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十四回転生した賢者はそろそろ幕を下ろしたい ~終わらない原因の女神を猫の従魔にしたので、今世でケリをつけます~  作者: 在河琉盤
第一章

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幕間 文学を愛する神々の集い2

四人掛けのテーブルを三柱が囲んでいる。


ただし今回は、一柱だけ妙に満足げだった。


窓の外では何かが光っている。神界では珍しくないことだ。テーブルの上には飲み物と、本と、誰かが持ってきたらしい焼き菓子が一皿ある。一脚だけ椅子が空いている。


「で」


緩い声がした。見た目はまさにギャル風、纏う空気もいかにもで、どうしてこの場にいるのか?——と思われることを微塵も気にしない。そういう神ヴェヌである。


「ソレイ、なんでいるの?」


「失礼ね」


まさにお嬢様というたたずまいで、ソレイが静かに答えた。常に場の雰囲気を支配している——ように本人は思っている。そういう神ソレイだ。


「エランを探しに行ったんじゃなかったっけ」


「まだ時期じゃないわ」


「えー、去り方かっこよかったのに」


「場所に目星がつかなければ雲を掴むようなものよ」


「それもそうですよ」


すっと背筋を伸ばして、メルクが重ねる。この場の司会進行役を担っている——と自覚している。そういう神メルクだ。


「まぁ、そうだよねー」


ヴェヌが頷いた。多分無理だろうなと思っていた顔だ。


「でも」


ソレイが静かに続けた。


「有力情報を掴んだわよ」


「うそー」


ヴェヌの声が一段上がった。目がきらりとしている。


「リュンが神託の儀で面白いことを言う子と出会ったそうよ。なんでも——」


ソレイが間を置いた。


「『私も白い猫さんが欲しいです!』って」


テーブルに、絶妙な間が落ちた。


「えっ、どういうこと?」


「珍しい子ですね」


メルクが静かに言った。


「私のところにはそんな子来たことないです」


「ですわよね、私もよ。で、詳しく聞くと——同じくらいの歳の子が神殿の近くで白くて翼の生えた猫を連れているのを見たそうよ」


「ふーん」


ヴェヌが頷いている。半分くらい理解できているが、雰囲気では全部分かっている顔になっている。そういうタイプだ。


「目が合って一瞬固まったと思ったら、両足立ちでキリッとして、こう言ったんですって」


ソレイが間を置いた。


「『また会おう!』って」


「それって……!?」


「そう」


ソレイが静かに、確信を持って続けた。


「まさに『解決、にゃん銃士』のダルタにゃんよ」


「くっ……」


メルクが目を閉じた。こういう表情は珍しい。思い当たりすぎている顔だ。


「その手できましたか……」


「このネタ知っているってことは、エランである可能性が高いわ」


「確かに」


メルクが腕を組んだ。


「普通なら友情を表す別れの挨拶ですけど——確か、エランさんの考察は『焦ってついカッコつけて言っちゃった』でしたよね」


「エランちゃんって独特よねー、あれだけ友情を育んだらカッコつける必要もないのにねー」


ヴェヌが焼き菓子を一つつまみながら言った。


「そうね、ただ——気持ちはわからなくもないわ。今生の別れだと思うと、カッコつけたくなるっていうのも」


「うーん——」


ヴェヌが首を傾けた。


「本当に今生の別れなのかなー?にゃん銃士って、続編あると思う?」


テーブルに、また間が落ちた。今度の間は、さっきとは種類が違う。考えている間だ。


「その可能性は高いですね」


メルクが言った。


「まだ回収できていない伏線がいくつかある。アトにゃんの出奔の理由もそうですが——」


「そう!!ポルトにゃんのあの手紙!!」


「あの手紙は絶対に伏線よ」ソレイが頷いた。「あの描写でただの背景には使わない。差出人が誰かによって、ダルタにゃんの動機ごと変わってくるわ」


「えっ!!そう読むの!?」


「ヴェヌはどう読んでいたの」


「普通に気まぐれな旅人みたいな感じかと……」


「一理あります」メルクが言った。「ポルトにゃんの性格からすれば、気まぐれの表出として読む余地もある。ただ——前巻の屋根のシーンと対応させると、別の意味が見えてきます」


「屋根のシーン……」


ヴェヌが眉間に皺を寄せた。必死に思い出そうとしている顔だ。


「ポルトにゃんが一人で屋根に登って夕暮れを見ていた場面ですよ」


「あー!!あのシーン好きだった!!」


「そこからの手紙だとすると——ポルトにゃんは早い段階から何かを知っていた可能性があります。見送っていたのかもしれない」


「え、え——ということは」ヴェヌが指を一本立てた。「ダルタにゃんの『また会おう!』って、本当は今生の別れじゃなかった?ポルトにゃんはそれを知っていた?」


「わからないわ」ソレイが言った。「前提が揃っていないうちに結論は出せない」


「そっか……」


「ただ」


ソレイがカップを静かに戻した。


「もし続編が出て、あのシーンの意味が変わるとしたら——ダルタにゃんが焦ってカッコつけただけになるわよね」


「恥ずい!!」


ヴェヌが声を上げた。


「カッコつけるだけ損じゃん!!」


「ふふ、では——一度、伏線をおさらいして続編の可能性を考察してみましょうか」


メルクが静かに笑いながらいった。話が熱を帯びすぎるとだいたいメルクが軌道修正する。この集いのいつもの流れである。


「いいわね!」


ソレイが本を膝に載せ直した。


「私、たくさん考えていることがありますの」


やがて三柱は、それぞれ手元の本を開いた。窓の外では何かがまた光った。神界では珍しくないことだ。


焼き菓子の減るペースが、少しだけ速くなった。


神界は今日も騒がしい。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

明日も投稿予定です。よろしくお願いします。

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