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ハーレム野郎、死す!




「ミツカ、誰がミサイルランチャーぶっ放せっつったよ!」

「えっ。攻撃準備って言ったじゃないか」

「攻撃手段はミサイルランチャーのみか? テメエの職業を言ってみろコラ」

「わ、悪かったよ。そんなに怒るな。ソルジャー・オベェマみたいに、ミサイルランチャーを撃つのが夢だったんだ」

「・・・ソルジャー、なんだって?」

「オベェマだよ。強きを助け、弱きを挫く。渡り鳥ソルジャーだ。カッコイイんだぞ!」


 どうしよう。何1つ意味がわからない。どこからツッコむべきかもわからない。いやもうミツカがわからない。


「ミツカがたまに読んでいるコミックでしょう」

「そうだぞ。誕生日プレゼントに、死んだお祖父様からもらったんだ」

「そうかい。それより、ウイは回収。俺達は探索だ。この部屋、いや倉庫か。ここが終わってもまだある。手早く済ませるぞ」


 ミサイルでオーバーキルされた奥の壁際にいた3匹のオークは、もちろん原型を留めてはいない。散乱する肉片と缶詰の残骸を踏まないように、良い物がないか探して回る。


「ダメだな。ただの倉庫だ。ナイフの1つもねえや」

「これだけの缶詰があれば、それでいいじゃないか」

「まあな。お、もう終わったんか、ウイ?」

「ええ。缶詰しかありませんし、ダンボールには種類と数がプリントされています。片っ端から収納ですから、簡単なものですよ」

「残りの部屋はなんだろな」

「ロボットいないかなあ」


 右の部屋は、金属製品の工場だった。単独の倉庫はなく、工場の端にダンボールが積まれている。ウイのアイテムボックスに、一瞬ですべて収納された。


「次こそロボットちゃんを!」


 ニーニャの願いも虚しく、最後は服飾工場だ。もちろんすべていただく。様々なサイズのブーツと、背中に30というロゴのあるツナギ。それに下着と寝具類。


「鍋や食器、ブーツとツナギは売ってもいいな」

「ええ。すべて新品ですからね。高く売れるでしょう」

「ロボットちゃん・・・」

「まだ諦めるには早いぞ、ニーニャちゃん。居住区や機関区には、ロボットがいるかもしれないじゃないか」

「うんっ。ありがとう、ミツカお姉ちゃん!」

「少し早いですが、昼食にしましょうか」

「おう。何にすんだ?」

「さっきの缶詰にしましょう。パンにサラダにステーキ、スープですね」

「出たな、不思議科学」

「ありがたいからいいじゃないですか。準備をするので、タバコでも吸ってきてください」


 嬉しい追い出し方なので、食料生産プラントに戻ってタバコを吸う。


(出来ましたよ。早く来てください。ニーニャちゃんがお腹を空かせています)

(へいへい)


 まだ探索も戦闘も終わってはいない。マーカーがないか確認しながら、手早く食事を済ませた。

 缶詰なのにシャキシャキのサラダ。フカフカのパン。湯気の立つスープ。ミディアムに焼かれたステーキにナイフを入れれば、肉汁が溢れ出した。


「ごちそうさまでしたっ。ウイお姉ちゃん、すっごく美味しかったの!」

「ありがとう。フルーツも食べる?」

「んーん。お腹いっぱい」


 いつもの通り、食休みをしっかり取って腰を上げる。

 用心しながら大ホールに戻ったが、マーカーの位置は変わっていなかった。


「残りは全部機関区のままか。先に終わらせて、ゆっくり居住区を漁るか?」

「おお。あたしは賛成。楽しみは最後に取っておこう」

「ニーニャはどっちでもいいよー」

「私も賛成です。奇襲は受けたくありません」

「なら機関区だ。行こう」

「待ってくれ。スキルポイントがだいぶあるから、新しいのを取るよ。【地獄の壁】と、【ミサイル連撃】」

「【ミサイル連撃】は待て。ミサイルランチャーなんて使いづらい武器の専用スキルなんて、無駄じゃねえか?」

「そうですね。強制はしませんが、どうかと思いますよ」

「やっぱりか。なら【パワーショット】だね」


 コイツは。止められるの予想してやがったな。


「いい選択です。単発威力アップは【チャージショット】に目が行きがちですが、【パワーショット】なら溜めがいりません」

「あたしのアサルトライフルは3点バーストだからね。それに最上スキルが魅力的だ。【ピアーレイン】か【ピアーストライク】」

「どちらも防御力無視の貫通弾。支配者クラスと戦うならありがたいですね」

「だろう。それに【チャージショット】の最上スキルは弾き飛ばす感じみたいだから、コルトとかぶるからな。よし、取得した。お待たせ」

「行くか。敵はおそらく支配者クラス。ここから会話は【パーティー無線】だ。気は抜くなよ」


 ドアを開けると、壁一面が何かの機械で埋め尽くされた通路だった。

 そのまま進んで、広い部屋に入る。ここも、機械類が溢れていた。ただ、壊れたロボットが床に横たわっている。まるで鈍器で破壊したような惨状だ。


(酷い。こんなかわいいロボットを・・・)

(終わったら直してあげましょう)

(うん。待っててね。ちゃんと直しに来るから)


 ドアの代わりに階段がある。マーカーがまだ遠いのを確認して下りると、10以上のロボットが破壊されて転がっていた。


(絶対に許さないんだからっ!)

(仇討ちは任せろ。敵は近い。お兄ちゃんがぶちのめしてやる)

(お願い、お兄ちゃん。挽き肉にしてやって!)

