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Time:Eater  作者: タングステン
第五話 『Te』
136/223

第31部

【2011年09月27日14時29分24秒】


 俺と湖晴は阿燕と須貝をその辛い運命から避けさせる為に、過去改変をしようと決めた。そして、俺達は12年前の阿燕と須貝の人生を大きく狂わせた日へとやって来た。とは言っても、俺はその日が厳密に何時なのかを知らないので、何時の何処に行くのかは完全に湖晴任せなのだがな。


 そう言えば、今回は湖晴から何年何月何日何時くらいに行くのかの説明を聞いていなかったが、まあ、湖晴の事だから問題無いだろう。きっと、適当な場所に時空転移をして、2人を空き巣犯4人から守り易くしるはず・・・・・、


 ガタガタガタッ!


「「・・・・・・・」」


 ・・・・・ん?時空転移したはずだが、どうも視界が悪いな。と言うか、真っ暗で何も見えない。夜の時間帯に外に出たとしてもここまで暗くは無いはずだし、室内に出たとしても少しくらい光があっても良さそうなものだ。だとしたら、ここは何処だ?


 あと、俺の顔面に何やら柔らかい物が密着している気がするのは気のせいだろうか?身動きも全く取れないし、もしかして、俺は豊岡家宅の押入れか何かに時空転移して来てしまったのかもしれない。


 一先ずあれこれ考えても仕方無いので、湖晴の行方を捜す事にしよう。


「おーい。湖晴・・・」

「ひゃあ!」


 俺が湖晴を呼ぶと、何処からかそんな驚いた様な焦っている様な湖晴の声が聞こえた。その声はそれなりに大きかったので、意外と俺の近くにいるのかもしれない。探す手間が省けて助かる。


「湖晴ー。何処だー」

「じ、次元さん!私ならここにいますから、あまり口を動かさないで下さい!」

「え?」

「---!!!」


 湖晴のそんな台詞と共に、俺は肩をトントンと叩かれた。どうやら湖晴は俺のすぐ近く、いや、密接した距離にいるのだろう。


 そう言えば、今湖晴は『私ならここにいますから、あまり口を動かさないで下さい!』と驚きの声とも焦りの声とも取れる感じで言っていたな。


 俺の顔面に何か柔らかい物が触れていて、湖晴は俺の近くにいて、口を動かすな・・・・・って、あれ?これって、もしかして・・・・・、


「あの、湖晴さん・・・・・?俺達、今どう言う体勢になってるか分かりますかね?」

「え、えっと・・・・・あまり、言いたくないです・・・・・」

「」


 さて、落ち着け。冷静になれ、俺よ。


 俺達は『現在』から阿燕と須貝を助ける為に『過去』来た。それで、時空転移した先で光1つ無い真っ暗闇の中俺は顔面に何か柔らかい物が触れている感じがした。そして、俺に密接しているのであろう湖晴は何やら恥ずかしがっており、状況説明を躊躇った。


 つまり、今俺の顔面に触れている、この柔らかい何かは・・・・・湖晴の胸?


「わあああああ!!!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!だが、俺は何も自分からこんな体勢になった訳ではなく・・・・・!」

「ひゃあああ!!!次元さん!そんなに話すと、次元さんの吐息が胸に・・・・・」


 やはりそうだったのか。しかも、吐息が胸に直接掛かると言う事はまさか、俺は今湖晴の胸に直に触れてしまっていると言う事なのか?・・・・・不味くね?こんな事が誰かに知られたら俺、社会的に抹殺されるんじゃね?


 それはそうと、湖晴の胸って普段白衣越しに見ている時から思っていたが、やはり大きいな。いや、こうやって(今は事故だが)女の子の胸に顔が直に触れてしまう事なんて今まででは1度も無かったので、特に感想を述べる事は出来ないが、取り合えず、かなりデカイです。はい。


 俺が疚しい事を考えていると、湖晴が何やら少し怒った感じで俺に話し掛けて来た。


「・・・・・次元さん。今、何か卑猥な事を想像していませんでしたか?」

「い、いや?何の事かさっぱりだな~」


 見透かされてた。


 と言うか、湖晴は俺に何回か裸体を見られているのに、こう言う状況はやはり恥ずかしいものなのか。まあ、湖晴も女の子だから、恥ずかしくて当然なのだとは思うが、何回も裸体を見られるよりはマシな気がする・・・・・のは、男の俺だけか。


 話を戻そう。今は、俺にとってはラッキーイベントであり、湖晴にとってはアンラッキーイベントで、本来の目的を忘れてしまいそうだが、俺達は阿燕と須貝をその辛い運命から避けさせる為に『過去』に来たのだ。


 今が2人の人生を大きく変えた日の、空き巣が入るどれくらい前なのか、どれくらい後なのかが分からない以上、少しでも急いだ方が懸命なのだ。だから、湖晴には少し我慢して貰って話を進める必要があるのだ。


 俺は光1つ差し込まない暗がりの中、柔らかい感触を顔面に受けつつ、湖晴に話し掛けた。


「湖晴。悪いが、俺達が事件の日の何時何処に飛んで来たのか分かるか?」

「えっと、はい。あ、補足として言っておきますと、実はこの日は時空転移可能な地点が2しか無かったんです」

「何でここを選んだし」


 タイム・イーターは時空転移装置だが、その移動可能な座標が限定されている。湖晴曰く『時空の歪』と呼ばれる地点にしか移動出来ず、俺達が『現在』から移動するとそこに新たな『時空の歪』が作られるらしい。だから、今回の場合はその地点が2つしか存在しなかったのだろう。


