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当事国以外の未来

台湾海峡での開戦から10年が経過した「2036年の世界線」。

最先端の半導体が消失し、日米中台が極東で泥沼の消耗戦(ドローンと旧式兵器の撃ち合い)に完全に釘付けとなっている間、世界の他の地域もまた、無傷ではいられませんでした。

アメリカという「世界の警察官」が太平洋から動けなくなったことで、パックス・アメリカーナ(米国による平和)は完全に崩壊。世界は「力こそが正義」となる、極めて不安定で野蛮な多極化時代へと突入しています。

EU、ロシア、北朝鮮、中東の10年後の情勢をシミュレーションします。

1. 欧州連合(EU):自立の苦しみと「分断される大陸」

【情勢:極右の台頭と「環境政策」の完全放棄】

台湾の半導体工場(TSMC)の崩壊は、欧州の自動車産業(ドイツ等)と精密機械産業に致命傷を与え、EU全土を長大な大恐慌へと引きずり込みました。

アメリカの「欧州離れ」: アメリカ軍の主要な戦力と弾薬が極東に全振りされたため、NATO(北大西洋条約機構)におけるアメリカのプレゼンスは劇的に低下。「自分の身は自分で守れ」と突き放された欧州は、独自の「欧州軍」創設を急ぎますが、加盟国間の足並みは全く揃いません。

脱炭素グリーンの放棄: 経済崩壊とエネルギー不足の中、理想主義的な「環境政策」は完全に放棄されます。ドイツは閉鎖した石炭火力発電所と原子力発電所を再稼働させ、生き残りを図ります。

政治の極端化: 終わりのない不況と、アジアや中東からの難民流入に対し、各国で「自国第一主義」を掲げる極右・極左のポピュリズム政権が次々と誕生。EUという統合システムそのものが内部から軋みを上げ、事実上の機能不全に陥ります。

2. ロシア:「巨大な資源の属国」と欧州へのグレーゾーン挑発

【情勢:中国への完全従属と、西への執念】

開戦当初、中国の「陽動作戦」に協力して極東で演習を行っていたロシアですが、10年後、その立場は極めて惨めなものに変貌します。

中国の「巨大なガソリンスタンド」化: 中国が戦時統制下で狂気的なドローンや弾薬の生産を始めると、それを動かすための莫大な石油と天然ガスが必要になります。西側から経済制裁を受けるロシアは、中国に資源を「買い叩かれる」形でしか生き残れず、かつての大国のプライドは消え失せ、実質的に**「中国の巨大な資源属国」**へと転落します。

欧州への再侵攻リスク: しかし、アメリカが極東にかかりきりであることは、ロシアにとって「西側(欧州)への領土的野心」を満たす千載一遇のチャンスでもあります。ウクライナ戦線が凍結(あるいは泥沼化)する中、ロシアはバルト三国や東欧に対し、正規軍を使わない「武装勢力によるハイブリッド戦」を執拗に仕掛け、アメリカのいないNATOの脆さを突き続けます。

3. 北朝鮮:極東の狂犬から「最強の死の商人」へ

【情勢:旧式砲弾の巨大兵器廠としての復活】

皮肉なことに、この10年間の消耗戦において**「最も国益を最大化した」のは北朝鮮**です。

中国の「生命線」に: ハイテク兵器が尽き、「旧式の砲弾をどれだけ撃ち込めるか」という第一次世界大戦のような戦いに回帰した結果、冷戦時代から山のような旧式砲弾を備蓄し、生産ラインを維持し続けていた北朝鮮は、中国およびロシアにとって絶対に手放せない「巨大な兵器廠(死の商人)」へと大化けします。

莫大な見返りと核の完成: 砲弾を中国へ供給する見返りとして、北朝鮮は食糧、エネルギー、そして中国の軍事技術を無制限に手に入れます。経済的に完全に息を吹き返した平壌は、アメリカが手出しできない隙を突き、核兵器の小型化とICBM(大陸間弾道ミサイル)の実戦配備を完了。

日米韓の釘付け: 中国の要請により、日本海や韓国の軍事境界線に向けて絶え間なくミサイルやドローンによる「威嚇」を実施。日米韓の防衛リソースを朝鮮半島に釘付けにする役割を嬉々としてこなし、極東において完全に「アンタッチャブルな存在」として君臨します。

4. 中東:多極化するパワーゲームと「ドローン武装地帯」

【情勢:警察官不在の火薬庫と、非対称戦の日常化】

アメリカの中東からの実質的な撤退(極東へのリバランス)は、中東地域を完全な「群雄割拠」の時代へと突き落とします。

地域大国の直接対決: サウジアラビア、イラン、トルコといった地域大国が、自らの影響力(シーア派vsスンニ派、領土問題)を拡大すべく、周辺国(イエメン、シリア、イラク)で直接的、あるいは代理戦争を激化させます。イスラエルもまた、後ろ盾であるアメリカの支援が細る中、生き残りをかけて周囲のアラブ諸国や武装組織と極限の緊張状態に置かれます。

非国家主体(テロ組織)の重武装化: 台湾海峡で実証された「安価な民生用ドローンの自爆攻撃」の戦術が中東全域に拡散します。フーシ派やヒズボラなどの武装組織が、スマートフォンと3Dプリンターで作った無人機で、正規軍の基地や石油施設を容易に破壊できるようになり、国家とテロ組織の軍事バランスが完全に崩壊します。

化石燃料の再評価: 半導体ショックで一時的に経済は落ち込みますが、各国が「戦時体制」に入り、旧式兵器や物流(船、トラック)を動かすためのディーゼル・重油の需要が爆発。中東の石油は再び戦略物資としての価値を極限まで高め、中東の産油国は「誰に石油を売るか」を武器にして、世界を翻弄します。

総括:2036年の世界地図

開戦から10年後の世界は、以下のような形に再編成されます。

極東のブラックホール: 日・米・中・台の巨大な軍事力と経済力が、台湾海峡という泥沼で延々と互いをすり潰し合い、抜け出せなくなっている。

無法地帯化する世界: 警察官アメリカが極東で身動きが取れないため、ロシア、北朝鮮、中東の地域覇権国が「今なら何をやっても大規模な介入はされない」と学習し、世界中で同時多発的に領土侵犯や局地戦を引き起こす。

退行する文明: 環境問題や人権といった「平時の理念」は完全に吹き飛び、すべての国家が「今日のエネルギー」と「明日の弾薬」を確保するために、なりふり構わぬ生存競争サバイバルを繰り広げる。

台湾海峡での48時間のハイテク戦争は、結果として世界中から「法と秩序」を消し去り、全人類を19世紀の帝国主義や、冷戦時代の代理戦争をさらに野蛮にしたような**「暴力と生産力のみが物を言うディストピア」**へと引きずり戻してしまったと言えます。

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