(おうよ。ん。これは、戦闘音か?)

(私達には聞こえませんが、ヒヤマが言うならそうなのでしょう)

(先を急ごうか。ニーニャも、助けられるなら助けたいだろうしな)

(ありがとう!)


 そこから3つ階段を下りると、はっきり戦闘音が聞こえてきた。

 次の階を覗く。大ホールより広い部屋だった。いや、倉庫や工場より広い。

 いた。オークだ。1匹が異常に大きい。そして、残る7匹はメスだ。とんだハーレム野郎だな、このオークキングってクリーチャーは。

 ロボットとオークが戦っている。ロボット達は、1段高い場所の玉座のような椅子に座るロボットを守っているようだ。

 だが、だいぶ旗色が悪い。倒れているオークはいないのに、ロボットは何体も倒されている。

 オークキングが鈍器を振るう。あれは、小型のパワーショベルのアームか。ショベルがロボットを薙ぎ払う。吹っ飛んだ3体のうち、立ち上がったロボットは1体だけだ。


「ロボットをイジメるな!」


 たーくんとニーニャが飛び出した。マズイ! 即座に追いかける。間に合え!


「たーくん、【フルバースト】いっけええっ!」


 ドラム缶のようなたーくんの体から銃口が現れ、ビームを連射する。それは7匹のメスオークを瞬時に撃ち倒し、オークキングにレーザーを集中させる。

 パッパラー。

 ショベルアームを盾にして踏ん張って耐える、オークキングのHPは800。削り切れるのか。

 たーくんの隣に立って見守る。オークキングのHPが600を切ったところで、たーくんの銃撃が止んだ。


「【挑発】【範囲挑発】!」


 左手でコルトを抜きながら念じる。【ファーストヒット】トリガーを引いた。オークが吹っ飛、ばないだと!


「【パラライズマガジン】麻痺れっ!」


 右腰のサブマシンガン。抜きながらセレクターをフルオートに。片手で保持して、全弾命中させる。

 残HPは580。なんて硬さだ!


「【ワンミニッツタレット】【パワーショット】!」

「ありがてえ。全弾ぶち込め!」

「了解ですっ」

「こんのお、ロボットの敵めえ!」


 ミツカとウイ。ニーニャまでサバイバーのレーザーライフルを連射している。


「リロードは申告!」


 リロードを終えた俺はそう怒鳴って、オークキングの左に回った。

 いつ麻痺が切れるかわからない。走り回りながら左はサイレンサー付きサブマシンガンに変えた。固有効果が効かないなら、弾数の多いサブマシンガンがいい。


「【挑発】【スプリットブレット】【チェインヒット】死ね、豚ハーレム野郎!」


 3人がリロードと声を掛け合って、絶え間なく銃弾を浴びせている。オークキングの残HPは300。

 これは、対物ライフルでの【ワンマガジンタイムストップ】まで使うべきか。いや、玉座のロボットは静観しているが、あれが味方とは限らない。ここはガマンだ。なんとかこのまま押し切りたい。


 ブウォン!

 目の前をショベルアームが通り過ぎた。風だけで鼻血が出そうだ。【散桜の如く】と【隼の目】がなかったら、確実に死んでいた。


「ヒヤマ! 【インターセプト】!」


 オークキングが動きを止めた。わずか3秒。だが、ミツカならやってくれる。動き回りながらリロードを開始。動いたオークキングがまた止まる。いいぞ、ミツカ。信じてたぜ。もう一度それを繰り返すと、左右のサブマシンガンのリロードを終えた。残HP200を切ってる、そろそろ死ねよ。


「これでスキルは空っぽだ! 【ゲリラの特攻】!」

「いいえ、まだです! 【観測手のカバーイングファイア】」


 ミツカのは【ワンミニッツタレット】の前の攻撃スキルか。ウイは観測手のスキルツリーを伸ばしたな。何ポイント使ったんだか。オークキングのHPがゴリゴリ削れてんぞ。

 ショベルアームを躱しながら、サブマシンガンの弾をバラ撒く。あと少し。あと少しで俺達の勝ちだ。


「【挑発】【範囲挑発】もう少しだ、気張れ!」


 ヘイトスキルを重ねがけしてから、リロードに入る。

 ゆっくりと、しかし確実に、その時は近づいているんだ。気を抜くな。見えるんだから、避けられる。


「ギャアアアアッ!」


 パッパラー!

 断末魔の叫びと、レベルアップの祝福。

 両手の銃をホルスターに戻し、対物ライフルを出した。


「礼を言う。人間」


 頭部がブラウン管テレビの、玉座に座るロボットが言った。いや、話しているのは、テレビに写った老人なのか。


「気にするな。仲間がロボットと友達でな。ロボットを殺したオークは敵なんだ」


 喉が渇いた。タバコも吸いたい。それでも、俺はこのパーティーの盾だ。ロボット達の黄マーカーが赤に変わった瞬間、【ワンマガジンタイムストップ】でコイツからスクラップにしなければいけないのだ。まだまだ、気は抜けない。


「ロボットに愛されし姫じゃな。我らは姫とその騎士達を歓迎しよう」

(まいったな。どうやら人の家に黙って踏み込んで、食料やら物資をくすねちまったらしい)

(しらばっくれますか。ええ、そうしましょう)

(だな。あたし達は、何も盗ってない。聞かれたらオークのせいにしよう)


 それでいいのか、保安官。

 ニーニャ、そんなに驚いて。どしたんだ?


(お姫様とか、て、照れるよう・・・)



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