表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】都合のいい婚約者のはずが、近衛隊長と第三王子に囲い込まれました  作者: 水瀬みずか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/33

第31話

 数日後

――近衛隊詰所、機密会議室。



重い扉が閉まり外の気配が完全に遮断される。

長机の上には、いくつもの書類と封蝋付きの封筒、そして帳簿の写しが並んでいた。



「これで、三件目か。」

アーサーが低く呟くと、副官が頷いた。

「はい。伯爵家から提出された資金記録と、侯爵家側が保管していた送金証明。金額、日付、受取先すべて一致しています。」

「名義は?」

「第三王子殿下の側近、レヴァント卿の個人管理口座です。ただし資金の出どころは複数の貴族家名義になっています。」

「つまり、強制的に出させた金を一度分散させ、裏でまとめているわけか。」

「その可能性が高いかと。」


部屋に沈黙が落ちる。

やがて、老侯爵が静かに口を開いた。

「正直に申し上げよう、近衛隊長殿。これまでは恐ろしくて口を閉ざしていたが、殿下はやり過ぎた。領地の税権にまで口を出し、従わぬ家には人事圧力をかける。王家の威を借りた私権の拡大。看過すれば、王国そのものが歪む。」



隣の将官が腕を組んだまま続ける。

「軍の補給契約にも不自然な介入があった。証人も用意できる。」

アーサーは一人ひとりを見渡した。

「覚悟はできているな。」

誰も視線を逸らさない。

「これは単なる権力争いではない。王子を告発するということは、王宮全体を揺らすことになる。」

「承知の上だ。」


侯爵が静かに言った。

「だからこそ、あなたに託した。我々だけでは握り潰される。」

「証拠はまだ足りない。だが、核心には近づいている」。



机の上の最後の封筒を手に取る。

「問題は、王子本人の関与を直接示す文書だ。」

「現在、王子側近の執務補佐官に接触を試みています。最近、殿下と距離を置き始めているとの情報が。」

「理由は。」

「資金処理の責任をすべて押し付けられる可能性を察したようです。」


アーサーの口元がわずかに動く。

「崩れ始めているな。」


そのとき、扉が軽く叩かれ、伝令が入ってくる。

「報告です。第三王子殿下が、急きょ明後日の夜会に出席されるとのこと。主要貴族の招集が始まっています。」

老侯爵が眉を寄せる。

「この時期に?」

「支持の再確認か、あるいは何かを察した。」

静かな緊張が室内を満たす。



「夜会の前に動くぞ。」

アーサーは書類をまとめた。

「側近補佐官の証言を確保できれば、王宮監察局へ正式提出できる。そうなれば、もはや殿下でも止められない。」

「提出は、陛下への直上申に?」

「ああ。王宮を経由すれば、途中で消える可能性がある。」

一同が頷く。

アーサーは最後に、低く告げた。

「ここから先は時間との勝負だ。夜会までに決着をつける。」



同じ頃

――王宮南棟


シシィは窓辺に立ち、庭を見下ろしていた。

最近、王宮の空気が明らかに変わっている。

廊下で交わされる視線、ささやき声、急に増えた密談。



「お嬢様、近衛隊から伝言が。」

「アーサー様?」

「はい。もうすぐ終わる、と。」

シシィは一瞬目を伏せ、そして小さく微笑んだ。


「本当に、無茶をする方だわ。」

けれど胸の奥には、不思議な確信があった。

もうすぐ、王宮は大きく揺れる。

そしてその揺れが収まるとき――

自分もまた、答えを出すことになるのだと。



その夜。

ついに、第三王子ヘンリクの側近補佐官が、

密かに近衛隊詰所を訪れる。

彼の手には、震える指で握られた一通の封書。


「これが、最後の資金指示書です。殿下直筆の署名があります。」

アーサーはそれを受け取り、封を切った。

視線が一行を読み終えた瞬間、静かに言う。


「――決まりだ。」

王宮を揺るがす一手がついに、打たれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