 それにしても、何でこんなに窮屈で薄暗い場所をわざわざ選んだんだろうか。もう1つの地点では何か不都合が生じたのだろうか、と言う事を考えていると湖晴が俺の質問に答えた。


「いえ、もう1つの地点は屋外でしたので、侵入に時間が掛かると不味いですし、私達が空き巣と思われる可能性もありましたので」

「そりゃあ、確かにそうだな」


 本来豊岡家宅に侵入したはずの空き巣犯が来る前に俺達が通報されてしまっては、色々と話の辻褄が合わなくなるしな。いや、過去改変をしようとしてる時点で辻褄も何も無いのだが。


 と言うか、それならそれで良かったのではないだろうか。俺達がご近所さんに空き巣認定されれば、近い内に警察が来るはずだ。そしたら、本来の空き巣犯4人組もわざわざ捕まりに行く様な真似はしないだろう。


 しかし、湖晴がそうしなかったと言う事は、それでは過去改変が成功しないと言う事か。確かに、今日その事件を回避する事が出来ても空き巣犯4人組はまた別の日に来る可能性がある。警察も毎日毎日来れる訳ではないからな。


 俺は大体の理由を納得した後、改めて湖晴の胸に顔を埋めながら(不可抗力)、話し掛けた。既に数分間この体勢が続いているので、大分息が苦しくなって来た。


「それで、ここは何時の何処なんだ?」

「一応、2011年09月27日14時30分頃の豊岡家宅のリビングに時空転移したつもりだったのですが・・・・・少し座標特定にズレがあったみたいですね。ですが、それ程ズレは大きくないと思われますので、この圧迫感からしてクローゼットの中とか物置の中とかだとは思いますが」

「そうか。多分、そうだとしたらここには布団とかを収納していたんだろうな」

「?何でそんな事が分かるんですか?」

「いや、何か手に柔らかい物が・・・」


 俺は自身の右手に触れている、顔面に触れている湖晴の胸とは別の何か柔らかい何かを掴んだ。すると・・・・・、


「ひゃあ!」

「」

「じ、次元さん!何処触って・・・・・」

「もう、何なんだよおおおおお!!!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 ・・・・・過去改変をしに来たはずなのに、何でこんな事になるんだよ。こんな状況が続くと湖晴が可哀想だし、事故とは言え俺がただの変態にしか見えないじゃないか。俺は純粋な男子高校生なので、何も疚しい事は考えていないし、したいとも思ってはいない。断言出来る・・・・・多分。


「と、取り合えず、早くここから出ましょう。こんな所に長くいるとお2人の安否を確認出来ませんし、それに・・・・・」


 その姿こそ見えないものの、今湖晴は顔を真っ赤にしながら恥ずかしがっているのだと言う事が容易に推測出来た。グラヴィティ公園で初めて出遭ったあの時から比べると、湖晴も大分人間性が出て来た様な気がするな。


 それにしても、湖晴は今何かを言いかけなかっただろうか?気になった俺は、息苦しいながらも、その事を湖晴に聞いてみた。


「ん?『それに・・・・・』どうした?」

「何でもありません!早く出ましょう!」

「お、おお?」


 何故か怒られてしまった。


 しかし、数秒間の沈黙の後、意識を集中させていなければ聞こえなかったであろう小さな声で、湖晴が何かを呟いた。


「・・・ばか・・・・・」


 その台詞と同時に、一瞬だけ俺は体を優しく抱き締められた様な気がした。だが、それは俺の気のせいかと思ってしまう程短い時間であり、その後湖晴は再び黙り込んでしまった。もしかすると案外、俺の無理な体勢よりは湖晴は手足の自由があるのかもしれない。今、俺が一瞬抱き締められた気がしたのが気のせいではなければ、の話だがな。


 光が全く差し込んで来ないので、会話が途切れると湖晴が何処か遠くに行ってしまった様な感覚に陥ってしまう。俺は少し不安になり、湖晴にその小声の意味を尋ねた。


「え?」

「ほら!行きますよ!タイム・イーターを適当に起動させますので少し衝撃が走るかもしれませんが!」

「え、いや、ちょっ・・・」


 俺が尋ねたすぐ後、湖晴の怒っているらしい声が聞こえ、俺が特に返事をする前に何かが崩れる音、壊れる音が聞こえた。


 ドンッ!


 ガラガラガラッ!


 俺は全身の自由を取り戻し、そのまま地面に叩き付けられた。想像以上の痛みが顔やら手に走ったが、ふと目を開けてみるとそこが明るい事に気が付いた。どうやら、外には出る事が出来たらしい。


 俺は四つん這いの姿勢になりながら、周囲に阿燕や須貝がいないか、その安否はどうなのかを確認する為に顔を上げた。辺りはいかにも金持ちの家と言った雰囲気の内装のリビングらしき空間だった。その空間全体が神々しい輝きを放っており、俺がいてはならない気さえもした。


 しかし、俺の思考はそこまでで停止した。いや『停止させられた』。


「お、お前等!何でそんな所から出て来たんだ!」


 何時か、具体的には阿燕の過去改変の直前に見た事のある顔の人物が俺に向かって拳銃を向け、そんな事を言っているのを俺は見た。

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