第01部
【2023年09月12日23時51分42秒】
~????視点~
乾いた銃声が路地裏中に響き渡る。これも、今日だけで既に四回目だ。
「ひっ! ひぃぃぃぃ!!!!」
それに、哀れな男の声も聞こえてくる。その男は腰を抜かしたみたいでしばらく地面にへたり込んでいたけど、しばらくすると、再び惨めな声を上げながら何処かに走り去って行こうとする。
私がここにいる理由、こんな事をしている理由。それは『復讐』だ。別に両親の仇とか何かの一族の末裔とかそんなたいそうな物ではなく、単にこの男と他三人に『私の人生を破滅させられた』からと言う身勝手な復讐だ。
しかし、私はそれが身勝手な復讐だとしても絶対に今している事を止めるつもりは無い。どの復讐にも差は無いから。復讐の達成まであと二人。他の二人は先日既に処分してある。残り二人で私の復讐は終了する。
復讐が済んだからと言っても私の『姉』は戻って来ないし、私の『右目の視力』は回復などしない。私から大切な物を奪っていったコイツらのした事がどれだけ愚かな事か、その事を世間に知らせる事が出来れば良い。
勿論、この願いにはさっき言った通り私自身の復讐心や姉の仇も含まれている。どちらかと言えば、そっちの方が本命なのかもしれないけど。
男はまだ逃げ続ける。私は特に特別な訓練を積んでいる訳ではないし、片目の視力を失っているので、拳銃を凶器として選んだのは機能的には少し無理があったかもしれない。でも、これはコイツらに対するあてつけだ。二度も拳銃を私に向け、私の人生を破滅させたコイツらへの。
「ひぃぃぃぃ!!!! 悪かった! 俺が悪かったから、殺さないでくれぇぇぇぇ!!!!」
何を言っているんだ? コイツは。今更どれだけ謝られても殺すし、いくら命乞いをしても殺す。他の二人も同じ様な事を言っていた様な気がするけど、私は躊躇う事無く処分した。
「俺は指示されてやっただけなんだ! 金が必要だったんだ!」
その金の為に私の人生を破滅させた、と。まるで理由になっていない。こう言う人間は何でこの世に存在するのだろうか。未来が分かれば、生まれてきた直後にでも殺せば良いのに。そうすれば世界平和につながるだろう。
私は目の前の悪を滅ぼす為、拳銃の引き金を引く。
直後、私や路地裏の壁に血飛沫が飛び散る。
「ぐああああ!!!!」
運良くなのか、運悪くなのかは分からないけどまだ生きている。人間って意外と丈夫だ。生命の神秘としてはある意味尊敬しても良いかもしれない。まあ、足に当たっただけだし、流石に死にはしないか。
コイツを殺害する為狙い続けて、今日で二日目だ。途中で警察が来たりするせいで中々殺せない。
こんな事をしていたら普通はすぐに捕まりそうなものだけど、私はそうではない。絶対に捕まらない。コイツらは裏社会に関わっていて警察に頼れないと言う理由もあるけど、他の理由もある。コイツらは私の身元を知っているくせに。警察は九十九パーセント正解にまで辿り着いても残り一パーセントに辿り着けない。
他人と入れ替わった私は『私であって』、『私ではない』のだから。
再び乾いた銃声が路地裏に響き渡る。今度こそは確実にしとめたはずだ。私やコイツの周りに大量の血が飛び散っている。こんな物もう慣れた。三回目だし。
復讐完了まであと一人。