鈴木の家
翌日、鈴木に声をかけようとするものの鈴木がなかなか捕まらない。休み時間になると教室を出てこの間の女子、青木さんと一緒に話している。さすがにそこに割り込んで話す気にはなれない。それから次のチャンスをと思ってたら放課後になってしまった。出ていく鈴木を捕まえようとするとクラスメイトにつかまり結局鈴木に帰られてしまった。
日和は凛たちと女子で勉強会をするらしい。先に出て行った。
家に帰って勉強する気にもなれず校門を出たところで足が止まった。いつもの喫茶店に行くか? いやそんな気にならない。図書館もだ。そう言えば、神部神社はどこだっけ? スマホを出して確認するとそれほど離れてないな。行ってみるか。僕はスマホの地図を頼りに神社に向かった。
一人で歩くといろいろなことを考えてしまう。日和は僕ら姉弟とは幼馴染て仲が悪いわけではない。むしろ仲がよい方だろう。けれどなんかいつからか見えない壁ができたような気がする。三郎さんに会ってからその見えない壁が更に厚くなった気もする。
それに……三郎さんを見る日和の目がなんか熱を帯びているように思えた。
いや、三郎さんはこの世界の人ではなくて奥さんもいる。僕の勘違いか。それにしては日和の様子が。
もやもやを抱えたまま、僕は神社についた。
鳥居の前で一礼する。立派な並木の参道を歩くと目の間に古そうな社殿が見えてくる。境内に入ってからは清浄な空気に包まれている、そんな気がした。本殿にたどり着き、作法に従いお参りをする。お祈りは学業成就か。それから恋愛?なんか神様の前で日和のことを考えるのは恥ずかしい気もする。それでも一歩前進するには…………。
さて、どうしようか。禁域と言うところに行ってみるか。そう思っているところに社務所の裏からほうきを抱えた鈴木が出てきた。
「あれ、おかんじゃないか」
「鈴木? お前なんでそんな格好を……」
鈴木の格好はまるで神職のようだ。
「……アルバイトか?」
「いや、修行だ、いや違う単にここの息子なんだ」
えっ? 鈴木から神社の人紹介してもらおうと思ってたけど鈴木が神社の人なのか。
「恋愛成就祈願か? ここは恋愛成就にも御利益あるからいっぱい拝んでいけ。まぁ悲恋の伝説なんで本当にご利益あるかどうかは分からないが」
「悲恋?」
「あぁ、昔の神職にイケメンがいたらしくて恋愛沙汰で首を切られたらしい。まぁ神職が首を切られるなんて縁起悪いからあまり大っぴらにはしてないが」
「その話、聞かせてもらえるか」
僕が勢い込んで問いかけると、鈴木は静かに首を振った。
「ごめん、この話はよそでするなと言われてたんだ」
「だめか? あのな、この話を聞きたがっている人が居るんだ、大事な話かもしれないんだ、どうしても……」
「なんだ、いつものおかんらしくないな。なんか訳があるのか?」
さて、どうしようか。三郎さんのことを話していいのか。迷っていると鈴木が助け舟を出してくれた。
「おかんが紹介する人なら妖しい人じゃないだろう、まぁ、テストが終わったら親父に話してみるよ。この話は親父の方が詳しいからな」
「ありがとう、聞きたいと言っている人は源三郎さんで喫茶ささやきの佐々木さんの知り合いで日折茂凛も知っている人で」
「あぁ、そうか、佐々木さんの知り合いなら大丈夫だ。あそこのお姉さんには子供のころよく遊んでもらったし」
「佐々木さんに娘さんいるの?」
「いるよ、大学生かな? 今は家を離れているみたいだけど。話それたな、親父に会わせる前にその三郎さんに会わせてくれないか?」
鈴木が自分の目で確認したいのだろう。
「いつがいいかな……どっちにしろ期末が終わってからだな」
「あぁ、親父にはそれとなく予定を聞いておくよ。おっと、そろそろ掃除始めないと、じゃな、また」
そう言い終わるとほうきで境内を掃き始めた。
僕はじゃまにならないように帰ることにした。
帰り道で鈴木の様子を思い出してようやく思いついた。
「そうか、鈴木の奴、三郎さんに会いたいんじゃなくて凛に会いたいんだ」
我ながらこの鈍さがいやになる。




