表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十四回転生した賢者はそろそろ幕を下ろしたい ~終わらない原因の女神を猫の従魔にしたので、今世でケリをつけます~  作者: 在河琉盤
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/21

第1話 終わるはずの戦い

本日から連載を始めました。

転生を終わらせたい賢者とポンコツ女神の物語です。よろしくお願いします。

気づいたら、白い世界にいた。


なぜこうなった。


「……十四回目だぞ」


喉の奥から、声が出た。


「これが最後だって、言ってただろ」


白は何も答えない。


ただ、静かに広がっていく。


「魔王も倒した。世界も救った。言われたことは、全部やった」


言葉が、空しく溶けた。


「あの女神……また外しやがったな」


白が、さらに濃くなる。逃げ場がない。


「……なんだよ、くそ」


拳を握る。何も殴れない。


「今回は、大丈夫だと思った」


ぽつりと落ちた。


「最後まで条件は揃っていた。勇者もいた。魔王もいた。全部、噛み合っていた」


だから——信じた。


「だから安心して、余生を送ったんだ」


静かに生きて、静かに終わるはずだった。


それが——


「あと、何が足りなかったんだ!」


白が、膨らむ。


思い出すのは、今世の記憶。


それと——十四回分の、積み重なった苦悩。


***


最初の人生で“転生スキル”を授かってから、すべてが狂った。


死ぬたびに、また始まる。


世界も、時代も、違う。


ただ一つ、変わらないものがある。


十五歳で訪れる神託の儀。


そして——女神。


転生を重ねるたびに、いろいろなものを手に入れた。


封印を解いたこともある。国を救ったこともある。術式を残したこともある。


気づけば、どの世界でも「賢者」と呼ばれていた。


だが——終わらない。


何を成しても、また始まる。


七回目の転生で、ようやく理解した。


これは、終わらない。


終わらせるために、女神に頼るしかなかった。


だが——そこからが本当の地獄だった。


***


——九回目の転生


「この世界で最も深い愛を知りなさい。あなたにはそれができます。私が保証します」


人口三十二人。最年少が五十代。


出会いはなかった。


「保証します」は、砂漠より乾いて聞こえた。


——十一回目の転生


「大陸を統一する王の右腕になりなさい。今回は大丈夫です。王がいます。統一直近です。確認しました」


王は翌年、流行り病で死んだ。


「確認しました」は、根本的に何かが違った。


——十三回目の転生


「海の向こうの秘宝を見つけなさい! 今回は絶対です。海があります。秘宝があります。私、ちゃんと調べましたから!」


その世界に、海はなかった。


何を調べたのか——問いただす前に、人生が終わった。


***


全部こうだった。


成立していない。最初から。


それでも——十四回目だけは違った。


「魔王を討伐する勇者を支えなさい!」


女神は自信満々に言った。


「勇者、います。魔王、います。条件、全部揃ってます。今回は本当に大丈夫です、信じてください!」


最後の一言が、妙に引っかかった。


だが——今回ばかりは信じた。


勇者がいた。魔王がいた。


旅もあった。仲間もできた。


そして——


***


魔王が、倒れた。


黒い魔力が霧散していく。テルミアはぼんやりとそれを見ていた。全身が悲鳴を上げている。いつ怪我を負ったのかも覚えていない。それでも、どうでもよかった。


終わったのだと、思ったからだ。


「テルミア!」


振り返る前に体当たりが来た。白銀の鎧の重み。アデルだ。


今世の勇者。魔王に致命傷を与えた、本当の英雄。


「生きてる! 良かった、本当に良かった——」


「……重い。鎧が硬い。あと少し、優しくしてくれ」


「うるさい!」


泣いていた。


困った人だ、とテルミアは思う。いつも真っ先に飛び込んで、そのたびに周囲が傷を負う。今回の旅も、その繰り返しだった。


だが——悪くなかった。


腕を回し、背中を軽く叩く。二回。


よくやった、の代わりに。


アデルはそれを分かっていて、少し笑った。


「——任務完了だ」


「そうね。終わったわ」


終わった。


その言葉が、胸に落ちた。


今度こそ、本当に終わりだと——そう思った。


***


その後の人生は、穏やかだった。


英雄として名が残り、望んではいなかったが悪くはなかった。街を歩けば頭を下げられ、子供に囲まれた。やがて家族ができ、温かい食事と眠れる夜があった。


名前を呼ばれることに、意味があった。


アデルは国に嫁いだ。それでも節目ごとに手紙をよこした。


「また変な顔してるんでしょう、あなたは」


そのたびにテルミアは少し笑った。


戦いの記憶は、ゆっくりと上書きされていった。


そしてある日、ふと気づいた。


ああ、これが終わりというものか、と。


——それなのに。


***


光が広がっていく。止まらない。


終わったはずだった。


終わって、いいはずだった。


条件は果たした。魔王も倒した。世界も救った。女神の言った通りにやった。


なのに。


「……もう十分だよ」


怒りでも嘆きでもなかった。ただ疲れた声だった。


光が、白く世界を塗り潰した。


***


——十五回目の転生。


意識が戻る。


もう迷わない。


従うためではない。


終わらせるためだ。


あの女神に、きっちり説明してもらう。


神界に乗り込んででも——


今度こそ、終わらせる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

第一章の終わりまでは毎日更新予定です。

面白いと思っていただけたらブックマークしていただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