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十四回も転生させられた賢者、もう限界なのでポンコツ女神を猫にして輪廻を終わらせる  作者: 在河りゅう
序章

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第1話 ポンコツ女神を詰める日

本日から連載を始めました。

転生を終わらせたい賢者とポンコツ女神の物語です。よろしくお願いします。

 今度こそ、転生を終わらせる。


 ――もう十四回目だ


 教会の最奥の間で赤地に白で装飾された敷物の上に座り、女神に会うための祈りの言葉を告げた。

 十五歳の年に女神に会い神託を受ける。そういう慣わしだ。


 真っ直ぐ前を見据える。


 視界の中央、女神を模したステンドグラスを睨みつける。

 手に力が籠る。


 条件を満たしたのに、転生は終わらなかった。

 魔王を倒し世界を救う以上に一体何がある?

 絶対に、理由を白状させる。


 祭壇の中央がぼやけだす。

 ――来た。


 あいつのペースにはさせない。

 ごくりと喉を鳴らした。


 隙間から光が溢れ、視界が白に潰される。

 音が消え、鼻を抜ける空気から埃っぽさがなくなる。

 祭壇や壁の存在感が消えた。

 床の感触が堅い石から無機質な何かに変わる。


 転移した。普通は気が付かない。

 嫌な慣れだ。


 視線の先に気配が現れる。

 見えないが、確かにいる。


 足元から白がほどけていき、うっすらと影が現れ――


「ん?」


 思わず声が漏れた。目を細める。


 白が薄まり、見えなかった景色が見えてくる。


 椅子。

 テーブル。

 豪華なティーセット。

 ――何をするつもりだ?


 ふんわりとした柔らかく波打つ白い髪に青色の瞳。

 いつもの女神が、見慣れない笑顔で、そこについている。


 女神がちょいちょいと手を招く。


「テルムくん、どうぞこちらへ。作戦会議です」


「……いつもと違うな」


 視線を外さず立ち上がり席につく。女神が満足したように頷いた。

 手を差し出し、お茶とお菓子を勧めてくる。

 一口、口をつけた。目を細める。


 女神はテーブルに肘を付き手を組むと、前かがみになり、ゆっくりと口を開く。


「お気づきかと思いますが、神託を達成したのに、転生が終わりませんでした。由々しき事態です」


 お前が言うな。


「なぜ、終わらなかったんだ?」


「まだわかっていません――が、妹に分析をお願いしてます」


「妹?」


「双子の妹でそういうのが得意なんです」


「科学者なのか?」


「はい、神界では結構有名なんですよ」


「意外だな、神様はなんでも知っているのかと思ってた。科学者がいるのか」


「上位神から下賜されたものは、わたしたちもよくわかっていないので――妹は色々調べてるみたいです」


 おい。


「よくわかってないものを、人に与えてるのか、呆れるな」


「えっ? どういうことです?」


「スキルのこと、よくわかってないんだろ?」


「スキルはわたしたちが作ってるんで、流石にわかりますよ!」


「……転生スキルは?」


「それは上位神がわたしたちの為に作ったものですから――あっ」


 ほう。


「その、神様のためのものが、なぜ俺に?」


「えっ、いや……」


 女神の目が泳ぐ。さっきまでの余裕はどこに行ったのか、肩が狭まり、背が丸い。


「……だって、かっこいいじゃないですか」


 かっこいい?


「今、流行ってるんですよ……転生もの。考察しなきゃって」


 バンッ!テーブルを叩いた。


 小さく悲鳴を上げ、女神の肩が跳ねた。


「まあいい、その妹はなんと言ってた」


「『神託達成で、終わるのは間違いない。不思議だ』と」


 女神は掻いてない汗を拭った。


「そうか……」


 顎に手を当て考える。


 女神を見ると、どうぞどうぞとお菓子を勧めてくる。嘘の色は見えない。


「今回も、神託はあるのか?」


「はい、これは決まりなので……申し訳ないですが」


「いい、教えてくれ」


「では、今回の神託ですが――」


 女神が言葉を止める。

 無駄に溜めるな、早く言え。


「――『王国を救え』です」


 王国を救え。


「毎回思うんだが、曖昧過ぎないか? 海のない世界で海の秘宝を探せ、魔王が生まれてもいないのに魔王を倒せ……今回は? 何から救うんだ?」


「それを見つけるのが、人生ですよ」


 女神がにやりとした。

 いや、そういうのは求めてない。


「どう決まってるんだか……」


 溜息を吐き、お菓子を一つ口に運ぶ。


「これは内緒ですが、目が覚めると、ぽっと浮かんでくるんです」


 女神は前に屈み、口に手を添え言った。

 言葉に詰まる。


 今後の話をと口を開きかけ、周囲の空気が深まったことに気付き、止める。

 女神が安堵の息を漏らした。


「どうかしたか?」


「あ、時間が来たみたいです。思ったより怒られなくてよかったです……」


 空から白がゆっくりと降りてくる。終了の合図だ。


 時間制限……。


「それで、お茶会形式か……鎮静剤入りの紅茶。用意周到だな」


「人聞きの悪い! 心の休まるお茶です! って気づいてたんですか!?」


「俺には効かないぞ」


「え!? じゃぁなんで――」


 席を立ち、女神に視線を合わせた。


「『また、来世で』とか言うつもりなんだろ」


 びくっと、女神の肩が跳ねる。


 女神に両手を向け手を開く。

 魔力が迸り、二つの紋様を描いた。


 がたりと椅子を倒し、女神が一歩、二歩後ずさる。


「な、何をする気ですか?」


「妹の分析が終わり次第すぐに動く」


 術式を展開する。

 二つの紋様が、白い空間を走り、自分と女神のそれぞれを囲った。


 女神が左右に首を振り、紋様を見る。


「ちょ、ちょっと、これ? ――従魔契約ですか!?」


「いいだろ、終わるまで付き合え」


 ぐっと拳を握りしめ、魔力を籠める。


 紋様が回転し、収束していく。


 女神が何か言いかける。

 だが――


 紋様が女神に触れた瞬間――光が、弾けた。


 ――白が光を塗り潰していく。



 ***



 意識が戻ると、頬に何かが触れていた。

 柔らかい。温かい。

 薄目を開けると、小さな影がこちらを覗き込んでいた。


「……猫?」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

第一章の終わりまでは毎日更新予定です。

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