに人間界には戻れていない所を見るとまだ、僕は魔界にいて着任式のお祝いを受けている最中なのかもしれない。
すると突然部屋の中にノックの音が鳴り響いた。
僕は反射的に開かれた扉の音に返事すると、ゆっくり扉がひらかれたかと思えば台車を押すライトの姿が見えた。
「ライト」
「魔王さま、おめざめになりましたか」
「うん、目覚めたは良いけど、どうした?」
「お次は私の番でございますので、おもてなしをと思いまして」
あぁ、最期はライトなのか・・・・・・
僕はライトからの着任祝いを受けるべくベッドから立ち上がり、机に何かを並べているライトの側によると、机の上にはティーカップと、大皿いっぱいのクッキーのようなお菓子が置かれていた。
よかった今度はまともそうなものを食えそうだ。
「これ、ちゃんと食べられる奴?」
「勿論でございます、人間界ではクッキーと呼ばれているものだと知ったのですが」
「え、クッキー知ってるの?」
「はい、魔法少女は憎き存在ですが、人間界にはとても興味があります。ですので魔界の湯で度々拝見しては人間界のお菓子というものを勉強しています」
「すごいじゃん、じゃあ他にも何か作れんの?」
「は、はいホットケーキなるものも作ることが可能です」
思わぬライトの特技に僕は感動のあまりライトを褒めると、彼は今にも泣き出しそうな顔をしたかと思えば急に僕の目の前で跪いた。
「どうしたの?」
「私は魔王さまのためあらば何でも致します、どうぞこれからも私共をよろしくお願いいたします」
「あ、あぁ、そんなにかしこまらなくても褒めてるんだから底は笑顔でえへへ位で良いから」
「笑顔でえへへですか?」
「うん、笑顔でえへへ・・・・・・それでライト、話っていうのは何?」
僕は皿に盛られたクッキーらしき食べ物を口にしながら聞いた。
「はい、実は魔法少女監視の様子はいかがかと思いまして」
「あぁ、魔法少女ね」
「はい」
「まだ確信したわけじゃないけど、おそらく魔法少女らしき子は二人見つけた」
「魔王さま素晴らしいっ」
ライトは満面の笑みで僕に向かって拍手をしながらそう言った
「でも後の二人はまだ見つかってないし、仮に見つけた子たちが本当に魔法少女かもまだわかってないからなんともいえないんだけど」
「いえいえ、目星をつけただけでも素晴らしいと思います」
「そ、そうかな」
「はい、今後も魔法少女共の監視をよろしくお願いいたします」
そういってライトは深々と頭を下げて僕に頼み込んできた、まぁ、魔法少女をこれからも監視できるってだけで感謝したいのはこっちの方なんだけど。
「では、そろそろ本題に」
ライトはそう言うと、対面に座っていたはずの椅子を突然持ち上げたかと思えば、僕の隣に椅子をおいて、少し照れながら椅子に座った。
「なに、本題って?」
「はい、私魔王さまとどうしても仲良くなりたくてですね、具体的にはもう少し親近感をもちたいというか、もっと魔王さまの事をしって魔王さまに尽くしたい所存でありますので、ですからもう少しお話をしませんか?」
「は、話?」
「はい、魔王さまの趣味や好きな食べ物、魔王さまの全てを私は知りたいのです、それこそが魔王さまの側近である私の勤め、これは魔王さまにご満足頂くための必要なコミュニケーションなんです、決して個人的な要望ではございません、全ては魔王さまを満足していただくための必要最低限なことなんです」
そんなに念を押すように言わなくても大体言いたいことはわかるけど、どうして僕の隣にまで来て話を聞く必要性があるんだろうか?
「別にいいけど、何を話せば良いの?」
「魔王さまのお好きな食べ物は何でしょうか?」
「食べ物?」
「はい」
「でも、ここってまかいだから 人間界の食べ物はないからどうしようもないと思うんだけど」
「確かに、では好きな料理はいかがでしょうか、先ほど食べていただいたクッキーとやら同様に真似て作ることは可能ですが?」
「なるほど、じゃあ・・・・・・」
そんな、ライトからのちょっとした僕へのインタビューが始まると、僕はその後、長時間に及ぶ質疑応答を続け、ようやく一休みを入れる頃には僕は机の上でぐったりとしながら条件反射的に適当な受け答えをするほど疲れきっていた。
「・・・・・・なるほど、魔王さまの情報は大体理解出来ました、今後の参考とさせていただきます」
「あ、はい」
僕がぐったりしていると、ライトはようやく僕の異変に気づき、心配そうに僕を見つめていた。
「大丈夫ですか、魔王さま?」
「あのさ、ライト」
「はい」
「そろそろ返してくんないかな」
「魔王さまもうお帰りになるのですか?」
「だって、もう結構な時間をここで過ごしたろ?」
「それはそうですが・・・・・・ここは設備も充実していますので、お泊りになるのはいかがかと」
「いや、また明日から魔法少女を観察しなきゃいけないし、帰るよ」
確かに、この魔界での豪勢な生活も悪くはないが、もともとそんなに豪勢なものに執着があるわけではない、しかし、僕にとってこの空間は決して良い環境とは言いがたく、むしろ僕は自宅に戻ってゆっくりと 一人薄っぺらい布団で寝たい。
それに早く魔法少女達と仲良くなって小春ちゃん似の子と仲良くなりたいし・・・・・・
「そうですか」
ライトは残念そうにうなだれた、しかし、そんな様子に心を打たれている余裕すらない僕は、いち早く人間界にかえしてもらいたい気持ちでいっぱいだった。
「ごめん、またこっちにも来るからさ今日の所は・・・・・・お願いっ」
僕がそう言うと、ライトはようやく決心がついたのか、大きく頷き顔を上げた。
「そうですね、私としたことが魔王さまの意に反するようなお言葉を、大変失礼いたしました」
「いやいいよ、あと、ここに来るときに突然飛ばされてるのはどうにかならないの?」
「失礼しました、実は今回は着任式ということで、魔王さまに驚いてもらおうかと思って突然お越しいただいたのです」
「なるほど」
「今後は連絡用悪魔族を通して事前に魔王さまにお伝えします」
そんな四天王たちの素顔が少し見え隠れした着任式はようやく幕を閉じ、僕はライトが準備した魔法陣でようやく自宅に帰宅することが出来た。
そんなドタバタとした着任式とやらを無事終えることが出来た僕はこれで見事魔界の魔王としてこれからも彼らと共に生きていかなくなったわけだが。
しかしよくよく考えれば、これから魔王として生きていくってかなり厳しくはないだろうか、いや、そうでもないか。なんて、一抹の不安を抱きながらも、僕はすぐにパソコンに向かい魔法少女の画像コレクションや音声を聞いて現実逃避することにした。