第27話
その夜 ――近衛隊本部。
広げられた王宮見取り図の前に、アーサーと数名の副官が立っていた。
「伯爵令嬢関連の接触履歴をすべて整理しろ。」
「はい。」
「贈答品の搬入経路、発信元、手配担当者、すべて記録対象にする。」
副官が一瞬だけ目を丸くする。
「隊長、第三王子殿下の案件ですが。」
「例外はない。」
静かな声だが、完全に作戦指揮官のそれだった。
「さらに、ヴァルモン伯爵令嬢の王宮滞在予定を事前共有。警護班を固定化する。」
「固定班ですか。」
「人員を入れ替えると隙が生まれるからな。」
地図の一点を指し
「ここ、中央回廊東側は接触頻度が高い。警戒密度を上げろ。」
「了解。」
短い沈黙の後、副官が小さく尋ねた。
「……隊長、これは警護計画としてはかなり強化レベルですが。」
アーサーは一瞬だけ視線を上げた。
「問題があるか。」
「いえ。ただ――」
副官は苦笑する。
「これは完全に、作戦規模です。」
「重要対象の確保は作戦だ。奪われる前提で動くのは、指揮官として当然だろう。」
副官たちは黙って頷いた。
翌朝、 王宮の庭園入口。
すでに配置された近衛の数を見て、ヘンリク王子が思わず吹き出した。
「そうきたか。」
近くにいた侍従に小声で言う。
「完全に防衛線だ。」
その視線の先、庭園の反対側から歩いてくる人物は近衛隊長アーサー。
ヘンリク王子は楽しそうに目を細めた。
「いいじゃないか。本気で取りに来いということだな。」




