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動物園とレッサーパンダのアリシア(アリシアの告白)

 自己紹介がまだだったね。僕はアリシアっていうんだ。君たちは僕らのことをレッドパンダとかレッサーパンダと呼んでいるんじゃなかったかな?


 メモなんか取らなくたっていいよ。とても、とても単純なことなんだ。


 実は僕のこの恋心を忘れさせてほしいんだ。もちろん、それにはそれなりの理由があるんだけど……。


 僕が恋をしてしまったのはね、この森のふもとにある動物園の中にいるレッサーパンダなんだ。


 リリィっていう名前の、とてもきれいな顔立ちの子さ。誰もがハッとしてその場で足を止めてしまうような、とてもきれいな。君ら人間には僕たちの顔の違いは分からないかな。


 夜の動物園は、僕のお気に入りの場所だった。


 動物たちの寝静まった後の――そして何種類かの夜行性の動物たちが息を殺して動き回る真っ暗な動物園は、なんていうかとてもクールだ。


 そこで僕はリリィを見つけた。


 ビビっと、まるで雷に打たれたかと思ったよ。そのくらい激しく、一瞬で、僕は恋に落ちたんだ。


 僕は彼女に声をかけようとして、すぐに思いとどまった。


 だって彼女は柵の向こう側にいて、僕は柵のこちら側にいる。いったいなんて声をかければいいっていうんだい?


 彼女は僕に気がつかなかった。リリィを閉じ込めている柵は、彼女から見て岩を模して作られたがけの上にあったから、僕は彼女を見下ろす形になっていたんだ。


 僕はそのまま逃げるように、夜の動物園を抜け出したよ。


 それからも僕は何度かリリィに会いに行ったけど、そのたびに彼女に話しかけることはできなかった。何度も声をかけようとしたんだけどね。


 僕と彼女の間にそびえ立つ柵ごしに、ちらりとその姿を見るだけで、僕は息をすることすら苦しくなって、まるで逃げるようにこの森に帰って来てしまうんだ。


 そんなことを繰りかえすうちに、僕は思うようになったんだ。


 彼女のことを忘れてしまうことができたなら、この恋心を忘れてしまうことができたなら、どれほどいいだろうって。


 僕だって、本当は忘れたくなんかないさ。でも分かってる、忘れるべきなんだ。僕と彼女の間には越えられない柵がそびえている。僕は……彼女のことを忘れないといけないんだよ!


 実はさっきあのコスモス畑にいたのも、偶然じゃないんだ。


 あの畑を手入れしているのが、なんでも忘れさせることができる人間だって聞いて待っていたんだよ、君のことを。


 あのコスモスがとてもきれいで、ついぼうっとしてしまっていたけどね。

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